今回最初にご紹介するBlotoはポーランドのグループで、どうやら「泥」という意味のようですね。実際ジャケットには日本語のひらがなで「どろ」と書かれています。そしてアルバム・タイトル『Erozje(Astigmatic)の意味は「浸食」です。そしてこれもジャケットに大きく日本語で記されているので、最初てっきり日本のグループと勘違いしてしまいました。

彼らは、ポーランドの7人組音楽集団「EABS」のメンバーによるキーボード、ベース、ドラムス、そしてテナー・サックスによるカルテットで、2018年のEABSのツアーのセッションで誕生しました。今回のアルバムは、90年代のニューヨークをテーマにしたそうです。既成のイメージに収まらない奔放かつパンク的でもある刺激的なサウンドは、歴史的に大国ロシアとドイツに挟まれたポーランドならではの「地政学的緊張感」がもたらしているのかもしれません。

期待のピアニスト、アーロン・パークスのリトル・ビッグIIによる新作『Dreams of a Mechanical Man(Ropeadope)は、グレッグ・デューイのギター、デヴィッド・ギンヤードのベース、トミー・クレインによるドラムスにパークスの華麗なピアノの旋律が絡むドリーミーなアルバムです。クールで透明感のあるサウンドはいかにも現代的ですね。

以前この新譜紹介に登場したママル・ハンズのメンバー、ピアノ奏者ニック・スマートとサックス奏者ジョーダン・スマートの兄弟による新チーム、Sunda Arc によるデビュー・アルバム『Tides(Gondwana)は、クラシカルな要素とポスト・エレクトロミュージックを巧妙に接続させた現代UKジャズの一つの方向を示した作品と言えそうです。

さまざまな音楽的要素が絡み合う中から生まれる近未来SF的サウンドは、聴き手の想像力を活性化させると同時に21世紀ジャズの行方も示しているようです。

今やUKジャズシーンの重要人物となったサックス奏者、シャバカ・ハッチングスはさまざまなフォーマットで活動を行っていますが、今回ご紹介するのは南アフリカのミュージシャンたちを率いたシャバカ・アンド・ジ・アンセスターズによる新作『ウィ・アー・セント・ヒア・バイ・ヒストリー』(Impulse)です。

シャバカはカリブ海地域に住んでいたこともあって、ジャズのルーツの一つであるカリビアン・ミュージック的要素もありつつ、今回はよりルーツを遡った南アフリカ的サウンドが見事に現代ジャズとして結実しています。南アフリカと言えば、ユニークなジャズ・ミュージシャン、ダラー・ブランドを生んだ地域ですが、そうしたアフリカ経由のジャズ的要素とUKジャズの重要なサックス奏者の先輩、コートニー・パインが持つカリブ海的気分が複雑な形でシャバカの音楽に反映されているようです。

クイン・キルヒナーはシカゴ出身のドラマー、作曲家で、キューバでパーカッショニストに師事した後奨学金を得てニューオルリンズ大学に進学という変わった経歴の持ち主です。彼の音楽はフリージャズ的要素とカリビアン・サウンドの結合という、あまり例をみないスタイルで、今後の活躍が楽しみです。

そして最後は、ジェームス・ブラウンの伝説的バンドThe J.B.’sで活躍したファンク・レジェンド、アルトサックス奏者、メシオ・パーカーの『Soul Food(Funk Garage)です。これは理屈抜きに楽しめますね。こうして世界のさまざまな“ジャズ”を並べて聴くと、いまやジャズこそがワールドミュージックとして生き残っているのが実感として伝わって来ます。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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