コペンハーゲンの老舗ジャズクラブ「モンマルトル」を拠点として活動するドラマー、フレデリック・ヴィルモウの初リーダー作『フレデリック・ヴィルモウ・カルテット・フィーチャリング・トーマス・フランク~ライヴ・イン・コペンハーゲン』(AMP)は、久しぶりに往年のジャズ・シーンの熱気を感じさせるアルバムです。 

カルテットと表記されていますが、北欧を代表するテナー奏者トーマス・フランクがゲスト参加しているので、カルテットのソプラノ奏者マーク・ドフェイと合わせて2管クインテットによるライヴ演奏となっています。

ライヴ、2管、ゲスト参加ということで想像通りサックス奏者同士の意気込みが凄く、あたかもかつてのエルヴィン・ジョーンズの名盤『ライトハウス』におけるデイヴ・リーヴマンとスティーヴ・グロスマンの熱演を彷彿させます。最近のニューヨーク・シーンの繊細な演奏を聴き慣れていると、このストレートさはちょっと懐かしいですね。

2枚目にご紹介するアルバムもヴィジェイ・アイヤー、チャールス・ロイドらと共演したニューヨーク在住のベーシストHarish Raghavanの初リーダー作『Calls For action(Whirwind) で、こちらはガラッと雰囲気が変わってまさに現代ニューヨーク・ジャズです。編成はクインテットで、聴き所はつい最近来日公演を行って注目されたヴァイヴ奏者ジョエル・ロスの参加でしょう。

3枚目は、これも上に挙げた2作品とは趣を異にしたジョージ・コリガンのオーソドックスなピアノ・トリオ・アルバム『Again With Attitude(Iyoue Music)です。リーダーはコリガンですが、レーベル自体がドラマー、レニー・ホワイトが主宰しているので、彼がベーシスト、バスター・ウィリアムスとコリガンを招いたピアノ・トリオ作品ということでしょう。こちらもサウンドの「懐かしさ」という点では冒頭の北欧アルバムと似ているかもしれません。

スナーキー・パピーのキーボーディストとして注目されているビル・ローレンスが、ドイツの著名なWDRビッグ・バンドを従えた力作アルバム『Live at the Philharmonie Cologne(JAZZ KINE)は、ローレンスのカラーを出しつつ、スナーキーとは異なるサウンドが魅力です。

大編成ビッグ・バンドを意のままに操りつつ、WDRビッグ・バンドらしさもキチンと出しているところが聴き所で、この辺りローレンスのバランス感覚の見事さが現れていますね。

共にジャンル横断的な活動で知られたベーシスト、ビル・ラズウェルとJah Wobbleが共演した興味深いアルバム『Realm of Spells(Jah Wobbke)は、予想通り怪しく響く低音に乗った小気味良いリズムが聴き所。最初のトラックにはドラムスの山木秀夫も参加しています。

最後にご紹介するチリのピアニスト、エンリケ・ロドリゲスの新譜『Lo Wue Es(Extra Lovery) は不思議なテイストを持った作品で、ほとんどのトラックが彼自身の演奏で作られているそうです。チリ在住とは言え、いわゆるラテン的な要素はほとんど感じられず、あえて例えれば近未来SF映画のサウンド・トラックのような印象ですね。聴くほどに味が出てくるタイプの音楽と言えそうです。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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