冒頭に少し宣伝をさせてください。私は2014年4月から『ジャズ100年』、2015年4月から『ジャズの巨人』、そして2016年5月から『ジャズ・ヴォーカル・コレクション』という、小学館から刊行されたCD付きムックの選曲・監修をさせていただいてます。隔週刊行それぞれ年に26巻、トータルで78巻もようやく終るかと思いきや、好評に付き今年の5月から半年12巻の「ヴォーカル編」延長が決まりました。わたくしごとながら、いまや何度目かの「ジャズ・ブーム」が到来していることがヒシヒシと実感されます。

それは新譜状況を見ても明らかで、今までに無い斬新なジャズ・グループが続々と登場しています。スナーキー・パピーは既にご紹介してきましたが、今回はその重要なメンバーであるキーボード奏者、ビル・ローレンスのロンドンでのライヴ・アルバム『ライヴ・アット・ユニオン・チャペル』(Verve)からの選曲です。サイドマンとしてスナーキーの主要メンバーであるベーシストのマイケル・リーグ、ドラムスのロバート・シアライトが参加していることでもわかるように、サウンドはかなりスナーキー的。

リーダーがマイケルなので当然ですが、彼の斬新な音楽性、キーボード・センスが堪能できます。シアライトの切れの良いドラミングも気持ちいいですね。マイケルはイギリス人ということもあり、スナーキーのもう一人のキーボード奏者、コリー・ヘンリーとは対照的な音楽的バック・グラウンドの持ち主。それが、スナーキーの音楽の多様性に大きく貢献していることがこのマイケルのリーダー作を聴くと良くわかります。

次にご紹介する「ザ・コメット・イズ・カミング」もイギリスのグループで、キーボード、テナー・サックス、ドラムスによるトリオ。彼らのアルバム『チャネル・スピリット』は、「リーフ」というヨークシャーに拠点を置くエレクトロニック・ミュージックのレーベルから出されているだけに、サウンドは極めて鮮烈かつアグレッシヴ。ともあれ、こうしたUK勢の「非アメリカ的」感覚が、ジャズに新風を吹き込んでいるのは間違いないようです。それにしても、楽器編成からは想像がつかないサウンドではあります。

ぐっと雰囲気が変わってジョン・ゾーン名義のアルバム『オン・リーヴス・オブ・グラス』(Zadic)は、ゾーンの楽曲を「メデスキ・マーチン・ウッド」のピアニスト、ジョン・メデスキとケニー・ウォルセンのヴァイブを、ジョーイ・バロンのドラムスらが支える落ち着いた演奏です。この、懐かしいようなそれでいてちょっとエキゾチックなサウンドは心地良いですね。ゾーンの作曲センスはやはりユニーク。

ギタリスト、ライアン・ブロトニックの新作『クッシュ』(Songline)は、異色のサックス奏者マイケル・ブレイクの参加が効いています。ブロトニックのギターは地味ながら聴くほどに味わいが出るタイプ。じっくりと聴き込みたいですね。

ご存知アントニオ・サンチェスの『スリー・タイムス・スリー』(Cam Jazz)は、彼がブラッド・メルドー、ジョン・スコフィールド、そしてジョー・ロバーノの3人をそれぞれゲストに迎えたトリオ演奏で、今回はジョンスコとの共演トラックを収録しました。

最後にご紹介するのはベテラン、ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィの2014年の録音『ダブル・サークル』(Cam Jazz)です。新進ギタリスト、フェデリコ・カサグランデとのデュオ作品で、ピエラヌンツィがいいのは言うまでもありませんが、カサグランデのギターが凄い。これは名演です。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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