──2018年8月にリリースされた1st Album『瞼の裏に映るもの』から実に8年ぶりとなるFull Album『RI PATHOS』が完成した感想から聞かせてください。

「今だからこそ振り返って、そして、未来に想いを馳せながら作ることができたアルバムになりました」

──“今だからこそ”というのは?

1st Album『瞼の裏に映るもの』は自分の内側に眠る想いを中心に歌っていました。でも、『RI PATHOS』は佐々木李子がどんな要素で構成されて形作られているのか?を表したアルバムになっています。以前はまだ見せられなかった想いがありましたけど、今回は初めて、少し隠していた悩みや葛藤も包み隠さずに、それも含めて“今の自分がいる”ということをまっすぐに表現できました。改めて自分自身を紐解いていくように、向き合えたのは、キャリアを重ねた今だからこそできたことだと思います」

──アルバム『RI PATHOS』に収録された10曲、全曲が新曲ですが、最初にテーマやコンセプトがあったのでしょうか?

「アルバム制作段階で、“どういうアルバムにしたいのか?”という打合せをスタッフさんともしました。そこで、“今、歌いたい歌は何だろう?”と考えた時に、佐々木李子の“これまで”と“これから”を描きたいと思ったんです。今を一生懸命に必死にがむしゃらに生きてきましたけど、改めてここで少し立ち止まってみて、自分の道を振り返ってみたくて。これまでいろんな分岐点があって、その1つ1つに大切な思い出がありました。その思い出を今、歌わないと流れていってしまうんじゃないかな?とも思ったので、これまでに歩んできたいろんな道を掘り下げて歌いたくて、“李子道”を表現するアルバムになりました」

──今、お話に出た“李子道”がアルバムのタイトル『RI PATHOS』やリード曲「桃李成蹊」にも通じていると思いますが、どんな想いでつけたタイトルですか?

「いろんな意味が込められています。まず、“RI”は李子の李です」

──李子さんのお名前の由来についても聞いていいですか?

「はい。母親がつけてくれたんですけど、とにかくピンと来たみたいです。“りこ”という響きが口に出した時に心地よくて、漢字で“李子”と書いた時の雰囲気が絶対に他にはありえないくらいしっくりきたみたいで。そういう響きを大切に“李子”とつけてくれたみたいです」

──李子の“李”には“すもも”という意味もありますね。

「そこは意識していなかったみたいです。でも、私自身が考察するに…実家に帰ると、お家が植物に囲まているんです。とにかく自然が大好きな母親なので、もしかしたら木が入っているすももの“李”の漢字を選んだのかな?って。植物好きなお母さんがつけてくれました」

──司馬遷の『史記』で知られる“桃李成蹊”や“桜梅桃李”から付けたわけではないんですね。

「そうみたいです(笑)。本当にインスピレーションで、“絶対にこの名前にしたい”と思ってつけてくれたようです。でも、私らしいと思います。私も響きを大切に歌ってきましたし、思いつきで行動することも多いので。名は体を表すように、今、李子として生きていると思います」

──“RI”が李子の“李”で、“PATHOS”は?

「“情熱”という意味です。私の人生は情熱に突き動かされて生きてきました。いろんな壁もありましたし、くじけそうな時もありました。でも、自分の中にある情熱を大切にしてきたからこそ続けてこられたので」

──何に対する情熱ですか?

10曲それぞれに異なる情熱の欠片があります。“こうなりたい!”という憧れを込めた力強さがある情熱。あと、簡単にはいかない人生でしたし、不安になって挫けそうになった時もありましたけど、それでも耐え忍んで、自分を信じて、夢を諦めなかった時の情熱。そして、“麻辣湯が大好き!”という情熱」

──あははは。

「これもただ好きな食べ物というだけではなくて。大事なライブ前にルーティン感覚で食べに行くぐらい、身近で支えてもらっていて、私のソウルフードのような食べ物になっています。だから、「魂の麻辣湯」は、伝説の麻辣湯を探す旅と、伝説の歌手になるために今を生きているという自分の人生を重ねて歌っています。ほんとうに、いろんな情熱を10曲に込めました。“PATH”には“小道”という意味もあって…私のこれまでは、大きな道をまっすぐ歩いてきたわけではなくて。本当に消えそうな小道を少しずつ重ねていって、それが自然と大きな道になってきたような人生だと思っています。寄り道したり、回り道したり、その時は“この一歩で合ってるのかな?”と不安になる時もありましたけど、どの道も全部が今につながっているという意味も込めて、『RE PATHOS』=“リ パトス”になりました」

──最初に、佐々木李子の”これまで“と”これから“を描きたいとおっしゃっていましたが、さまざまな情熱が込められた全10曲の中で”これまで“を象徴する曲を挙げるとするとどの曲になりますか?

