去る9月9日、村井康司さん、柳樂光隆さんをゲストにお迎えし「いーぐる」で行われた『ジャズ喫茶いーぐるの現代ジャズ入門』(シンコーミュージック刊)発売記念イヴェント、おかげさまで大盛況でした。当初、「現代ジャズ」の催しにどれほどのお客様がおいでになるかちょっと心配でしたが、若い方々に大勢おこしいただきジャズ人気の確かさを実感いたしました。

また、東京お茶の水にあるディスクユニオンJazz TOKYOでは拙著が平積みで置かれ、掲載されているアルバムが販売されています。ありがたいことです。これもコロナが一段落し来日ミュージシャンの魅力的な公演が再開され、また映画「BLUE GIANT」を見たお客様がジャズに関心を持ってくれたことが大きいようです。

今回も勢いのある新譜をたくさんご紹介いたします。トランぺッター、テレル・スタッフォードの『Between Two World』 (La Coq Records)は、老舗ジャズクラブ、ヴィレッジ・ヴァンガードに出演した時のライヴ演奏だそうですが、拍手はありません。
というのも録音時はコロナ禍の真っ最中で観客はおらず、ライヴ映像を放映するカメラのみというシチュエーションだったそうです。しかしスタッフォードはこうした危機的状況を吹き飛ばさんばかりの熱演。テナー奏者を従えた典型的2管セクステットによる演奏ですが、アレックス・アクーニャのパーカッションに導かれたラテン風トラックはまさに現代ジャズ。

ジャズというとアドリブやフレージングが注目されがちですが、魅力的なミュージシャンは必ず個性的な音色を持っているものです。新進テナー奏者中根佑紀の 『New-Comer A Letter To Someone 』(Chigusa Records)は、ソニー・ロリンズによるスタンダード《オレオ》の斬新な解釈が若手とは思えないコクのあるテナー・サウンドによって表現された傑作です。また、彼のオリジナル曲も聴きごたえ十分。

現代ドラマーの代表、ブライアン・ブレード率いるフェローシップ・バンドによる『King Highway』(BSMF Record)は期待を裏切らない傑作です。メンバーはサックスがマイロン・ウォルデンとメルヴィン・バトラー、ピアノがジョン・カウハード、ベース、クリストファー・トーマス、そしてギターはカート・ローゼンウィンケル。想像力に満ちたカートのソロが光っています。

近年ラテン系ミュージシャンの活躍が目立ちますがキューバ出身のピアニスト、アルフレッド・ロドリゲスの最新作『Coral Way』 (Mack Avenue)はラテン・テイストを巧みにジャズに盛り込んだ楽しいアルバムです。彼はマイアミに住んでいるそうですが、陽気で明るいサウンドはいかにもカリブ的ですね。ゲスト・ヴォーカリストの歌声も魅力的。 

AMCトリオはピアニストのピーター・アダムコヴィッチ、ベース、マーティン・マリンカック、そしてドラマー、スタニスラフ・クヴァンシンガーによるスロバキアのグループです。彼らの最新作『Following The Light』 (Jazzline)はゲストにランディ・ブレッカーが参加しており、相変わらず抜けの良いトランペット・サウンドで魅了しています。スロバキアというお国柄のせいか、アメリカン・ジャズとは一味違う味わいが感じられますね。

最後にご紹介するのもキューバン・ミュージシャンです。ハロルド・ロペス=ヌッサはハバナの音楽家一家に生まれました。クラシック、フォークロア、ポップスといった音楽要素を自然に取り込んだアルバム『Timba A La Americana』 (Blue Note)は、コンガ奏者、バルバロ“マチート“クレスポによるラテン風味もさることながら、ハーモニカの名手グレゴワール・マレの参加がロペス=ヌッサの居住地フランスの香りを感じさせます。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

USEN音楽配信サービス ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)

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