――世界中が目まぐるしく変化し続けている昨今、Shin Sakiuraさんは新曲「旅の途中」のリリースや、楽曲制作、プロデュース、ライブと精力的に音楽と向き合っていますが、2022年上半期を振り返ってみていかがでしょうか。
「上半期、ライブサポートやShin Sakiura名義でのリリースもありつつ、個人的にはプロデュースワークを意図してたくさんやらせていただいてた時期でした。少しづつですが自分ができることが増えたり、成長を実感しつつも、逆にできないことや苦手なこととは向き合って仕事のクオリティを上げて行けたり、自己理解が深まるのがすごく楽しかったですね。一方で、ソロ名義でのまとまった作品のリリースやワンマンライブなどの活動がなかなかできていなかったので、下半期はどんどんやっていこうと思っています」
――今年4月には、OTORAKUのキュレーターでもあるSIRUPさんとの共作「FOREVER」がリリースされましたが、この作品にまつわるエピソードや、この曲――あるいは音楽全般――への向き合い方をご自身ではどのように捉えていますか。
「作品づくり全体の中でなら、自分の感性を信じるということと、その作品を通してどういうことをやりたいのか明確にすることを意識しています。「FOREVER」に関していえば、制作時、レコーディングの直前ではあったけど、いくつかの箇所でどうしても試したいアイデアがあったので――サビのメロディを作り替えたり、Bメロのトラックのノリを変えたり――それをちゃんとSIRUPと相談しながらいっしょにトライしていたり。SIRUPのリリックには確かなメッセージがありつつも、説教臭かったり重いものにならないようなアレンジ、楽曲のフォーマットであることを考えて作ってみたり、そういったことかなと思います」
――Shin Sakiuraさんにとってのルーツミュージック、あるいはアーティスト/クリエイターを志す契機になった作品やアーティストは?
「もともとはギター少年だったのでそういう意味ではELLEGARDENやASIAN KUNG FU GENERATION、レッド・ホット・チリ・ペッパーズなど、いわゆるロックをたくさん聴いていましたが、20代になってクラブで遊ぶようになり、21歳あたりでビートメイクをはじめました。友人の影響もあってア・トライブ・コールド・クエストを知ってよく聴くようになりました。一時期ファンクにはまって、JB(ジェームス・ブラウン)をやたらと聴いてた時期があったかも。邦HIP HOPだとNF Zesshoの「Blono’s Way」とかJJJの「BABE」を思い出します。同時期にJean Tonique(ジャン・トニック)の「What You Wanna Do」(2016年リリースのアルバム『ジャン・トニック』収録)とかMoon Boots(ムーン・ブーツ)の「C.Y.S」とかJackLNDNとかタキシードとか聴いてました。Disclosure(ディスクロージャー)もよく聴いてたと思います。韓国のR&BシンガーのDEANの「love feat.syd」とか、 Jay Park「DRIVE(Feat. GRAY)」とかも好きで聴いてました。割と雑食なのもあって、特定のジャンルのルーツとかは実はないんですが、こういったところが自分の土台になってるのかなと思います」
――今回、OTORAKUキュレーターとして参加していただきましたが、商用BGMの選曲という作業はShin Sakiuraさんにとっても新たなチャレンジだったのでは?
「ふだんからカフェや美容室、服屋さんでふと流れてきた曲をShazamして曲を掘ったり調べたりすることが多くて、そういったところからアイデアやインスピレーションが生まれることがあって。そういった体感があったのでどこかの飲食店や美容院で流れるUSEN放送の選曲ができるのはとてもうれしかったですし、楽しく選曲できました」
――Shin Sakiuraさんが日常生活のなかで、BGMとして受動的に音楽を聴くシチュエーションや聴いている音楽の種類は?
