シカゴのピアニスト、グレッグ・スピーロが今話題のヴァイヴ奏者、ジョエル・ロスはじめドラマーのマカヤ・マクレイヴン、ギタリスト、ジェフ・パーカー、トランぺッター、マーキス・ヒルらを結集した新作『ザ・シカゴ・エクスペリメント』(Ropeadope)は、現代ジャズの一側面を現した興味深い作品です。

シカゴという街ははるか昔禁酒法時代からジャズが栄え、また前衛ジャズ・グループ、アート・アンサンブル・オブ・シカゴの根拠地でもあり、独自のジャズ文化が育っています。このアルバムもヒップ・ホップ、ハウス、フリー・ジャズ、ブルースなど多彩な音楽要素が混然とジャズに流れ込んでいる現代ジャズ・シーンの特徴を浮き彫りにしているようですね。

そのジョエル・ロスのブルーノート第3弾『The Parable of the Poet(Blue Note)が遂に発売されます。第1作『Kingmaker(Blue Note)では今までにないテイストのヴァイヴ奏者として注目され、第2作『Who Are You(Blue Note)では緻密に組み上げられたサウンドとソロを極めて巧みに結び付け、バンド・リーダーとしての才覚も見せつけましたが、最新作はそれに加え、音楽のスケールが大幅に広がっているのです。

日本語に訳せば「詩人の寓話」とでもなるタイトルを持つこのアルバムは7つの楽章からなる組曲で、彼の音楽的構築力が進化していることを示しています。メンバーはジョエルのアルバムの常連、アルト・サックスのエマニュエル・ウィルキンスはじめテナー奏者マリア・グランド、トロンボーンのカリア・ヴァンデヴァー、そして前出のトランぺッター、マーキス・ヒルと、若手実力ミュージシャンが結集。とりわけエマニュエル・ウィルキンスの活躍が目立っていますね。

ヨーロッパに目を向けるとサックス奏者エミール・パリジーンのアルバム『Louis(Act Music)が面白い。アメリカのジャズ・シーンで注目されるトランぺッター、セオ・クロッカーやドラマー、ナシート・ウェイツと、パリジーンの仲間であるピアニスト、ロベルト・ニグロ、ギタリスト、マニュー・コジアらヨーロッパ勢との混成チームで組み上げたセクステットの余裕に満ちたサウンドは、世界音楽としてのジャズの可能性を示しているように思います。

そして今や大御所の貫禄でユニークな作品群を世に問うているピアニスト、ブラッド・メルドーの新作『ジェイコブス・ラダー』(Nonsuch)は明らかにプログレッシヴ・ロックの影響が感じられる問題作です。そして近年の彼の作品に顕著になった宗教的な関心がさまざまな音楽的テクスチュアによって編み込まれた複雑かつ斬新なサウンドが聴き所ですね。

それにしても相変わらずピアノのタッチは素晴らしい。とにかく最近のメルドーの動きには目が離せません。

さて、こちらも話題作を連発している話題の女性ヴォーカリスト、ベッカ・スティーヴンスの新作『アタッカ・カルテット』(Coreport)も注目です。弦楽アンサンブルとの共演で過去のオリジナル曲やレディオ・ヘッドなどのカヴァーを再アレンジした意欲作で、ベッカのヴォーカリストとしての個性・存在感が際立っています。

最後に収録したのはフランスのピアニスト、グレゴリー・プリヴァのピアノ・ソロ作品『Yonn(Moclou)です。彼はマルティニーク出身で父親は「マラヴォア」のピアニストです。独自の静謐感に満ちた演奏は喧騒にあふれた都会人の心を爽やかにしてくれますね。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

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