──春夏秋冬シリーズも遂に冬曲。今回もじっくりとお話を聞かせていただきに参りました。

「毎作品、ありがとうございます!」

──まず、秋曲「月見想」をリリースしてからを振り返ってもらえますか?

「内容的にヘビーな曲だったのでわかりやすく言うと、燃え尽き症候群になりました(笑)。アルバムのことも見据えていたましたが、いや、どうしよう? 何を書こう?って。春夏秋冬“LOVE”というテーマで縛ってはいましたけど、何を歌おうかな?というので、すごく時間がかかりました。結局、歌詞もレコーディング当日まで書き上がらなくて、追加でもう一日もらいました。レコーディング当日に書き上げて録ったような感じでした」

──そして、冬です。冬という季節にはどんな印象を持っていましたか?

「いわゆる冬のプレイリストを見ると、僕も好きな「雪の華」(中島美嘉)とか、クラシックなラブソングが多い印象があって。僕もそこに乗るような曲を作りたくて、そこから作っていきました。もう夏前には最初のセッションをUTAさんとLOARくんとやっていたんですけど

──Taka Perry(「SAKURA」)、☆Taku Takahashi(m-flo)(「向日葵花火」)、蔦谷好位置(月見想)ときて、どうしてこの二人とやろうと思ったのですか?

UTAさんはそれこそ『THE FIRST』のオーディションを受ける前、日本のプロデューサーに今ほど詳しくない頃から、BTSや三浦大知さんのプロダクションでお名前を知っていました。自分の音楽ルーツ的にずっと長くハマってるのはドリカムですけど、AAAにもハマった時期があってその後に三浦大知さんにすごく影響受けて、そして、K-POPにもハマって。点々とする中で、一定の時期ずっとUTAさんの音を聴いていました。デビュー後は、Novel CoreBE:FIRSTの楽曲でニアミスしていて。Coreからも早くUTAさんとやってほしい。絶対にShotaと合うよとずっと言われていたので、念願のセッションでした」

──LOARさんとはBMSG MARINE名義で発表した「Memoria」やBE:FIRSTのSOTAさん、MANATOさんとのユニット、ShowMinorSavage「Ocean」でご一緒していますね。

「僕とBMSGプロダクトの中でとても親和性が高くて、いてくれると超安心する方なので。だから、UTAさん、LOARくん、僕、この3人でやりたくて。オケ自体は出来上がっていたので、あとはサビのメロディーを何パターンも悩む段階でした。「アノナミダ」の時にTakuさんとメロディーの海の中に潜らなきゃいけないということを話して以降、いいメロディーに出会ってきた1年だったので、サビは何パターン目なんだろう?というくらい追求していました」

──バラードに決めていましたか?

「そうですね。ノーリファレンスで音楽を作ることを大事にしているんですけど、イメージ共有として聴いていたのがSMAPや嵐の楽曲でした。僕の中ではJ R&BをやっていたEXILEより、当時のジャニーズの方がルーツとしてはすごく色濃くて。イントロのキラキラ感とか…バラードのプレイリストを作れるくらい好きでした。UTAさん的にはずっとやってきたことではなかったりするんでけど、プロデューサーのど真ん中をちょっとずらすことができた気がして。“UTAさんにこのイメージをお伝えしたときにどう解釈してくれるんだろう?というところからイントロ作りが始まりました。トラックを聴きながらうわぁ、平成!って言いながら、3人ですごく盛り上がったのを覚えています」

──イントロが30秒あって、トータルで5分を超える曲も時代的には珍しくなっています。

「今の時代の音楽の聴き方とのギャップはあります。そこの苦しさは感じつつも、いいものはいいと評価されたい気持ちは変わらずに思っていて。僕にとってのJ-POPど真ん中の曲は<1A1B1サビ/2A2B2サビ/落ちサビ/転調/大サビ>が王道なので、それをやろうとするとどうしても5分にはなるんです。だから、イントロも削る?という話もしていたんですけど

──でも、「雪の華」や「冬がはじまるよ」をはじめ、2000年代のJ-POPの冬の名曲はイントロがいいんですよね。

「そうなんですよ。「ハナユキ」も、既にライブで何度か歌ったり、テレビ歌唱もしているんですけど、イントロでここまで浸れる曲は今までなかったと思ってそれは実際にパフォーマンスしてみて感じたことです。当時のJ-POPシーンの真ん中で歌っている人たちはこんな気持ちだったんだって。すごく気持ちいいんです」

──先ほど、“当日まで出来なかった”という歌詞は、冬のラブソングで花という縛りがある中で、どう考えていましたか?

