――少し前になりますが、9月に開催された「BMSG FES’22」の感想から聞かせてください。
「THE FIRST FINALの時とはまた違って、Aile The Shotaとしてあんなに大きいステージで勝負したのは初めてだったんですけど、いちばん大きく感じたのは自分の楽曲のポテンシャルでしたね。「AURORA TOKIO」で15000人のお客さんが手を振っている画はとてつもなかったし、「Like This」は、スカイハイボール飲みながら(笑)、超自然体に肩の力が抜けた感じでやれて。「IMA」は勢いというか、魂を込めてやる曲ではあるんですけど、特効や映像という大きな演出を背負った時の爆発力みたいなものをすごく感じて。あの時に、Aile The Shotaとして大きいステージに行きたいってめちゃくちゃ強く思いましたね」
――所属アーティストが一堂に会する場でもありました。
「そうですね。大きいステージで、超ポジティヴな空間にいる仲間が受け止めてくれて。あらためて自分がBMSGにいる意義とか、異質な空間を作り出すことができたなと思ったので。「so so good」で会場を踊らせることができたのは達成感もあったし、自信につながったので、あれ以降、変わったことは多かったですね。ライヴでできることがわかったというか、ひとつひとつのステージがとても楽しくなりましたね」
――仲間からはどんな刺激を受けましたか?
「改めて、多種多様で、本当にいい音楽をたくさん持ってるレーベルだなと思いました。BE:FIRSTは、そもそもカッコいいし、かなりの数のステージを経験してるので、パフォーマンスのクオリティや技術の高さを感じましたね。そこに、Novel Core、SKY-HIというラッパーがいて、edhiii boiとTAIKIと3人でtofubeatsの曲をやったりする。BMSGはすごく幅が広いし、音楽として面白いなって。あと、単純に僕は彼らのファンなんですよ。お互いそれぞれの仲間でありつつ、いちばんのファンみたいな感じなので、それがあったかいですし、自分のパフォーマンスの現在地を確認できる場所だったなと思います。だからこそ、BMSG FESは1年に1回やりたいなって。あの時に過去最高を出せたので、次に何を持ってこれるか?そんな場所になったらいいなと思いました」
――そして11月には初のオーガナイズイベント「Place of Mellow」がありました。
「超楽しかったです!BMSG FESの後、ちょこちょこ地方に呼んでもらって、いろんな場所でライブをやらせてもらって。そんな中で、初めてオーガナイズする、自分が軸にいるライヴだったんですけど、こんなにも楽しいものか!って思ったんですよね。出演してくれた春野くんとeillに超感謝してて。ただただあの2人が大好きで、ファンで、そこから友達になれて、あんなにたくさんの人がいる前で自分が楽しいことをできたことがすごく嬉しくて。あと、レーベルの仲間もたくさん観に来てくれて」
――社長がいちばん盛り上がってましたね(笑)。
「そうですね!俺も見えてました(笑)。ワンマンではないですけど、Aile The Shotaが見せたいものをようやく日高さんに見せれたなっていう想いがあって。日高さんは、もともと僕に対してすごく信頼というか、安心してくれてるんですけど、それがより大きくなったなっていうのは感じたし、言ってくれて。BMSGにいることの誇りというか、いられてありがたいっていう感情から、僕がいてBMSGは大きくなるっていう方向に完全に変わりましたね」
――日高さんは終演後の関係者挨拶の時に「Aile The Shota の成功なくして、BMSGの成功はない」って断言してました。
「日高さんはよく、“ShotaがBMSGだから”って言ってくれるんですよ。僕はいつも“任せてください”って答えるんですけど」
――プレッシャーでないですか?
