──ソロとして初となるアルバム『Bouquet』を制作している段階では、どんなアルバムを作ろうと考えていたのでしょうか?

「これまで、映像作品に出演させていただいた時に主題歌も担当させてもらうことが多かったんです。そんな楽曲を1枚のアルバムとしてまとめつつ、僕のソロ名義初の楽曲「Possible」(20201月リリース)を提供してくださった☆Taku Takahashi(m-flo)さんとまた楽曲を制作したい、女性目線で歌ってみたいなど、いろいろなアイディアを出して、具現化していきました」

──☆Taku Takahashiさんには、どのようにお話をしたのでしょうか。

「まず、“僕のソロアーティストとしての方向性を形作ってくださったのは、☆Takuさんが提供してくださった「Possible」なんです”と伝えた際にすごく喜んでいただいたんです。そこで“今回、アルバムでまた楽曲を一緒に作ってくれませんか?”とお願いしたら“是非!”と言っていただけました。すごくありがたかったです。その時点で、このアルバムの収録曲も出揃っていたので、そのバランスを見て、“今回はもっとBPMが速い曲をやろう”と言ってくださったんです。それからトラックを作り、トップラインや歌詞を作る段階で、☆TakuさんがRyohei Yamamotoさんを呼んでくれて、一緒に作ってくれたんです。Ryoheiさんもm-floと親和性が高い方ですし、僕自身、ひとりのm-floファンとして、Ryoheiさんのことはもちろん存じ上げていたので、ものすごく熱い楽曲提供だと思い、テンションが上がりました。「Possible」から5年経つので、「Stay or Go prod. by Taku Takahashi」で、どんなストーリーに成長したのか、意識して聴いてもらえたら嬉しいです」

──最初に曲を聴いた時にどんなことを思いましたか?

「まず、「Stay or Go」というタイトルに驚きました。すべてがこのタイトルに集約されています。それは恋愛だけではなく、人生の中で、“行くか、留まるか”。その選択肢しかないと思いました。しかも、サビで<Stay or Go>が<Stay Gold>に落ち着いているのもとても気持ちが良かったですし、永遠ではなくても、ずっと輝けるものに向かって進んでいこうという、ポジティブなメッセージだと思いました」

──きっと、5年前に歌うのと、今歌うのではまた厚みが違いそうですね。

「本当にそう思います。今だからこそ、しっかりと芯まで届けられるような気がしています。それに、年齢が重なるたびに問われる選択がより重いものになってくるからこそ、今歌う意味があると思いました」

――アルバム『Bouquet』に収録された新曲3曲は、それぞれMVが制作されています。どんなイメージで制作したのでしょうか?

「今作では「Stay or Go prod. by Taku Takahashi」、「Smoky Town Rain」、「朝⽇のように、夢を⾒て」のMVを作りました。蓋をあけたらどれも全く違うテイストになっていて、すごく幅広いMVになったと思います。「Stay or Go prod. by Taku Takahashi」は二面性を描いたような疾走感のあるMVになりましたし、「Smoky Town Rain」は、今回のパッケージデザインなども含めてクリエイティブディレクションをしていただいた方にお願いして制作を始めました。チーム全体がとても若い世代で構成されているんですが、懐かしさもある映像になっています。そして、「朝⽇のように、夢を⾒て」では、映像ディレクターが僕の想いを受け取って、数日かけて仙台ロケをしてくれました。そこで撮影した映像もミックスされているんですが、自分自身も自然の一部で、自然と共生していることを改めて教えてもらえるような、すごく心地いい映像になっています」

――よりクリエイティブに触れることで、音楽のおもしろさをより感じたのではないでしょうか?

「そうですね。その分、難しさも感じました。あと、“ソロだからこそ極端なことにも挑戦できるかな?”と思っていて。パッケージ、ジャケット、楽曲、そしてMVなどすべてに挑戦が満ちた作品になりました」

──中でも、土岐麻子さんとのコラボ曲「Smoky Town Rain」はとても新鮮でした!