「音的にはすごく幸せだから、ハッピーなラブソングを歌いたくて。でも、長く一緒にいるお相手がいるという歌詞は、僕にはまだリアルではなかったので、自分のものじゃなくなってしまう気がしました。失恋は割と書いてきましたし、なんか違うな…”となった時に、プロポーズみたいな曲にしたいというアイデアが浮かんで。白いバラを基調にしたプロポーズのような曲を書けるといいなと思って、サビの歌詞をずっと考えている中で、うーん…”と悩んでしまいました。結果的に恋愛に縛らない方が書けると思って、より広く捉えて、デビューしてからずっと大事にしているを書くことにしました。最終的には僕の死生観のような感じになるんですけど、大事な人が死んじゃうのマジで嫌だという曲です」

──あはははは。一言で言いましたけど、まだ起きていない未来に対する不安ですよね?

「はい。かなり現実主義者なんですけど、そこに関してだけはファンタジーじゃないとしんどくて。終わりは絶対に来るのに、自分の近い距離にいる人に対しては、その人がいなくなるなんて考えたくないというかどこかファンタジーになってしまう瞬間があったりします。明日、死んでもいいようにと思いながら生きているんですけどね。改めて、そこに立ち返ってみました。逆にここまで<わがままな子供みたいに>、<永遠を信じてみてもいいかな>という歌詞は書いたことないかもとも思いました。この方向でいけると思ったのは、ちゃんみなの「SAD SONG」の影響もあります。『THE FIRST TAKE』を見ていたんですけど」

──HANAが誕生したオーディション番組『No No Girls』のファイナリスト10名と一緒に歌っていました。

「そう、ちょうどこの歌詞を書いている時に永遠を願うという曲を聴いて、背中を押されました。あの曲を聴いて、僕もこのテーマで書けるかもとなってからはすごく早かったです。ライブでみんなが定番で言う、大事な人を想い浮かべながら聴いてくださいという曲が初めてできました。それまで言ったことがなかったんですけど、それを言える曲になったと思っています」

──“永遠を探し、信じ、願う“という意味ではプロポーズの曲ではあるけど、同時にいつかくる終わりも想像していて…。

「いつも一緒にやっているHIRORONの夫婦生活の話とかも聞いていて。僕も結婚に対してとても憧れがありますし、ずっと大事な人と一緒にいるのってすごい素敵だと思っているんです。そういう曲を書きたいモードだったのも相まって、幸せと憂いが共存する曲になっているんですけど、Dメロはレコーディング当日に書き上げたんです。でも、スタッフさんにそこが一番Aile The Shotaっぽいと言われて、すごく嬉しかったです。そこは本当に詞先で、これを言いたくてメロディにしただけだったので」

──スポークンワードに近いですよね。感情が赴くままに一気に歌っている感が出ています。

めっちゃ自分ですね。Aile The Shotaの哲学のうちの一つです。これまでリリースしてきた曲の中にも命に対して歌った曲は何曲かあります。「Epilogue」は著名人の自殺に食らってしまって書いた曲で、「アノナミダ」はすごく仲の良かった身内が亡くなってしまって書いた曲でした。でも、今回は初めて、まだいてくれる存在に対して歌っています。遅くなる前に書いた曲なので、だからもう、嫌なんですよ嫌でした。すごくいい曲なんですけど」

──幸せな中でも<最期がよぎる>から…。

「すごく感じてしまうんです。だから、近くの人に聴いてほしいけど、なんか嫌でした。これを実感してほしくないっていう変なバランスというか…“あなたに向けて書きましたと言えない感じはありました。小さい頃からですけど、相当ビビっているので。変なんですよね。でも、家族にもあの歌詞、いいねと言ってもらえました。それは僕が普段から言ってることなんですけど、また明日って言葉がすごく好きなんです」

──まさに<「また明日」って言葉が好きなのは>というフレーズがありますが、先日、TAGRIGHTの曲をプロデュースしていましたが、「花言葉」というタイトルで<明日を信じて>という歌詞が入っていましたね。

「リンクさせようとかはなかったんですけど、とてもリンクしてしまって(笑)。あの曲は西山(智樹)くんと前田(大輔)くんとディスカッションをして、二人の話を聞いて当て書きしたんですけど、そもそも彼らが通ってきた過去と僕の過去がリンクしていて。だから、僕も一言一句違わず歌える曲だったりしますし、セルフカバーしたいと思うような曲でもあります。「ハナユキ」が完成してすぐ同じチームで作ったので、いい二連チャンだったと思います。J-POP向き合い期の締めくくりでした」

──また、MVも幸せと憂いが同居した映像になっていますね。

「今回は「月見想」と似ているバランスです。「向日葵花火」は僕が抽象的な存在で、具体的なドラマがあったんですけど、「ハナユキ」は具体を背負いたいと思って。ストーリーとしては女の子がいて大事な人の帰りを待っている割とシンプルなものになっています」

──でも、全然帰ってこないですよね?

