かつて奥山の祖父母や父が暮らし、現在は彼自身がアトリエとして使用している邸宅で100冊を超える家族アルバムが見つかったことが、本作の構想の起点となっている。奥山はアルバムをめくるうちに、そこに写る先代の選択によって継承されている生命の連続性や、同時に立ち上がる倫理的規範について思索した。そこでは彼らの人生を「家族」という共同体の中で捉え得る一方、家族の役割を与えられる前の「個」としての存在にも気づかされる。

Yoshiyuki Okuyama “photographs #2”, 2024/2026 Archival pigment print mounted on aluminum 161 x 217 cm © Yoshiyuki Okuyama
Yoshiyuki Okuyama “photographs #1”, 2024/2026 Archival pigment print mounted on aluminum 216 x 171 cm © Yoshiyuki Okuyama

奥山の手によって編集された作品群は、元のアルバム写真に写っていた人物を光のように解放している。そこに生じる余白は見る者の想像を掻き立て、特定の個人的な家族アルバムであったものは、見る者それぞれのアルバム、そして普遍的に共有され得るものへと昇華されている。奥山は本展ステートメントで、「解放される光の手触りが固有の輪郭を溶かし、『誰か』でありながら見る者の輪郭とも重なり合っていく揺らぎの中で、『個』としての存在が問い直される」と述べている。

自分自身へと続く継承の歴史に対する敬意、そして個人としての選択や暗黙の規範といった「継承と自律」の間に横たわる緊張感を引き受ける本作は、時を隔てた人々や自身との対話を生み出す。

本展の開催に合わせ、赤々舎(アカアカシャ)から作品集『photographs(フォトグラフス)』が刊行される。価格は通常版が7700円(以下全て税込)、500部限定でサイン・エディションが入った特別限定版が16500円。

奥山由之は1991年東京生まれ。2009年から制作を開始し、11年に第34回写真新世紀優秀賞を受賞してデビューした。以降、具象と抽象といった相反する要素の混在などをテーマに活動を続けている。16年には『BACON ICE CREAM(ベーコン・アイス・クリーム)』で第47回講談社出版文化賞写真賞を受賞。主な写真集に『Girl(ガール)』、『君の住む街』、『As the Call, So the Echo(アズ・ザ・コール・ソー・ジ・エコー)』、『windows(ウィンドウズ)』などがある。また、映画監督作として『アット・ザ・ベンチ』や『秒速5センチメートル』を手がけている。

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