──encore初登場のgoethe。皆さんの音楽的なルーツからお訊きしたいです。出会った高校生の頃は今の音楽性とは全く違っていたそうですね。
加藤拓人(Ba)「もともと僕はギターを弾いていました。クラシックなロックが好きで、そんな音楽をやりたくてバンドを始めました。そこから、(樋口)太一はMr.Childrenが好きで、メンバー共通でエレファントカシマシが好きだったりして、そういう音楽性を織り交ぜながらやってみたりしました」
──クラシックロックというと?
加藤「ジミ・ヘンドリクスから入ってエリック・クラプトンだったり、そういうクラシックロックがずっと好きでした」
──ブルースと考えると現在のgoetheからとは遠からじですね。相蘇さんはポップパンクを通ってきたとか。
相蘇勇作(Dr)「僕はこのバンドをやるまではずっとハードロックやポップパンク系のバンドをやっていたので、goetheとは離れているジャンルをやっていたと思います」
──永江さんは樋口さんに“一緒にバンドをやりたい”と持ちかけたそうですが、その時はもう今のgoetheに近い音楽性を想像していましたか?
永江碧斗(Key)「そうですね。最初は太一から弾き語りで曲を送ってもらって、それにアレンジを加えて戻すように曲を作っていたんですけど、その時からバンドとしての音像や出したい音源のイメージは勝手に持ってやり始めていました」
──永江さんの中にビジョンがあって樋口さんのボーカルや曲がフィットしたのでしょうか?
永江「おっしゃる通りです」
──永江さんはyonawo好きなんですよね?
永江「そうですね。yonawo、大好きです(笑)」
──皆さんの上の世代というとSuchmosやnever young beach、Yogee New Wavesの世代で、そういう影響もあってgoetheが始まっているのかと思っていたんですけど。
樋口太一(Vo/Gt)「そうですね。僕たちが高校生の時にR&Bやソウルのバンドが増えてきて、その辺のジャンルをどんどん掘っていったなので、そのときの時代の感じが根付いてると思います」
──今のgoetheの音楽性に繋がるルーツというと?
永江「僕は元々ブラックミュージックには全く精通していなくて、goetheを始めてから太一にジャズやブラックミュージックについて教えてもらったくらいです。それまでは札幌のインディーズのバンドもすごく好きで、いわゆるポストハードコアの流れを汲んだバンドの友達もかなりいて、そういう音楽を聴くのが好きでしたし、そういう人たちの繋がりでクラブにも遊びに行ったりしていました。だから、札幌のインディーズシーンが僕のバンドとしての核になっている部分はあります」
──なるほど。樋口さんはいかがですか?
樋口「自分たちのバンドの美学として余白をかなり大事にしていて。余白のカッコよさで言うと最初に衝撃を受けたのはやっぱりディアンジェロです。パッと聴きはシンプルなんですけど、計算されていないようで計算している余白のカッコよさ。とてもシンプルだけどすごくブルーを感じる…そのカッコ良さはgoetheでも表現したいです」
──そっちから掘ってヒップホップに行くのか? 昔のソウルに行くのか? でいうと…
樋口「より昔のソウルに行きました。サポートしているミュージシャンとか本当にすごい人たちで、ピノ・パラディーノあたりから遡ったりしました」
加藤「僕のルーツはクラシックなロックだと話ましたけど、goetheに繋がっていることで言うと、知らず知らずのうちにブルースが好きで…ブルースを掘っていってロバート・ジョンソンやマディ・ウォーターズとかブルースの初期のものも大好きになって。ソウルやR&Bはバンドをやるまでは全然知らなかったですけど、今になって思えばちゃんと繋がってたんだと思います」
──プレーヤー的な影響ではないんですね。
加藤「精神性が好きだったのかもしれないです。初期のソウルを聴いていると苦悩だったり悲壮感があったり…と思うことがあって。僕たちが感じ取れるものではないかもしれないですけど、辛い想いだったり、“ここから抜け出すんだ”みたいな考え方はブルースの精神性的に似ているものがあったんだなって」
──メンバー各々に違うバックボーンを感じますが4人でやる時にどういうバランスになっていますか?
樋口「メンバーの一人ひとりみんな違う人間性なんです。だからこそ生まれるものがあったり、自分たちがイメージしていない良さが出てくるときもあるので、それがバンドの良さになっていると思います。凸凹だけど塊にはなっているような」
──面白い。試行錯誤する瞬間も多いかもしれないですが、違うからこその面白さもありそうです。相蘇さんはgoetheに繋がるところでいうとどうですか?
相蘇「goetheを組む前は激しい音楽をやっていたので、その反動なのかは分からないですけど、歌モノのバラードを聴くのが好きです。それを実際に叩くのも好きで、歌に寄り添う系のプレイはgoetheを組んでから生きてきている部分だと思います」
──2021年に最初の配信シングル「アイスクリーム」をリリースしてから約5年経ちますが、活動の中で転機になった曲といえば?