「自分でもいけると思っているので、プレッシャーは全然ないです。しかも、日高さんから“これをやって”って言われたことはない。“好きなようにやれば大丈夫”といううえでの言葉だったりするので、日高さんの期待には応えられる自信があるし。それが世の中の期待に応えられることにもつながってると思ってて。Aile The Shotaを見続けてくれたら絶対に面白いって言い切れます。期待を超え続けられるなっていう自信はあるので、そこを大事にやっていきたいですね」
――MCでは何度も「1回目の!」と強調してました。
「そうですね。もう2回目をやるつもりでいますね。BMSGフェスから短い期間でしたけど、確実に得たものは大きくて、成長したところも大きくて。見つめ直すっていうほうが近いかもしれないですけど、本当にやりたいライヴができたんですね。超自然体で、かつ表現もしっかりできた。曲の美しさや破壊力。背景にLEDを背負ってっていうライヴが自分に合うなっていうのも改めて感じて。DJにA.G.Oくんがいてくれたのも大きかったんですけど、ステージ上がグルーヴして、そのグルーヴがどんどん伝播していって会場ごとグルーヴして……っていうのを完全に感じることができたので、いいライヴだったなって思いますね。しかも、スペシャルなことに、たくさん仲間が観に来てて、大好きな友達が演者としていてくれた。僕は、仲間とか自分の大事なつながりを音楽にそのまま反映するタイプのアーティストなので、Aile The Shotaとしては絶対に続けていきたいオーガナイズイベントなんですよ。細かいところでの改善点はあるけど、いろいろやりたいなって思うことはたくさん浮かんだので、1オーガナイザーとして名を馳せられるくらいに大きくしていきたいなと思います。もっと上に上にという欲も出ましたね」
――数多くのステージを経験して、たくさんのものを得た後、前作から4ヵ月ぶりとなる3枚目のEP「LOVEGO」がリリースされます。
「制作自体は7月くらいから始めているので、時の流れがバグっちゃう感じもあるんですけど……そこで行きついた結論というか、この「LOVEGO」っていう作品を出したことによってデビューしてからここまでが腑に落ちるようなEPになったなと思っていて」
――EPのテーマ、そしてタイトルの意味から聞いてもいいですか。
「僕自身がエゴとラブ……まあ、ラブと向き合うことが多かったがゆえに、エゴとすごく向き合ってた期間だったんですね。僕はその時に感じていることをそのまま書くタイプなので、それが曲にも出てて。4曲の輪郭が見えたくらいの時に気づいたんですけど」
――1枚目のEP「AINNOCENCE」も愛を歌ってましたよね。当時、「白く包み込む愛」って。その愛とこのラブは違うものですか?
「最初のEPの時は、自分がすごく恵まれていて、生きてることに感謝、毎日に感謝したいっていう気持ちが強くて。それは今も変わらないんですけど、あの時は、白い状態でスタートしたいっていう気持ちがあったんですね。それ以前から変わらないものを光らせる、僕が受けてきた愛を軸に、これからも変わらずに白い状態でいたいっていう意味ので「AINNOCENCE」だったんです」
――今回はどうして愛がエゴだと感じたんでしょう?
「愛するがゆえのエゴ、自分自身のエゴにすごく気づかされることが多くて。めちゃくちゃエゴにまみれてるなって思ったのと同時に、やっぱりたくさん見られてる現状で受ける愛、受けるエゴもやっぱりあって。それが確かなものだっていうのは感じましたね」
――それは、ネガティヴなイメージですか。
「自分自身の誰かに対する想いがエゴだなって感じるのはめちゃめちゃマイナスですね。それが2曲目の「無色透明」に活かされてるんですけど、その中でも愛を歌うことにきっと意味があるなというか。愛はきっとエゴなんです。でも、歌いたいっていうテーマで、「LOVEGO」になりました。ネガティブをポジティヴに変えたいというよりは……」
――そのまま受け入れる感じ?
「そうですね。受け入れるとか、見つめ直すっていうほうが近いですね。肯定はしないし、浴びるエゴすべて、どうぞどうぞとは言いたくない。僕も自分の意思があるので、“それはあなたのエゴだよね”って言いたいところもあるし、自分でも、これは自分のエゴだってわかって直したいと思うこともある。それでも、変えられないエゴがあって。その中で愛を歌うこと自体も実はエゴだなとも思うんですけど、自分自身であり続けることをここでも強く思っていたいなっていうところで4曲目ができました」
――4曲目の「LOVE」はtofubeatsさんのトラックです。
「まさかデビュー1年目、3作目のEPで一緒にやれると思ってなかったので、オファーを受けてくれた時はめちゃくちゃうれしくて。もともとはフィーチャリングを入れて、僕のクラシックになるような曲を作ろうって思ってたんですけど、その前に1回、自分ひとりで作って、そこからどう広がっていくかを見たいと思って」
――ずっとやりたいと思ってた?