「そうなんですよ。夜まで待っていて、来ずに終わります。結末を提示はしていなくて、あとはもう僕のリップシーンで伝える作品だねって。ドラマの撮影もずっと見ていて、夜になって最後は自分のリップの撮影だったんですけど、ワンテイク目で涙が止まらなくなっちゃって

──先ほど話に出たD メロのところですよね。

「あそこまでよく耐えたと思います。実際はDメロ以降、号泣しながら歌っているんですけど、MVでは使われていませんでした(笑)。現場は初めての空気感でした。霧ヶ峰の山の方に行って、すごく寒くて雪は降らせていたんですけど、とても過酷なロケでした。でも、それ以上に自分の楽曲に入り込めたという体験が大きかったです。ワンテイク目でそうなることはあまりないんですけど、1Aから入ってしまって、2 番からはずっと大事な人がよぎってしまいました。やべやべやべえと思いながら、Dメロでもういいやと思って泣いて。そういう経験ができたのは嬉しかったです」

──タイトル「ハナユキ」にはどんな想いを込めましたか?

「最初に白いバラと言いましたけど、途中から具体的な花にしなくていいんじゃないかな?と思いました。雪にまつわる言葉を色々調べて、花雪という言葉が出てきて…“花のように降る雪だから、花ではなく、雪を例える言葉です。でも、季節と花の総集編として、最後はふわっとさせちゃおうかな?と思って。大事なことはそこではない曲ですし、楽曲が少し優しく丸くなるワードチョイスでした」

──あと、2サビで<あなたがいる その夢の中で 永遠を信じてみてもいいかな>と歌っていて、春ソング「SAKURA」では、夢の中で時を超えていましたよね。だから、4曲続けていくと、まさに季節を巡ってる感がありました。

「春と冬は抽象の2曲で、夏と秋が具体の2曲だったと思いますし、根っこの部分では考えていることがやっぱり繋がっています。最近、自分の癖のようなものもわかるんです。<〜してもいいかな>とか、<永遠>や<忘れる>、<儚い>や<願う>という言葉とか。シグネチャーじゃないですけど、どの曲から出会ってくれるかわからないので、常にAile The Shotaらしい言葉づかいをやろうと思っていました」

──「ハナユキ」の初披露は台湾でのライブ(『Billboard Live TAIPEI 2025』)だったんですよね。

「そうです。HIRORONとベースの(森光)奏太を連れて行きました。J-POPサウンドでベースが際立つのがもうドリカムすぎて(笑)、すごく良くて。「ハナユキ」の初披露にベースを連れていけて良かったです。ドリカムのライブを観ていて、“J-POPの中で出てくるマサさん(中村正人)のベースすごいなと思っていたので、近いサウンドをやれたのが嬉しかったです。鳴っている音は超J-POPなので、歌っていてもとても気持ちが良かったです。歌だなというか…“シンガーだなという自覚を感じる曲でした。あと、さっき言ったように、大事な人を想い浮かべて聴いてほしいので、あえて来てくれている一人一人と目を合わせる曲でもなかったりするので、僕も大事な人を想い浮かべて歌っていました。すごく尊い時間でした」

──台湾のお客さんの反応はどうでしたか?

「初海外がまさか初ビルボードだとは思わなかったので、その面白さもありました。でも、日本のカルチャーを好きな方が多いということを強く感じました。あと、帰りの空港で台湾の可愛らしいおじちゃんにSAKURA」で知って、「さよならシティライト」が好きですと話しかけられて他にも何人かが話しかけてくれたことも嬉しかったです」

──ライブでは「愛のプラネット」のMCで“戦争反対”という言葉を口にしたと聞きました

「思わずこぼれちゃいました。ああ、「愛のプラネット」はこのために作った曲だったなと思い出させてもらって涙が出そうになりました。僕は日本を踊らせる、世界を踊らせるというテーマでやっていますけど、マイクを持つことで影響力を持てるので、そういったメッセージを伝えることもできます。この4年で作ってきた楽曲たちが、それぞれ違う方向に育っていっている感じもしていて。でも、今回は自分で狙い定めていた世界進出ではなかったんです。突然オファーを頂いて、せっかくなら行こうかってところから始まった台湾公演でした。まだ海外に向けて具体的に何かをしていない状態で知ってくださっている方がいたというのはすごく嬉しいですし、元々アジアに向けてやろうと思っていたので、それを早めないとというのを感じました。また来年も忙しいや!って感じです(笑)」

──あははは。忙しいことが嬉しそうでもありますね。改めて、春夏秋冬、4曲連続リリースを終えて、ご自身ではどんな感想を抱いてますか?

