ニューヨークを拠点に活動する若手日本人ミュージシャンたちによるJ-Squadは、3年前に日本のTVの音楽を録音するために作られた臨時編成グループでした。今回最初に収録した『J-Squad 2(Universal)は、昨年発売された彼らの2作目のアルバムです。

メンバーは既に『ジグザガー』(Concord)などのリーダー作を出している黒田卓也(tp)、話題のグループ、スナーキー・パピーのメンバーとして知られる小川慶太(ds, per)、そしてバークリー在学中たびたび優秀賞を獲得した気鋭のテナー奏者、馬場智章らによる2管クインテット。

聴き所は気負いのない中にも現代を感じさせる闊達な演奏で、「日本人のジャズ」という「別枠限定」を抜きに彼らが現代ジャズの担い手であることが実感されます。これは嬉しい。

新譜特集第19回でもご紹介したJD アレンは、1972年ミシガン州デトロイト生まれの中堅テナー奏者です。彼はピアノレス・トリオで演奏することが多いのですが、今回のアルバム『Barracoon(Savant)もベース、ドラムスのみを従えたトリオ編成です。率直に言って地味な演奏ですが、私はかなり好きです。

聴き所はテナーの音色ですね。特に激しくシャウトするわけでは無いのですが、内に秘めた情熱と言いましょうか、フレーズの一音一音にエネルギー、存在感が漲っているのです。最近のミュージシャンはみなテクニックは圧倒的に巧くなっているのですが、アレンのように音自体が力を持っているジャズマンは珍しい。じっくり腰を据えて聴きたいアルバムです。

エスパソはベーシスト、柳原達夫をリーダーとするグループで、今回ご紹介するアルバム『First Impresion(May Record)はなんと15年ぶりの新譜だそうです。楽器編成はギター入りテナー・クインテットですが、そのサウンドは極めて新鮮。ダイナミックなリズムに乗ったエキゾチックなメロディが心地よい。ちなみに「エスパソ」とはポルトガル語で「空間・宇宙」を意味するそうです。知名度はありませんが注目に値するグループと言っていいでしょう。気に入りました。

スイス出身の新進ピアニスト、イヴ・タイラーによる新アルバム『We(Intakt)はヨーロッパ・ジャズ的な要素もありながら、自己主張が明快なところが聴き所でしょう。伝統的なアコースティック・ピアノ・トリオですが、出てくる音は思いの外押し出しが強いのですね。「オレの言いたいことはこれだ」という気迫が伝わってくるのです。要注目。

アーロン・パークスの新譜『Little Big(Ropearope)はパークスのピアノ、キーボードにギターが加わったカルテット。アルバム・タイトル、バンド名はSF小説から取ったということですが、確かにエレクトリック・ギターを前面に押し出したサウンドはSF的と言えそうです。聴き所はイヴ・タイラーと同じで、音楽的主張がはっきりとしているところでしょう。パークスはバンド・サウンド、アルバム・コンセプトをしっかりとコントロールしているのですね。

最後にご紹介するのは『Yin And Yang(Can Jazz)。イタリアの女性ピアニスト、リタ・マルコチェリと、同じくイタリアのドラマー兼ヴォーカリスト、イスラエル・バレーラによるライヴ・レコーディングです。聴き所は何と言ってもマルコチェリの気合の入った演奏ですね。切れ味と気迫が凄まじい。これこそがジャズの醍醐味です。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

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東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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