――USEN MUSICの新チャンネル「沖縄アクターズスクール・セレクション」がローンチするまでのストーリーを、立ち上げに携わったUSEN 沖縄カンパニーの館健太さん、ご協力いただいた沖縄アクターズスクールの牧野アンナさんへのインタビューで、ビハインド・ザ・シーン的に読み解こうというのが今回のテーマです。まずは、沖縄アクターズスクールの専門チャンネルを作ろうという館さんのアイデアはどのように生まれたのか聞かせてください。

館健太「USENは、2025年9月にエリアカンパニー制を導入し、より地域に密着したかたちで、よりスピード感をもって沖縄県での事業を展開していこうという体制になりました。こうした新たな取り組みの一方で、我々は65年に渡って音楽コンテンツを提供し続けてきたわけですが、実は沖縄に関連したコンテンツはまだまだ十分ではないのかなと感じていました。そうしたコンテンツをしっかりと作っていきたいという思いがある中で、やっぱり沖縄の音楽シーンにおいて象徴的な存在であるアクターズスクールさんとごいっしょにできないかと」

――なるほど。沖縄のみならず90年代以降の日本の音楽シーンにおいて、沖縄アクターズスクールというブランドのバリューは計り知れないですね。

館健太「そうしたアイデアを社内で共有しつつ、番組制作と編成を担っているエンターテインメント事業部の皆さんの協力もあって、本当にスムーズにプロジェクトを進めることができて、牧野さんにもお会いすることができました」

――牧野さんからすると、青天の霹靂というか、何の前触れもなくUSENからコンタクトがあって、こんな番組を作りたいんだという前のめりなプレゼンだったと思うのですが?

牧野アンナ「とても光栄だなという思いでいっぱいで。沖縄にはいろんなジャンルの音楽があって、沖縄独特の音楽もたくさんあるなかで、アクターズスクールというひとつのジャンル、ひとつのカテゴリーのチャンネルを作っていただけるっていうのは、なかなか得難いことですし、メリットでしかない提案だと感じました。90年代当時のアクターズスクールでもUSENが流れていて、スクールでのレッスンを経てデビューして活躍している子たちの曲が聴こえてきたり……そうした思い出も含めて感慨深いですね」

沖縄アクターズスクール COO兼プロデューサー 牧野アンナ氏

――沖縄アクターズスクールは、いわゆる芸能プロダクションではありませんし、レコード会社でもありません。牧野さんは、音楽業界におけるアクターズスクールの役割り、あるいは立ち位置をどのように捉えていますか。

牧野アンナ「そうですね。90年代当時のアクターズスクールと、再始動した現在のアクターズスクールには明確な違いがあるのですが、安室奈美恵やSPEEDが出た頃のアクターズスクールというのは、いわゆるタレント養成所という位置付けでした。歌やダンスを教わった子たちがスクールを卒業して、プロダクションからデビューしていくというロールモデルでした。しかし現在はスクールでの育成だけではなく、芸能プロダクションとしてマネジメントも手掛けていますし、自社レーベルで配信も行っています。でもたぶん皆さんの印象の中に残っている沖縄アクターズスクールは、アーティストが所属している場所ではなく、アクターズスクール出身という一種のブランドのような――三浦大知はそれをアクターズスピリッツと呼んでいましたが――そういう漠然とした捉え方だと思うんです。アクターズスクール出身の子たちは、歌って踊れて、そのレベルが高いと評価していただけることが多いのですが、沖縄の血というか、カラーみたいなものがあるのかなと感じています」

――レーベルやメディアの合従連衡であったり、制作環境の進化、サブスクリプションサービスの台頭など音楽シーンを取り巻く環境も90年代当時とはかなり様相が変わりましたが、アクターズスクールも然りということですね。アクターズスピリッツという言葉は、とても的を射ているというか、印象的ですね。

牧野アンナ「20年ぶりぐらいにアクターズスクールを再始動することになったんですが、当時を超えるんじゃないかって感じるくらい沖縄の子供たちの才能っていうのは強く感じていて、リズム感のある子、感性のある子たちも多いですし、何より歌える子がものすごく多くなってるなっていう風には感じていて。それはいわゆる芸能界の位置付けが変わってきたっていうところも大きいと思うんです。昔は活動の場って、ほとんどTVしかなくて、自分を表現したい人たちが、TVに出るために芸能界を目指すっていうロードマップがあったと思うんですが、今はいろんなツールがあってSNSといった身近なところで自分を表現するプラットフォームがたくさんあるわけです。でもスクールに通って、リアルに歌とダンスを学んで芸能界に入りたいって思う子たちって、それだけ強い思いがあったり、純粋に音楽が好きだったり……そんな子たちが集まってきてるのかなと思います」

――沖縄アクターズスクールといえば、ソロシンガー、ダンス&ボーカルグループ、男女混成ユニットといったアーティストのイメージが強いですが、現在進行形のアクターズスクールではどうでしょうか。