「リード曲『桃李成蹊』です。自分の名前も入っている通り、佐々木李子版の桃李成蹊の物語というか…」

──すももや桃は何も言わずとも自然と人が集まって、そこに道ができるように、“人徳のある人は何も言わなくても自然に慕われて人が集まってくる”という意味ですよね。

「私は夢をたくさん持っていましたけど、叶わないことの方が多くて。そんな時は、枯れ果てた木のような気持ちで、“このまま枯れて腐っていってしまうのかな?”とか…“また新しい葉っぱや実をつけることはできるのかな?”と思ってしまっていて。すごく苦しい時期もありましたけど、そうやって傷だらけになったからこそ、そのすべてが栄養になって、また枝を伸ばせましたし、頑張っていく姿を見てくださる方が周りに少しずつ増えていって。私はこの曲に出会って報われたような気持ちになりましたし、同じように夢に破れたりとか、夢をまだ持ってない人にも届いてほしい曲として想いを込めました」

──この曲が先ほど言っていた、“不安になって挫けそうになった時でも耐え忍んで、自分を信じて、夢を諦めなかった時の情熱”を込めた曲ですか?

「いえ、「花邑 -Hanamura-」を思い浮かべていました。「桃李成蹊」にも重なる部分はありますけど、この曲は自分の人生をそのまま描いたというか…生き様を表しているような楽曲です。ソロデビューから10年という長い時間を経ているので、耐え忍んでいる雰囲気は「花邑」が一番あると思います。地元・秋田の酒造である両関酒造さんが造る『花邑』という日本酒があるんですよ。華やかで、静かなる本気を感じるような美味しさで。目をつぶって飲みたくなるような、歴史というか…時間を感じるような美味しさがあるお酒なんですよ」

──「花邑 -Hanamura-」では<不器用で遅咲きでようやく 見つけた答え>とありますが、どんな答えを見つけたイメージでしたか?

「後半に歌っている<白い闇の前に立ち尽くした/視野のない世界で/希望があるとするのなら/不屈の心>だと思います。私って、なかなかな遅咲きで、時間もかかって…」

──遅咲きですか? 2009年のミュージカル『アニー』で11歳で主演を務めているのでスタートは早いイメージです。

「確かに秋田から出てきて、ミュージカルの主役を射止めるってすごいことですけど、逆にそこからの苦悩もありました。アニー役になった子はその後は売れないというジンクスがあるという噂もあって…。私もミュージカル女優や歌手、声優と、いろんなことをやりたい性格ですし、どれも好きだからこそ悩むことも多くて。しかも、正解を探してしまう性格というか、“完璧でいなきゃ”と悩んでいた時もあったので、自分ではもがいていた時期は長かったと感じています」

──でも、そのまま順調にミュージカルの道を歩んでいたら、声楽科に行ってないですし、声優にもなっていなかったかもしれないですよね。オペラのメタルを歌えなかったとも思いますし。

「わぁ! すごく報われるような言葉をありがとうございます。確かに、あんなに悩んでいなかったら、音楽学校の道には行かなかったと思いますし、すごく苦しかったですけど、たくさん悩んだおかげで、歌手も声優も、いろいろなことに挑戦できました。そこで耐え忍ぶ、不屈の心を「花邑 -Hanamura-」では歌っています。自分なりの答えというか…“確かな歩みを誇りに思っていいんだ”という風に歌いました」

──1つ目に言っていた“こうなりたい!”という憧れを込めた力強さがある情熱の曲というのは?

「「極超新星」です。ど頭からライブでみんながシンガロングしている景色が見えるようなスケールの広い楽曲で、歌い方も力強さがありますし、歌詞も<いつだって 終わらせる覚悟はできているだけ>とか、<I’m a Hypernova>、“私はハイパーノヴァだ!と繰り返すところも自信たっぷりです。私はずっとこういう存在になりたいと思いながら生きてきたので。この曲は憧れも強いですけど、一番最後のフレーズにちょっと“らしさ”が出ていて…<本当は心が凍らないように/燃えているに過ぎない>って。ただ強いだけではない、弱い自分を知っているからこそ強くいられる気持ちをこの曲で歌いました」

──そして、「魂の麻辣湯」が麻辣湯に対する情熱ですね。ソウルフードと言えるくらいになったのはいつ頃ですか?