「当たり前に季節にすごく向き合えたので、それはいちアーティストとしても、人間としても、すごく充実した年でした。来年以降、毎年、桜、ひまわり、花見の季節というのが巡ってくるものを置いておけたというかそれぞれの季節に4つ、花を挿したような感覚があります。1年後にどうなっているのか? みんなもプレイリストに気軽に入れやすいと思いますし、どの曲もそういうものを目指して植えた感じがあるので、季節の曲は来年以降がすごく楽しみです」

──そして、来年の2月に待望の2nd Album『REAL POP 2』 をリリースされることが発表されています。

「この春夏秋冬の4曲が入ったことによって、前作で「Pandora」で広げたものとは違う部分の幅がすごく広がったと思っています。より大事な部分がより強調されているので、とても好きです。超いいアルバムになりました」

──どんなアルバムになっているのか、ひと言だけいただけますか?

「前作で掲げていた本質を大衆へがより具体性を帯びて、受け取る側の解像度が上がると思います。「SAKURA」、「向日葵花火」、「月見想」、「ハナユキ」が新しい部分を担っていますし、これぞAile The Shotaと安心してもらえる曲たちが詰まっています。“Aile The Shotaはどんなアーティストですか?という問いに対しての答えになりますし、ここまで J-POP なんだ!というのも伝わると思います。その人自身がジャンルという人っているじゃないですか。idomeill、ちゃんみなもそう。BMSGの外側でそういうアーティストに出会ったり、その人が進んでいく姿を見れたりするので、自信をもらうことはとても多くて。星野源さんもダンサブルで踊れるリアルポップな方だと思うので、Aile The Shotaも早くそこ行きたいというのは感じています。今年はあまり踊っていないので、来年はめっちゃ踊りたい!という感じです。期待していてください!」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
Photographer/Kota Watanabe (ROM inc.)

RELEASE INFROMATION

Aile The Shota「ハナユキ」

2025年123日(水)配信

Aile The Shota「ハナユキ」

Aile The Shota 2nd Album『REAL POP 2』


2026年2月18日(水)発売

<商品形態>
【数量限定盤】CD+Blu-ray (3DISC)
・価格:¥13,000(税込)
・品番:BMSG-0025
・仕様:BOX + デジパック
・特典:直筆サイン入り特典 + フォトブック
【通常盤】CD Only
・価格:¥3,300(税込)
・品番:BMSG-0026
・仕様:紙ジャケ
・封入特典:シリアルコード付き
<CD収録曲>
01. 開花宣言 (Prod.Shin Sakiura)
02. SAKURA (Prod. Taka Perry)
03. ShyなBaby (Prod. Sam is Ohm)
04. ENOSHIMA ORANGE BLUE (Prod. Taka Perry)
05. 向日葵花火 (Prod. ☆Taku Takahashi)
06. レイドバック (Prod. Ryo ‘LEFTY’ Miyata)
07. 月見想 (Prod. 蔦谷好位置)
08. Fantasize (Prod. Alenoise)
09.りんごじゅーす (Prod. HIRORON)
10.ハナユキ (Prod. UTA, LOAR)
11.キセキセツ (Prod. Taka Perry)
<Blu-ray収録内容>
・DISC-1
Aile The Shota Oneman Live “REAL POP”
March 16. 2025 @TOKYO GARDEN THEATER
・DISC-2
”2025” 〜Making of REAL POP 2〜

LIVE INFORMATION

Aile The Shota Oneman Tour 2026

2026年3月20日(金・祝) 鹿児島 CAPARVO HALL
2026年3月21日(土) 福岡 DRUM LOGOS
2026年3月28日(土) 埼玉 HEAVEN’S ROCK熊谷 VJ-1
2026年4月04日(土) 新潟 新潟LOTS
2026年4月19日(日) 岡山 YEBISU YA PRO
2026年4月25日(土) 石川 金沢RED SUN
2026年4月29日(水・祝) 大阪 BIGCAT
2026年5月08日(金) 宮城 仙台Rensa
2026年5月09日(土) 北海道 札幌 PENNY LANE24
2026年5月23日(土) 愛知 THE BOTTOM LINE
2026年5月28日(木) 東京 Zepp DiverCity (TOKYO)

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