牧野アンナ「当時といちばん違うのは、バンドで活動している子たちがいたり、曲が書けて曲作りもできる子たちも増えてきています。2024年にメジャーデビューしているNeilはいま15歳ですが、自分で曲を書いて、楽器も自分で演奏してオケを作っています。今では当たり前みたいにみんなさらっと曲を作ったり、楽器を弾いたり、そういう意味では音楽性という部分でさらに深みが出てきましたね。元々が教えない、教え過ぎないっていうやり方をしていて、自分で考えて自分で動き出すという環境を作っていますし、実際にレッスンは基本的にみんな曲を流すから自由に踊ってください、自由に歌ってくださいっていうスタンスなんですね。いろんな先輩たちを見て真似して歌って踊っていくってというふうに。あと歌とダンスのレッスンを分けてないんです。そういうスクールってあまりなくて、今も変わらず独特であるっていうところからそこは大事にしています。というのも、アクターズらしさやスピリッツって、才能のある子たちが、自分で伸びていく力を身につけさせていくということが大事なんです。当時のアクターズ出身者といまのアクターズの子たちという世代を超えて、同じスピリッツを持っていると感じる部分ではあります」

Neil

――集まってくる子たちのスキルだったり、目指すアーティスト像が変化しても、受け入れるスクール側の哲学や志みたいな部分はずっと地続きになっているという印象です。

牧野アンナ「そうですね。当時と全く変わっておらず、ただ変化した部分もあって、当時のスクール生はデビュー=卒業で、そこから先は事務所さんや、レーベルさんにお任せしていました。いまは卒業してデビューしたあともアクターズスクールとしてサポートに携わっていく。彼ら、彼女らの持ち味とか才能が芽を出したその先のキャリアでもブラッシュアップの手助けをするという考え方ですね。スクール生の期間は教え過ぎない。でも、デビュー後はむしろきちんと指導していくというスタンスです」

――ロードマップというか、あくまでも将来像、理想像という意味でお聞きしますが、デビュー後のアーティストたちが目指している活動の場としてはやはり東京や全国なのでしょうか。

牧野アンナ「はい。ただベースはあくまでも沖縄ですね。私自身、沖縄に根差した活動をしたいという思いからアクターズスクールを再始動していますから。沖縄に拠点を置いて、東京で活躍するというスタイルは、昔の芸能界では大変でしたが、いまはさまざなツールやサブスクのようなサービスのおかげでそれができるようになりましたし、やはり10代の子供たちを預かっていますので、その時期に親御さんの元を離れて東京で暮らすことへの配慮やメンタルケアは必要だと思います。活動が忙しくてずっと東京にいなければならないという状況ではなく、必要なときに上京して活動するというかたちが理想的ですね」

――アクターズスクールやスクール生、アーティストは沖縄のひとびとにどのように受け入れられていると牧野さんは感じていますか。

牧野アンナ「実は、沖縄アクターズスクールでは、スクール生たちからレッスン料をいただいていなくて、沖縄県内の企業さんに協賛していただきながら運営しているんです。再始動にあたって、いろんな県内の企業さんにご挨拶させていただいたのですが、その折に、アクターズスクールの子たちを応援したいという声をたくさんいただいて。それも、タレントをということではなく、アクターズスクールがタレントを育てる活動をするならそれを応援したいと」

――ありがたいですね。指導者冥利に尽きるというか……

牧野アンナ「本当にありがたいことです。私が街を歩いてても”応援しています”とか”がんばってください”ってお声がけいただいたり(笑)。沖縄のイメージがアクターズスクールの登場によって大きく変わったと言っていただくこともありますし、当時、安室奈美恵やDA PUMP、SPEEDがデビューして、スターになって、彼らに続くアーティストたちが巣立っていったことで若い子たちには沖縄ってかっこいい、大人たちにはアクターズから出た子たちはしっかりしてるっていうイメージを持ってもらえたり。再始動後は、今度はどの子がスターになるんだろうっていうワクワク感で応援してもらっているとひしひしと感じています。興味深いのは、当時のちょうどSPEED世代のファンの方々が、企業の第一線で活躍されていたり、経営者になっていたりしていて、その方々に沖縄に元気をくれたアクターズに恩返しをしたいと言っていただけるんです。むしろ私たちが恩返しをしなくちゃとも思うんですが」

USEN 沖縄カンパニー代表 館健太

――館さんもお客様と接するなかで、そうした地元愛、沖縄らしさという雰囲気を感じることがありますか?