「そうですね。僕はtofubeatsさんの「水星」がすごく好きで、たくさん聴いてた時期があったんです。だから、今回も「水星」がやりたいですって言ったら、本当に好きすぎるイントロのシンセセイザーがきて。それによる苦戦はありましたね。このビートを無駄にできない、こんな素敵なビートに100点乗せないとなって思って。これは4曲のなかで手を付けたのがいちばん遅かったのかな……何もない状態から作る日を決めて、その日にマジの親友を家に呼んで。「Place of Mellow」も観に来てくれた大学時代の親友なんですけど、もう1人の自分だと思ってるくらい感覚の近いやつで。そいつが横にずっといてくれて、僕がメロディを入れたり、歌詞を書いたりして」
――それは面白いですね。現実の隣にオルタナエゴがいるみたいな環境じゃないですか。
「それがめちゃくちゃ良くて。歌詞はまず、昔メモに書き留めていた<自分自身の目に自分は映らない>をサビでで歌うことが、「LOVEGO」の中にあるポジティヴなものとして正解なのかもなって思って。そして、<今は愛を歌ってもいいかな>で終わらせたいというところから、バースの部分はメモ帳に書き溜めてたことで、今でも強く思うことを集めてきて。なので、この曲に関しては重たい、長い曲ですね。このタイミングだけで書いたというよりかは、今までの自分を書いてる。繋がってるものがすごく長い」
――少年時代から振り返りつつも、今、現在は<愛を歌ってもいいかな>と断言はしない状態で止めてて。
「そうですね。歌いたいっていう意思だけ残して、その中に自分の価値観や皮肉を入れていたりする。世間に対して、自分自身に対して、この曲の中でも視点をいろいろ変えてるんですけど、サビのメッセージは一貫してるので、優しさとか愛とかそういうものを歌いたいっていう曲ですね。Dメロのところなんて完全に自分のことですからね(笑)。超自分の歌なのに、広く受け取ってもらえる曲になってると思います。これは本当にクラシックに育てたいですね。誰もが知ってる曲になればなって思ってます」
――最初に作ったのは?
「「DEEP」ですね。これはそんなにエゴとか感情が強い曲ではないんですけど」
――でも<deep in love>というコーラスが入ってます。
「ダブルミーニングじゃないですけど、深いところっていうのをいろんな側面から描いていて。深いところに沈んでしまったのは、本音や本質みたいなものなのか。あなた自身なのか、自分自身なのか……いろんな角度から見つめて、深い、DEEPをテーマに書きました」
――ちょっとセクシーなニュアンスもありますよね。
「そうですね。ただ、こうですって正解を出すような曲ではなくて。A.G.Oくんにディープハウス作りたいですってところから始まって、もともと音先行で作った曲だったので、音からイメージを受けて、深海とか深さみたいなものを感じて、そこから作っていきましたね。やっぱりキャッチーさというか、僕のルーツであるJ-POPが活かされたようなパートは作りたいって話はしていて。なので、いちばん最初のセッションでBメロのフレーズは出来上がってて。そこからであれば、どんなにエグくしてもキャッチーさが残るから、バースはやりきっちゃおうって。これは明確に進化しましたね。A.G.Oくんの本気をぶつけてもらって、それを僕が乗りこなしたいっていうところから始まったので、A.G.Oくんに感謝ですね」
――続く「無色透明」はTAARさんのプロデュースです。
「最初の出会いは、確か、eillとかと集まった時にTAARくんもいて、☆Taku Takahashiさんもいらっしゃって。初めましてって話した時からすごく意気投合したんです。TAARくん自身、すごく考える人で、僕もそこに共鳴する部分があって。いつか一緒に曲やりたいねって話をしてたので、今回お願いして」
――どんな曲をオファーしましたか。
「TAARくんのビートだったら、いちばん自分の心情の澱んでる部分を活かせるなって感じて。だから、<染める>をテーマにやろうと思ってますって話をして。染めてしまおうとする自分とか、染まっちゃってるんじゃないかなとか。そういう話をした時に、めちゃくちゃ深いところで感じ合えたんですよね。最初にビートをもらった時は、めちゃくちゃリリックやフロウをはめるのに苦戦したんですけど、伝えたいことは一貫していたし、納得感や満足感みたいなものがこの曲にはあって。コーラスの積み方とか音の部分でも僕のマインドや世界観をキャッチして、それを活かすためのラインを表してくれたし、いいなって思うところが一緒で、TAARくん相性いいなって思いましたね」
――「AINNOCENCE」での白いまま光らせたいっていうところから?