加藤「個人的には『Dear e.p』(2024年)をリリースしたタイミングでかなり変わったと思っています。それまでは自分たちの中に曲を発信していた感じだったのが、『Dear e.p』をリリースしたタイミングでは聴いてくれる人を意識して外に向いた曲になったと思っていて。音像もリッチになったりと、個人的にはそこが一番の転換だと思っています」
樋口「僕もそうですね。自分の好きなジャンルというか、ヒップホップ的なビートやコードワークだけどメロディはJ-ポップ的なところもあって、自分の理想や頭の中にあったものがそのまま出せたので、作れたときは報われた気持ちになりました」
goethe『circle』──コンスタントにEPやシングルをリリースされてきているので、『circle』が1stアルバムなのは意外でした。バンドとしては遂に!という感覚ですか?
加藤「はい。遂に。気付いたらちょうど5年だったので、そういう面でも節目にはなっていると思います」
──これまでの代表曲が軸になっていますが、アルバムにする時にどういうテーマがありましたか?
加藤「これまでかなり幅広いジャンルの曲をやってきたので、なるべく曲のキャラというか…いろんな要素を持っている“人たち”を選んでまとめてみたアルバムになったと思います」
樋口「飽き性なのでいい意味で変化し続けようとやってきましたが、その中で自分の芯がブレていないか?という不安もありながら活動してきたんです。でも今回聴き直した時に、自分の中で季節や個人の生活に近い価値観とか、そういうところの共通点や軸がそこまで変わっていなかったので、楽曲のスケールや音像的には変わったかもしれないですけど、自分の大切にしているものや人生観は変わっていないと思いました。そこはホッとしたというか…。だから後付けにはなってしまうかもしれないですけど、自分の価値観とか人生観は共通したテーマになっています」
──そういう意味でも、このアルバムに『circle』というタイトルを付けたのは大事なことだったのではないですか?
樋口「そうですね。アルバムタイトルを考えていて、“circle”という言葉を見つけた時にすごくしっくりきて。“どうしてしっくりくるんだろう?”と考えたときにgoetheの活動をしていく中での共通点が出てきて。circleって円で、人それぞれの生活やパーソナルスペース、時間をさまざまな円として見たときに、重なっている部分を曲にしていたイメージがあって。一人ひとりのサークルが重なってコミュニティができているようなイメージが自分の曲のテーマになっていると思いました。あとは人とのご縁、例えばプロデューサーとの出会いとか色々な人の出会いに支えられて僕たちの音楽が出来てることを再発見できました。さまざまな要因で“circle”というワードがしっくり来ているんだと、あとから分かった感じです」
──リード曲で新曲の「LIFE」はgoetheの新しい一歩という意識が強かったですか?
樋口「はい。いい意味で自分たちらしくないというか…ここまで開けた曲は今までなかったんですけど、またバンドとして新しい一歩踏み出せた感がありました」
──どういう風にできた曲なんですか?
加藤「とにかく最初は大変だったよね(笑)。周りのメンバーから見てもゼロイチを作ってくれている太一がすごく悩んでいるだろうな…というのがあって。それまでに3、4曲ほど候補の曲も作ってくれていたんですけど、“もっといけるんじゃないか?”というのがずっとあって。で、次に生まれたのが「LIFE」でした。デモが上がってきてみんなで聴いたときに“この曲でいけるんじゃないか”という、そういう出発点もありました」
樋口「“初めてのアルバムを引っ張ってくれるリード曲ってどんな曲なんだろう?”と思った時に、やっぱり前向きな性格のやつに引っ張っていって欲しくて。だから開けた曲調がよかったのと、1stアルバムですし5年間の集大成的なアルバムになるというのがあったので、バンド活動を思い返して楽しかったことや大変だったことを今どう感じているかを歌詞や曲にしたいと思ったんです。“そう考えるとあっという間だったな、だからこそ時間ってすぐに経ってしまうんだな”って。同時に終わりというか…限られた人生でバンドをやっていく中で5年の月日を使ってしまった、でも今、アルバムを作れているという尊い時間を大切にしたい。そういう視点で書いてみようと思ったのが出発点でした」
──<あっという間 過ぎてゆく>という歌サビに始まる構造になってるわけですね。
樋口「そうです(笑)」
──ストリングスを取り入れたアレンジもスケールと温かさがありますが、最初から入れるイメージでしたか?
樋口「はい。ストリングスが映える曲だと思っていて、もうデモにも入っていました。デモで入れた時はもう少しラインが見えないうっすら鳴っている感じだったんですけど、もっとストリングスを前に出してもいいと思って、今のアレンジに落ち着きました。今回、初めて生のストリングスを入れているんですよ」
──皆さんは「LIFE」に関してはどういうフェーズだと感じていますか?
永江「ハッピーなサウンドとは裏腹に少し切ない歌詞で、自分たちらしさを軸に作り上げた楽曲です。いい意味でお客さん目線にもなれたりするような楽曲でもあるというか…」
──アルバムに収録されている新曲「Friendship」はMichael Kanekoさんのサウンドプロデュースですが、これはどんなアイデアだったのでしょうか?