館健太「そうですね。僕は関東圏や北海道を経て沖縄に赴任したのですが、音楽やカルチャーという部分では、やはり地方だからこその個性あるんだろうなと思っていて。沖縄は特にそうなんですが、人の温かさ、ゆったりとした生活のリズムって唯一無二のらしさだなと感じています。営業の現場で接する店舗さん、企業さんのBGMであったりサイネージみたいな部分で、沖縄のアーティストにこだわっているオーナーさんやスタッフさんが多くいらして、沖縄アクターズスクールの生み出してきたアーティストや音楽はその象徴的なものだと思うんです。一方で、そうしたニーズにUSEN MUSICが十分に応えられているのだろうか?と感じることがあって。なので「沖縄アクターズスクール・セレクション」というアクターズスクールさんの名を冠したチャンネルをお客様に提案できるというのは大きいですね」

牧野アンナ「BGMってそういうことだと思うのですが、じっと聴き込むわけでもなく、その場所に音楽が流れているだけで、元気になるきっかけになったり、会話が弾む、お店の雰囲気が良くなるとか……私たちの作り出した音楽が身近な存在として流れて、聴いていただける、その場の空気に溶け込んでいるって、幸せなことですよね」

――USENでは、そうしたBGMの在り方を”街鳴り”という言葉で表現するのですが、明光さんは「沖縄アクターズスクール・セレクション」の担当ディレクターとして選曲に携わるなかで、新たな気付きはありましたか。

明光梨奈「もちろん90年代のアクターズスクール出身のアーティストさんや楽曲は以前から知っていましたし、私個人としても特別な思い入れがありまして。実は小さいころ、安室奈美恵さんに憧れてダンスを始めたんです。なのですごく楽しみでしたし、実際、楽しみながらディレクションしていますが、どのアーティストさんの曲も、声の安定感と歌唱力の高さに驚かされています」

B.B.WAVES

――いま現在の、新生アクターズスクールのアーティストについてはどうですか?

明光梨奈「たとえばB.B.WAVESの「Funkify You」はすごくパワフルな曲なんですが、声質は幼い感じなのに、大人でもなかなか出せない声量でびっくりしました。90年代もいまも変らず魅力的なアーティストさんが次々現れているので、番組全体のテーマというか、コンセプトとして、聴いているだけで活力が湧いてくる……そんなプレイリストを目指しています。ジャンル的にはダンスミュージックとして捉えられると思いますが、ダンスミュージックにありがちな聴き疲れ感がないこと、ひとつひとつの曲はすごくキャッチーなのに、流れで聴くと統一感があるというのもこのチャンネルの、アクターズスクール・ブランドの強みだと思います」

牧野アンナ「B.B.WAVESはアクターズスクールとしてももっと世の中に出していきたいという思いが強くて。というのも、実はB.B.WAVESは、96年から続いているグループで、知念里奈も、DA PUMP、SPEEDもデビュー前にはB.B.WAVESのメンバーとして活動していたんです。デビュー後はスクールを離れてそれぞれの道を歩んでいるわけですが、私のなかで常々思っているのは、スターになった子たちが、例えばフェスのような機会にアクターズスクールの名の元に集まって、リユニオン的にB.B.WAVESとしてステージに立つ姿を見せられたらいいのになということなんです。安室奈美恵の隣りにHIROとISSAがいて、三浦大知とMAXが踊ってる……というような。だからいまのB.B.WAVESの子たちも、その一員であるという気持ちをキープしてほしいですね」

B.ROX
E’sekai

――B.ROXは、B.B.WAVESの一員でもあるんですね。

牧野アンナ「彼女たちはアクターズスクールのロールモデルというか、その頂点に位置するようなグループです。E’sekaiという現役女子高生の4ピースバンドの子たちは、閃光ライオット2026のコピバンステージのファイナリストになっています。平均年齢13歳のDIG IT!DIG IT!ONEというロックバンドがいたり、年齢もジャンルもさまざまで、アクターズスピリッツという共通点はありますが、揃い過ぎていない、チャンプルー的なエンターテインメントになっていると思います。アクターズスクールに限らずですが、例えばAwichやORANGE RANGEのようにラップだったりオルタナティブ、ミクスチャーにも沖縄らしさというか、本当にいろんなものを取り入れて独特の音楽を生み出しているアーティストが沖縄にはたくさんいますから」

DIGIT! DIGIT! ONE

――可能性の塊ですね。最後に新生アクターズスクールとしての未来予想図を聞かせてください。

牧野アンナ「そうですね。いまはスクールの子たちとスターに育て上げること。そして沖縄から世界に羽ばたいていくためのエンタメタウンのような場所を沖縄に作ってみたいですね。アクターズスクールに限らず才能のあるアーティストと世界の架け橋になるような、それ自体が沖縄の観光資源になるような場所を作れたらいいですね」

(おわり)

取材・文/高橋 豊(encore)
監修/館健太、鎌田敦大、明光梨奈(USEN)
取材協力/株式会社沖縄アクターズスクール

©沖縄アクターズスクール
「沖縄アクターズスクール・セレクション」は、株式会社USENにより企画・編成・制作されているものであり、沖縄アクターズスクールが選曲・プロデュースに関与するものではありません。収録楽曲の権利は各アーティストおよび所属プロダクション・レコード会社などに帰属します。

明光梨奈(みょうこう りな)PROFILE

株式会社USEN 編成部所属。各チャンネルの選曲、ディレクションを担当。ミュージカル映画とミュージカル映画の音楽を好み、休日は物語の中で生活。安室奈美恵に憧れダンスを始め、クラブ&ダンスミュージックを勉強中。

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