「ふだんだと移動時が多いですかね。家で過ごすほとんどの時間が楽曲制作で音楽を聴き続ける生活なので、家では朝ごはんを食べるときや仕事を終えてリラックスしたいときに聴くことが多いです。コロナの影響もあって最近は生活の隙間で音楽に接することがほとんどなので、選曲させていただいたプレイリストに入っているようなリラックスしつつも、揺れられたりする音楽がメインかなと思います」
――日頃、店舗や飲食店などの商業施設のBGMに惹かれる瞬間はありますか。
「さっき、Shazamuしたりというお話をしましたが、そういったところで流れている曲にわりと耳を持っていかれるほうだと思います。特にこういうBGMじゃないといけないとかは考えたことはないですが、だれが選曲してるんだろう?店員さんの趣味なのかな?とか、選曲した人の思いに考えを巡らせてしまいますね。最近だと近所の中華でK-R&Bがずっと流れていたり、ラーメン屋でTENDREが数曲続けて流れていたり(笑)。そういうのも好きですね」
――今回、選曲していただいたプレイリスト「Relax, Groove, My Favorite」についてセルフ・ライナーノーツ的なコメントをいただけますか。
「さきほど言ったとおり、実際にバーやカフェ、美容室で聴こえてきた楽曲を調べることも多いので、まさにそのシチュエーションを妄想しながら選曲しました。美容室で誰かと談笑したり、カフェでひとりでゆっくりしたりすることが多いので、落ち着けるものでありつつ、楽しさや前向きさ、グルーヴのある音楽を選んでいます。自分が影響されたり好きで聴いているものがほとんどなので、むしろパーソナル感強めの選曲になっていると思います。Chocoholic「7PM (feat.ROMderful)」、Galdive「Puzzle」、イージー・ライフ「BEESWAX」、Yung Bae「Straight Up Relaxin' (feat.Cosmo's Midnight)」あたりの曲がレファレンスです」
――実際にこのプレイリストを使われるOTORAKUオーナーや、OTORAKUを介してShin Sakiuraさんのセレクトした音楽を聴かれるリスナーの皆さんへのメッセージを。
「ふだん僕が生活するうえで、移動時やライブ前の空き時間などに、リラックスしたり、気持ちを入れ替えたりするときに聴いている楽曲から選曲させていただきました。皆さんの過ごす時間が、より良くなれば幸いです。僕自身もEPやアルバムといったまとまった作品をリリースして、コロナの影響で中止になった東名阪ツアーのリベンジをしたいですね」
(おわり)
取材・選曲監修/林 健斗(USEN)
文・構成/高橋 豊(encore)
「OTORAKU -音・楽- 」PLAY LIST「Relax, Groove, My Favorite」 Curation by Shin Sakiura
1.Moonchild「Love I Need (feat. Rapsody)」
2.Kenta Dedachi「Fire and Gold」
3.Snakehips「WATER. (feat. Bryce Vine)」
4.イージー・ライフ「BEESWAX」
5.さらさ「温度」
6.Heli「パートタイムロマン」
7.lo-key design「BLOOM」
8.Galdive「Puzzle」
9.Remi Wolf「Guy」
10.Shin Sakiura「旅の途中 (feat. Kan Sano)」
11.Chocoholic「7PM (feat.ROMderful)」
12.maco marets「Surf (feat. TOSHIKI HAYASHI (%C))」
13.アンバー・マーク「Softly」
14.ましのみ「escape」
15.Prep「Turn the Music Up」
16.VanJess「Slow Down (feat.Lucky Daye)」
17.イージー・ライフ「ocean view」
18.Yung Bae「Straight Up Relaxin' (feat.Cosmo's Midnight)」
19.土岐麻子「Calling」
20.SGルイス,ナイル・ロジャース「One More」
21.Raisa「You Better Believe Me (feat. Kara Chenoa)」
22.Giveon「For Tonight」
23.Gentle Bones「Better With You」
24.TENDRE「ENDLESS (feat.SIRUP)」
25.Misha,Jussi Halme「Bliss (Mixed)」
26.Jarami「Cold Blooded」
27.SIRUP,Shin Sakiura「FOREVER」
28.kiki vivi lily「Yum Yum (feat. Shin Sakiura & Itto)」
29.maco marets,さとうもか,Shin Sakiura「L.A.Z.Y.」
30.Remi Wolf「Disco Man」
31.xander.「Wake Up (Mixed)」
32.Shin Sakiura「Need You」
33.Wafia「Good Things」
34.HONNE「Good Together (Jarami Remix)」
Shin Sakiura「旅の途中 (feat. Kan Sano)」
2022年1月19日(水)配信
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