相変わらずUK発の新譜が関心を惹きます。今回ご紹介するアルファ・ミストのアルバム『Bring Back(Anti-)は、UKシーンの多彩さを伝えているようです。彼はキーボード奏者にしてコンポーザー / プロデューサーとしての側面を備えたミュージシャンで、ロバート・グラスパーの影響を感じさせる作風と言えるかもしれません。冒頭に収録した楽曲《Run Outs》 は彼が若いころ遊んでいたストリートゲームだそうです。

2枚目はUKシーンと並んで近年ジャズファンの関心を呼んでいるブラジリアン・サウンドの新作。ブラジル東部バイーア地方のビッグバンド、オルケストラ・アフロシンフォニカのアルバム『Orin, a Lingua dos Anjos(Think !)は、現代的なバンド・サンドにブラジリアン・ムードを醸し出す女性コーラスがかぶさる心地よい作品で、ブラジリアン・ジャズの成功例と言えるのではないでしょうか。

またもやUKジャズです。Skelterはマンチェスターのサックスとドラムスの二人組で、彼らの2作目『Dorje(Ubntu)は、シンセサイザーやエフェクターと多用したサウンドをバックにSam Healyのアルトが伸びの良いソロをとり、それをCraig Hanson の切れの良いドラムスが支えるエレクトロニックなアルバムです。

さて、ようやく本場アメリカのジャズです。今年78歳の超ベテラン・オルガン奏者、ドクター・ロニー・スミスのブルーノート復帰第3作『Breathe』は、2017年に彼の75歳の誕生日を記念してニューヨークのクラブ「ジャズ・スタンダード」で行われたライヴ演奏を収録したもの。こうしてUK、ブラジルのサウンドと並べてみると、あらためてアメリカン・ジャズならではのテイストが感じられますね。

この新譜特集は基本新録を中心にご紹介していますが、新規に発売された興味深い発掘音源、再発アルバムも収録しています。1枚目は50年代末にオーネット・コールマンと共にフリー・ジャズの機種として登場したトランぺッター、ドン・チェリーの貴重な発掘音源『Cherry Jam(Gearbox)です。

 ヨーロッパに渡ったチェリーが1965年にデンマーク国営ラジオに出演した際の録音で、デンマークのミュージシャンとの共演セッションです。チェリーの調子は上々で、彼のファンならぜひコレクションに収めてほしいアルバムと言えそうです。

UKのジャズ・シーンは現役世代ミュージシャンの活躍だけでなく、過去の世界中のジャズ音源に対する関心も非常に高いところが特徴です。既にこの新譜特集でもご紹介したBBE Music は、いわゆる「和ジャズ」の発掘にたいへん熱心で、今回ご紹介するのは1970年の発売以来初めての再発が話題になっている峰厚介のデビュー作『First(BBE)です。

メンバーは峰のアルト、ラリー・リドレーのベースにレニー・マックブラウンのドラムス、そしてプーさんこと菊地雅章がエレクトリック・ピアノで参加しています。今回『First』はCD / 配信、そして2枚組アナログ盤で発売され、今回収録した音源もアナログからです。45rpmのせいか非常に音質が良く、また再現されたジャケットも極めてていねいに作られており、コレクター垂涎のアルバムとなりそうです。

最後にご紹介するのも日本人ミュージシャン南博のたいへん貴重なデビュー・アルバム『Message for Parlienna(Airplane)の再発です。この作品は1991年にDan Greenspaum(b), Jim Black(ds)をサイドに従えニューヨークで録音され、1992年にオーストリアのレーベルから発売されましたが、入手困難なため廃盤市場では極めて高額で取引されていたアルバムです。

 タイトルは南が訪れたParis, Berlin, Viennaから取られ、かの地から得られたインスピレーションを基にしたたいへん魅力的な演奏となっています。余談ながらジャケットの絵画もたいへん素晴らしい。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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