樋口「基本的に最近の曲は鍵盤のバッキングが多かったんですけど、この曲はギター中心で作ってみようというのがアイデアの出発点です。あと、インディーポップ的な要素とか、少し柔らかい雰囲気で作ってみようと思ってできた曲です。goetheのまた新しい雰囲気というかバンド感がある曲なので、それも個人的にはとても気に入っているポイントです」
──アルバムの中の流れで特に気に入っているところはありますか?
加藤「「Introduction」からリード曲「LIFE」への流れはアルバムならではだと思います。「Introduction」は碧斗が作ってくれたんですけど」
永江「今までリリースしたEPにはインストの楽曲が1曲もなかったので、アルバムに入っているインスト曲に憧れというか(笑)、やりたかったんですよね」
相蘇「アルバム後半の「Runaway」~「Sick!!!」はライブで定番の流れだったり、“最後は「Town」で締めたいよね”というのももともと決めていました」
──「Sick!!!」はオケのムードで歌詞が変遷しているような印象があります。
樋口「そうですね。作った時のイメージは“コラージュ的な要素を音楽で表現できるかな?”というので、ガチャガチャしていて、いい意味でいびつ感みたいなものを出したかったんです。僕は曲を作る時は基本、オケを最初に作って、そこから歌詞とメロディを考えていくことが多いのでそういうのもあるかもしれないです」
──終盤に向かう流れもいいですね。
樋口「アコースティックの「彼誰」から「TOWN」にしっとりいく感じも好きですけど、そもそも「彼誰」は最初のシングル「アイスクリーム」のカップリングの「黄昏」と対になるような曲を書きたいと思って作りました。それをアルバムに入れたいという個人的な思い入れもあって」
──パーソナルな曲調ですね。
樋口「音像的にも部屋で歌っているような感じです。「黄昏」もアコースティック感が強い曲なのでそういう意味でも雰囲気が似ていると思います」
──「彼誰」の歌詞にあるような人のいない夜道を歩くことでチューニングできる何か…こういうところですよね、goetheの音楽に信頼を置くのは。カッコいい音楽プラスアルファを求めている人に沁みるんだと思います。
樋口「嬉しい…」
──樋口さんが描く人物像や情景に共鳴する人がジャンル関係なく好きになりそうな気がします。
加藤「本当にそういう感じだと思います。作る曲だったり声だったり、そういう樋口太一という人間に集まっているところがあるので」
──ポップスとしていろんなジャンルが当たり前に内包されている時代なので、バンドのパーソナリティはより大事だと思います。ところで皆さんは穏やかなトーンではあるんですけど、実は持っている野望があるんじゃないですか?
相蘇「僕はもともと海外にも興味があるので、あわよくば海外でもライブができたら面白いかな?とは思っています」
──現状、サブスクで日本以外ではどこで聴かれている印象ですか?
相蘇「台湾とか多いみたいです」
加藤「Spotifyのランキングを見たら東京の次が台湾でした」
──加藤さんはどうですか?
加藤「最近読んだもので“1990年代頃でもう文化の発展は終わっている”というようなものを目にしたんです。“それ以降はそれまでにできたものをリサイクルしてるだけだ”みたいな。でもそう言われると、そうではない新しいものを作りたい野望が出てきました。大きく言うと、新しいジャンルとかができれば、それは自分たちにとって本当にすごいことなので、やってみたいと思いますし、挑戦してみたいことです」
──90年代以降に生まれた人はどうなるんだ!?って話ですよね。今、生きている人が感じたものが新しいものを作るんじゃないのか?って。
加藤「はい。やっぱりgoetheでここまで幅の広いことやっていると、そういった新しいこともどんどんできると思っています。いろいろやっていきたいですね」
──樋口さんはソングライターとしてボーカリストとして実は野望が出ている感じがしますが、どうですか?
樋口「“いい変化をし続けたい”というのが最初からあるので、自分で枠付けないようにしたいとは常に思っています。音楽のジャンル以外にも映像も好きなので、他の芸術とかにも引っかかるというか…例えば映画音楽もやってみたいですし、音楽だけではないところにもアプローチしていけたらとても面白いと思って。既に映像とかもやっていたりするので、模索していきたいですし、音楽以外の場所にも目を向けてやっていきたいですね」
──では最後に5月に開催するワンマンライブ『goethe Live at LIQUIDROOM』への抱負をお願いします。
樋口「今回はツアーとかではなくて単発の公演で、サポートメンバーも入れた編成で特別なステージにしたいです。セットリストも工夫して普段のライブとはまた違った雰囲気で楽しめるライブになると思います」
(おわり)
取材・文/石角由香
RELEASE INFORMATION
LIVE INFORMATION

goethe Live Tour 2026
2026年11月1日(日) 福岡 graf
2026年11月8日(日) 北海道 PENNY LANE24
2026年11月14日(土) 宮城 enn 3rd
2026年11月21日(土) 大阪 梅田Shangri-La
2026年11月29日(日) 愛知 ell.FITS ALL