「もともと土岐麻子さんの音楽が大好きなんです。以前、ライブを拝見させていただいたときに、“20年間ライブをしていて、やっと緊張せずにラクな気持ちになった”とおっしゃっていて、“自分はまだまだだな…”と思ったんです。余韻のある、行間のある土岐さんならではの音楽性もすごく贅沢に感じましたし、今の年齢になったからこそ、土岐さんの音楽に挑戦したいと思ったんです」

──土岐さんにはどんなリクエストをしたのでしょうか?

僕が土岐さんとご一緒することで一番伝えたかったのは、“日本語の美しさ”や“音楽の美しさ“でした。それを土岐さんはしっかりと受け取ってくださり、制作をしていただきました。実際にあがったこの曲は、言葉数はそこまで多くないんですが、“僕のことを見られていたのかな?”と思うくらい、共感度が高くて。より多くの人もそう感じられる、ぐっと入り込む曲になりました」

──ディレクションは土岐さんが?

「していただきました。すごく贅沢ですよね。レコーディングでは、僕が最初のテイクでふわっと歌ったのを聴いて、“すごく良かった”と言ってくれたので、あまり張り切って歌わない方がいいのかな?と察しつつ、歌っていきました。今までにない歌い方だったので難しかったんですが、僕が好きな土岐さんの音楽に触れることができただけでなく、新たな自分の引き出しを発見できて、とても貴重な経験になりました」

──「朝⽇のように、夢を⾒て」は、片寄さんが作詞を手掛けています。どんなイメージで書き上げていったのでしょうか?

「実はこの曲は、タイトルが最初に浮かんだことで制作をし始めたんです。毎年、初日の出を見ることをルーティーンにしているんですが、何度経験しても、ものすごく感動するんです。その美しさを曲に出来ないかな?と思い、自分が時代の流れで忘れかけていることや、どんなに辛いことがあっても必ず明日は来るということを歌詞にしたためました。最初に曲のイメージを作曲家の和田晶哉さんに伝えて、まさに僕がイメージしていた通りの楽曲ができたので、“さすがだな!”と思いました。この曲の歌詞を考えながら家で片づけをしていた時に、ふと窓の外を見ると虹が見えた気がしたんです。その時の空気感が心に残り、<虹の幻>というフレーズも入れています。それに、今って、何が正しくて、何が正しくないのかわからない時代になっているからこそ、信じられるもの、昔からあるものを大切にしたいというメッセージも詰め込みました」

──今作には、楽曲の制作秘話などがエッセイとして掲載されている豪華なブックレットも同封されますが、本当に素敵なものになりましたね!

「ありがとうございます。アルバムのブックレットって、フィジカルなCDを買ったからこそ読める、特別なものですよね。だからこそ、せっかく作るのであれば、全ページ楽しいものがいいと思って、僕が文章を書いたものを1冊の本のように仕上げていきました」

──すごく内容の濃いものですよね。

「そうですね。僕は15歳でこの業界に入って、今年30歳になるということは、みんなに知られていない時間の方がこれからはどんどん短くなることに気づいて。その時に、過去の自分、その当時の自分もちゃんと報われて欲しいと思ったんです。それこそオーディションの時から応援してくれている方もいらっしゃいますし、映画やドラマを見て知ってくれていた人もいるんですが、どのタイミングで僕を知ったとしても、楽しんでもらえるものってなんだろう?と考えたときに、“過去のことを書けばいいのかも”と思ったんです。これまで、インタビューでは話したことがあっても、自分の言葉で表することはなかったので、すごくいい経験になりましたし、大切なブックレットになりました。曲もブックレットも含め、今の僕だけでなく、これまでの僕を知ることが出来る作品になったので、ぜひじっくりと聴いてもらえると嬉しいです」

(おわり)

取材・文/吉田可奈
写真/中村功

RELEASE INFORMATION

片寄涼太『Bouquet』

2025年8月6日(水)発売
全3形態
[A] AL+DVD/RZCD-67354/B/11,000円(税込)
初回仕様:初回スリーブ仕様
[B] AL+Blu-ray Disc/RZCD-67355/B/11,000円(税込)
初回仕様:初回スリーブ仕様
[C] AL/RZCD-67356/4,730円(税込)

片寄涼太『Bouquet』

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