「6年くらい前に初めて友だちに誘われて。“きっと好きだよ”と言われて食べに行ったんですけど、辛すぎて、最初は泣きながら食べました。初心者でも食べれる普通のおすすめの辛さにしたんですけど、それでも辛くて…」

──辛さレベルはいくつでしたか?

「“初心者は二辛がおすすめ”と言われたんですけど、それでも辛くて! “ああ、私は辛いのがダメなんだ”と思ったんですけど、謎の負けず嫌いが出て、“悔しい”って気持ちになって。“今度は一人でゆっくり食べてみよう”って気持ちで行ってみたら、辛かったですけど前回よりは食べられたんです。そうなると、また行きたくなって。“じゃあ、ちょっと辛さを上げてみよう”と思って上げてみたんですけど、やっぱり辛すぎて下げて…0.5ずつ上げていく修行を繰り返していたら大好きになっちゃいました。今では週3で行くくらいで、一昨日も食べました」

──そんなに辛いのにライブ前でも食べに行くんですか?

「ライブの前日とか、気合いを入れたい時に行きます。喉があったまって、開く感じがするんです。 好きな具材を選べますし、スパイスが刺激くれる感じで。自分を鼓舞させてくれるような食べ物なので。最初は苦手でしたけど、諦めずに食べていたら好きになって、今はもうソウルフードになったと思います」

──では、李子道の“これから”を象徴する曲をアルバムの中から選ぶとすると、どの曲になりますか?

「次につながっていくような曲、「道」です。このアルバムを作っていても、“今、私はまだまだ途中の道にいるんだ”と感じていて。夢は無限に湧き上がってきますし、まだまだいろんな道をできるだけ長く歩いていたいという気持ちでいます。アルバム『RE PATHOS』は完成しましたけど、まだまだいろんな歌を歌いたいですし、たくさんの人に出会いたいという想いがあって。「道」は、今の自分と少し未来の自分が対話しているような歌詞ですし、これからの自分を表してるような楽曲になったと思います」

──今の時点から昨日までを振り返りながらも、視線は明日を見ていますね。

「全てがつながって道になっていて。時々は休憩してもいいし、立ち止まってもいいし。不安で仕方なくても、“それが楽しいじゃん、それが人生じゃん”というところがとても心に染み渡ります」

──「道」はロックバラードですが、レコーディングはどんな想いで歌いましたか?

「“目の前に自分がいる”と思いながら歌いました。“あの時、こうだったよね”って、一緒に思い出しながら、過去の自分の背中を少し押すような気持ちだったり、過去の自分も連れて、一緒にこれからも歩むような気持ちだったり。自分で自分を抱きしめるような、全てを許して、受け入れて、“また新たに出発するよ”という希望も携えながら歌いました」

──さらに、アルバムにはご自身で作詞作曲した「ひとひら」も収録されています。

「自分自身の言葉の曲も入れたくて挑戦させていただきました。これまでは作りかけてたものを形にしていくような楽曲もあったんですけど、この曲は、このアルバムを作るのが決まってから作り始めた曲です。佐々木李子を一つ一つ解体していった時に、私の人生の中で絶対に忘れてはいけない思い出が、チラシ配りの時期だったんです」

──いつ頃の話ですか?

「デビューしたての頃なので、2016年とか…上京してすぐの頃です。ライブハウスで毎週のように対バンライブをやっていたんですけど、お客さんが 5人くらいしかいなくて。それでも、小さい頃からの夢でしたし、“もっともっと自分の歌を届けたい”という想いで動いていました。もともと、自分から一歩踏み出して、知らない人に話しかけに行くなんてできないような性格だったんです。人との接し方も悩みがちだった自分が、それでも動けました。夢のおかげで一歩を踏み出せたのがチラシ配りの時期です。でも、やっぱりしんどかったイメージの方が強くて、“この一枚に意味なんてあるのかな?”とか、動けなくて固まってしまう瞬間もありました。マネージャーさんと一緒に向かっていた電車の中で急に泣き出してしまったこともありましたし…」

──李子さん自身ではなく、チラシの視点で書かれていますね。

「チラシ配りの時期の話は絶対に書きたいと思っていました。以前、リリースイベントでファンの方が当時のチラシを綺麗に保管してくださってて…“これ覚えてる?今でも持ってるよ。お宝だよ”と言って見せてくれたんです。お客さんがまばらだった時期を見てくださっていた方なので、“リリイベのチケットを取るのが難しくなって辛いけど、それがすごい嬉しいんだ。ずっと変わらず応援してきてよかったよ”と言ってくださったのが記憶に残っていて。その見せてくれたチラシがすごく輝いてたんです。そのチラシへの感謝の気持ちも込めて、“チラシはどんな気持ちだったのかな?”と想像しながら書きました」

