前回に続き、今回の新譜紹介でも、冒頭にご紹介するギブトン・ジェリンの初リーダー自主製作盤『True Design』は、熱いソロを聴き所とするベテラン・ジャズファン向けの1枚と言えるでしょう。抑え気味ながら内に秘めた熱気を感じさせるトランペット・サウンドは、かつてファンを唸らせたイスラエルのトランぺッター、アヴィシャイ・コーエンを彷彿させます。

しかしギブトンの出身はフロリダ半島の沖合に位置する島国バハマ生まれ。彼はジャズに惹かれニューヨークに渡り、現在名門ジュリアード音楽院に在学中の新人です。聴き所はギブトンのトランペットも素晴らしいのですが、前回ご紹介した注目のアルト奏者、イマニュエル・ウィルキンスの参加が効いています。そして同じく新鋭ピアニスト、ミカ・トーマスのソロが圧倒的。ハードバップ名曲《グランド・ストリート》けれん味なくを採りあげているところもベテランファン向けでしょう。

2枚目は、シャバカ・ハッチングス率いるサンズ・オブ・ケメットで重要な役割を果たしたチューバ奏者テオン・クロスのデビュー作『ファイア』(Gearbox)です。こちらもサイドの援軍、ヌバイア・ガルシアの個性的なテナーが聴き所。フレーズだけでなく、独特の艶、輝きを持った音色自体が個性的なガルシアのサックスと、テオンの重厚なチューバ・サウンドが絡み合うさまは圧巻です。

落ち着いた音色でしっとりとメロディを聴かせるテナー奏者、ジョナサン・グリーンステインの『Jonathan Greenstein Vol.4(Somethin’ Cool)は、今注目のイスラエル出身ミュージシャンによるEPプロジェクト第4弾。サックス奏者ながら《トランペット・キングス》というタイトルの楽曲を演奏しているので不思議に思いましたが、キングの中に先ほど言及したイスラエルのトランぺッター、アヴィシャイ・コーエンが入っているという本人のコメントで納得です。ほかにフライング・ロータスの《MmmHmm》をカヴァーしているのも興味深いですね。

ドラマー兼コンポーザー、ダン・ワイスの『Natural Selection(Pi Recordings)はクレイグ・テイボーンのキーボード・サウンド、ベン・モンダーのギターが聴き所で、ダンのジャンル横断的な発想が面白いアルバムです。聞くところによると、このアルバムはデヴィド・リンチ監督のTV番組「ツイン・ピークス」復帰にインスパイアーされたとのこと。

カート・ローゼンウィンケルの傑作『カイピ』でブラジル、ミナス地方の音楽が注目されましたが、ディアンジェロ・シルヴァは「ミナス新世代」を代表するピアニストです。彼の第2弾『ハングアウト』(Think! Record)には、こちらもブラジルを代表するミュージシャン、アントニオ・ロウレイロがドラマーとして参加しています。ディアンジェロはブラッド・メルドーを尊敬しているそうですが、やはりブラジル人の血か、音楽全体が明るいのですね。

聴き所はジャズとブラジリアン・テイストが完全に融合しており、明らかにジャズの表現領域が広がっていることを実感させるアルバムだというところでしょう。

The George Coleman Quintet In Baltimore(Real To Real)は未発表発掘音源で、タイトル通り71年にボルティモアで行われたライヴの記録。演奏は折り紙付きの熱演です。注目すべきはこれがコールマンのリーダーとしての初録音らしいというところで、60年代にマイルス・グループで名演を残している彼も、リーダーとしての活動は70年代に入ってからだったのですね。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

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東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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