ポストロックバンド、トータスのギタリスト、ジェフ・パーカーによるシカゴ・アンダー・グラウンド・カルテットによる新作『Good Days(Astral Spirits)は、タイトル通りアンダーグラウンドな匂いが漂うユニークなアルバムです。

ロブ・マズレグが吹くピッコロ・トランペットの、ちょっと頼りなげなサウンドが異様な気配を醸し出す中、哀愁味を帯びたジェフのギターがゆったりとフレーズを紡ぎだし聴き手の気分を非日常の世界へと誘います。

シカゴは昔から独自の音楽文化を育ててきましたが、彼らのサウンドはそうした系譜に連なるかのようですね。一味違ったジャズ・アルバムと言えそうです。

今回、個人的に面白かったのが、「西荻アンダーグラウンド」の主とも言うべき明田川荘之の『三階節』(メタ花巻アケタ)でした。録音は1995年ですから再発盤ということになりますが21世紀の今聴くことで新たな感慨が生まれたのです。

というのも、明田川が母親の故郷新潟の民謡「三階節」を演奏しているのですが、この新譜紹介にも登場したマーク・ド・クライブ・ロウの『Heritage』など、ちょっと懐古的とも思える日本をテーマにした21世紀作品を聴いた耳にとっては、これが新鮮に聴こえるのですね。

「民謡ジャズ」というと一定の若干レトロなイメージが付き纏うものですが、オカリナという滅多にジャズでは使われない楽器で演奏することによって、日本民謡に新たな生命が吹き込まれているのです。空気感というか音楽の響く空間がとても広々と感じられるのですね。

オカリナの起源は古代マヤ文明まで遡れるそうですが、あたかも南米の広々とした草原(想像ですが)の風景が浮かび上がってくるような感興をもたらすのです。後半のピアノも良く、アルトで参加している松風紘一、ギターの加藤祟之も好演です。

The Best Of Tommysongs(ADA)は、文字通りアコースティック・ギターの神様と言われたオーストラリアのギタリスト、トミー・エマニュエルの2枚組ベスト盤です。それにしても巧いです。得てして「巧い人」は情感が不足になったりもするのですが、さすが巨匠、和みのギター中に深い味わいがある。聴き込んで良し、また気軽に聴いても楽しめる好盤です。

以前ご紹介したブッゲ・ヴェッセルトフト率いるリムデンの2作目が『Space Salors(Jazzland)で、e.s.t.のメンバーであったベーシスト、ダン・ベルグンド、ドラマー、マグヌス・オストロムとのチームワークも一層密度を増しているようです。

基本フォーマットはピアノ・トリオですが、エレクトロニクスを多用したサウンドはトラックによってさまざまで、それがアルバムの色合いを多彩にしています。大音量で聴くカタルシスはなかなかのもの。

前回、ビル・フリゼールのトリオ作品をご紹介しましたが、今回のアルバム『エピストロフィー』(ECM)は相性の良いベーシスト、トーマス・モーガンとのデュオです。それにしてもビルフリはいいですね。

肩の力を抜いた何気ない演奏にも味わいがある。それがベースとのデュオというシンプルなフォーマットでより鮮明に浮かび上がっています。

最後は、コロナ禍の中録音されたことで話題となったブラッド・メルドーの新譜『Suite : April 2020(Warner Music Japan)です。

ソロ・ピアノ演奏で、元来内省的なメルドーの音楽ですが、その特質がここでも発揮され、静謐な響きの中に危機的状況の中での日々の思いが託された名演と言っていいでしょう。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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