「自分の中に染められない白いものを持っていたいっていうのが「AINNOCENCE」だったんですけど、これは逆に相手の透明な部分を探してしまう自分に向き合った曲ですね」
――なるほど……それは、エゴですよね。
「そうなんですよ。これが「LOVEGO」のエゴの部分をすごく表しているなと思っていて。しかも、それは、自分の深いところにあるものだから、変わるわけではない。向き合い続けるというか、きっとこれからもついてまわるものだなと感じましたね。でも、曲にしたことによって、あまりにもマイナスすぎる感情が昇華されたり、美しくなる。それは、僕の人生で見たらすごくありがたいことだなと思うので、これからもそういうマイナスと向き合い続けることが自分の音楽にはいい影響を及ぼすし、自分の人生もきっと良くなるって思えましたね」
――人生が豊かになるのは間違いないですよね。そして、「gomenne」は%Cさんです。
「今回も僕の好きな人たちにオファーしてて。%Cさんもずっと好きで、僕の声質がバッチリハマるなって思ってて。ローファイビートが好きなので、サンプリング文化を愛してる人との共作はすごく楽しいんですよ。%Cさんのビートでは<Love Your Self>を歌いたいっていうのがあって。SKY-HI「me time -remix- feat. Aile The Shota」で書いたことの続編というか、自分の曲でも歌いたいって。もう1回それを噛みしめ直して、新たな作品として、Aile The Shotaとして出したいって思った時に、それもリアルタイムで「ごめんねを奪いたい」っていうところがリンクして。<Love Your Self>っていうテーマと実体験――僕が感じた<ごめんねを言わない>でっていう願いみたいなものがハマるって。ダブルテーマというか。その2本軸が混ざり合った感じはしますね。自分を傷つけすぎてる人に<Love Your Self>って言いたいっていうのと、この人のごめんねを奪いたいっていう僕の想いが混ざり合ってる曲です」
――自分自身を愛してっていうのはエゴじゃないじゃないですか。
「そうですね。でも、押し付けちゃったらダメじゃないですか。僕は“強要”と“共有”ってめちゃ言うんですけど、<Love Your Self>って言葉で言ったら強いけど、歌にすることによって柔らかくなるし、歌えるなと思って。<Love Your Self>がテーマの曲は世の中にたくさんあるからこそ、超具体的な僕の経験で唯一無二の<Love Your Self>にしたくて。だからこれもエゴではありますよね。結局、全部エゴだなと思ってしまうんですけど」
――LOVEとEGOに向き合って一枚作ってみてどうでしたか。
「たまたま3枚目でこの感情と向き合うことになって、自分で感じてたエゴに対して感謝できるようにはなりましたね。LOVEを書いたのは初めてなんです。1、2枚目はなかったというか、1、2の時にLOVEをしてなかったっていうだけなんですけど(笑)」
――恋愛はお互いのエゴを全力でぶつけ合うような側面もありますよね。
「うんうん。振り返った時にどう思うかはわからないですけど、きっと日記みたいなものだなと思ってて。日記は、振り返って読んだら恥ずかしいこともあるしれないですけど、音にすれば素晴らしいものになる。何年後かにこの感情がなかったとしても、変わらず愛せる作品だし、1、2枚目では書いてこなかった感情とも向き合ったので、新しい扉を開きまくった作品ではありますね。ただ、僕の中で「LOVE」がフィニッシュ感強すぎて。終わった? みたいな。1個、結論出ました、みたいな曲なので、4枚目どうしようって、出来上がってすぐに思いましたね」
――あはははは!
「昨日「LOVE」のMV撮ったんですけど、親友が出てくれたり、「AURORA TOKIO」の衣装が置いてあったりして……。え、引退すんの?みたいな(笑)曲ができたので、ここからより自由にやれるかなと思いましたね。感情を描くことに関して、しがらみみたいなものはまったくなくなったし、描ききったなって感じがするので、これからもリアルタイムを描き続けようって感じですね。好きなようにやって、いろんな人と曲を作って、いろんなライブやイベントに出て。友達を作るというところが曲に直結するので変わらずにいろんな場所に出会いに行きたいなと思ってますね」
(おわり)
取材・文/永堀アツオ
写真/野﨑慧嗣
DISC INFOAile The Shota「LOVEGO」
2022年11月23日(水)発売
BMSG/ Virgin Music Label and Artist Services