──チラシが聞いている“李子さんの心の声”も入っているように感じました。

「そうですね。チラシもきっと私の想いを感じ取りながら、一生懸命にいろんなとこに行ってくれたから。受け取ってもらえないことの方が多かったですけど、その分、受け取ってもらった時は一緒に嬉しい気持ちでしたし、揺れ動いてしまうような雰囲気をメロディに込めています。当時、1,000枚くらいのチラシを毎週持ち帰って、11枚に手書きでメッセージを書いていました。自分で手書きした方が受け取ってもらいやすいというのを信じて、夜な夜な書いていました。そういう淡々とした繰り返し繰り返し、積み重ねを毎日過ごしていくというところも、歌詞の繰り返しの部分で表現したりしています」

──さらに、ボーナストラックとして、もう1曲、李子さんが初めて作詞作曲した「てづくりのうた」が収録されています。これはどんな想いで作った曲ですか?

2019年に初めてライブで披露した、人生で初めて作詞作曲に挑戦した曲です。その前からずっと温めていたんですけど、人前で披露する自信や勇気が出なくて、ずっと隠していました。歌詞にも癖が出ていると思うんですけど、私がこうやって話しているような、正直な素直さが出てるというか…」

──話し声のトーンに近い柔らかさがあって、ハードコアやメタル、ラウドなロックを歌っている時の李子さんの声とは違う声ですよね。

「そうですね。この曲を書いていた頃は、どんな場所に行っても、“自分を強く見せなきゃいけない”、“カッコいい自分でいなきゃいけない”、“完璧でいなきゃいけない”と思っていました。でも、当時の日記を見返した時に、少し自信がないところもあったりして…。だから、初めて自分で曲を書く時に、作り込んだ世界観も素敵ですけど、最初はありのままに書いてみようと思いました。佐々木李子をそのまま、その時の想いの全てをまっすぐに描いています。ほんとうに素です。今、闇のある私も自分ですけど、友だちやファンのみんなと話している時は「てづくりのうた」の自分です。今はもう書けないですし、この曲を残しておいてよかったと思います」

──佐々木李子さんを構成する様々な要素が詰まった11曲が揃って、ファンの皆さんにはどう届くといいと思いますか?

「私の人生を振り返ったり、これから先を見据えて一曲一曲を作っています。皆さんにもそれぞれの道があって、それぞれが自分の木を育てて生きていると思うので、少しでも皆さんの道にも重なるようなアルバムになっていたら嬉しいです」

──夏には『佐々木李子ワンマンライブ「RI PATHOS LIVE in OSAKA/TOKYO」』の開催が控えています。どんなライブになりそうですか?

「このアルバムにも情熱をたくさん込めましたが、ライブでしか感じられない情熱も放出させたいと思っています。ただ、“新曲を披露します。聴いてください”だけではなくて、その日、その瞬間にしか生み出されないものが絶対にあるので。自分の想いをしっかり届ける曲もそうですけど、シンガロングしたり、拳をあげたり、掛け合いをしたり、タオルを回したりするような楽曲もあります。ライブもみんなで一緒に作る1つの道として、みんなの情熱が輝き出して、連鎖し合うような空間にできる歌を歌います!」

──最後に李子道の未来、今後の目標を聞かせてください。どんな夢を思い描いていますか?

「夢はたくさんあるんですけど、心に決めているのは、まず、日本武道館でワンマンライブを開催する。ただ開催するだけではなくて、ちゃんとアーティスト・佐々木李子の音楽を聴きたいと思ってくれる人が集まって、あの大きな舞台を埋めたいです。でも、そこがゴールではなくて。そこからまた、“じゃあ次は?”って、もっともっと大きな景色を見せられるようなアーティストになりたいです」

 (おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/中田智章

RELEASE INFORMATION

佐々木李子フルアルバム『RI PATHOS』初回限定盤(CD+Blu-ray)

2026年63日(水)発売
LACA-352758,250円(税込)

初回限定盤(CD+Blu-ray)

佐々木李子フルアルバム『RI PATHOS』通常盤(CD only)

2026年63日(水)発売
LACA-252754,400円円(税込)

通常盤(CD only)

LIVE INFORMATION

佐々木李子ワンマンライブ「RI PATHOS LIVE in OSAKA/TOKYO」

2026年720日(月・祝) 大阪 Banana Hall
2026年820日(木) 東京 Zepp Shinjuku

佐々木李子ワンマンライブ「RI PATHOS LIVE in OSAKA/TOKYO」

佐々木李子 関連リンク

一覧へ戻る