『ラヴ・リクァイテッド』(Rings)のリーダー、マイエレ・マンザンザはニュージーランドのドラマーです。彼の父はコンゴ出身のパーカッショニスト、サム・マンマンザで、マイエレはニュージーランドに初めて本格的アフリカ音楽を紹介した父親のバンドでパーカッション、ドラムスを学んだあと、ロンドンで「レッド・ブル・ミュージック・アカデミー・2010」の参加し、フライング・ロータスらの授業を受けプロデューサー、ビートメーカーとしてのテクニックを身に付けたそうです。

こうした多彩な経歴の持ち主ですが、このアルバムから聴こえて来る音楽は極めて正統的なジャズの文脈にのっとったもので、メンバー全員の音楽的統一感、小気味よいダイナミズムなど、かなり聴き応えのある演奏です。とは言え、アメリカのジャズとは一味違った微妙なエキゾチシズムを感じさせたりもするので、その辺りが聴き所、面白さでもあるでしょう。

ベーシスト、マイケル・ジャニッシュの新作『World Collide(Whirlwind Recodings)もトランペット、アルト・サックス、ギター、ドラムスを従えたオーソドックスなジャズで、トラックによってテナー、キーボードがゲスト参加しています。こちらのアルバムも音楽的密度感や演奏の勢いが素晴らしく、さまざまなタイプの現代ジャズがそれぞれの方向で音楽的完成度を高めていることが実感されます。

ビル・フリゼール、ブルーノート移籍第一弾である『ハーモニー』は、タイトルが示している通り最近ジャズ・シーンでも注目されているアメリカーナ的音楽要素を基調としたハーモニーが聴き所となったアルバムです。中心となっているのはチャーリー・ヘイデンの娘であるペトラ・ヘイデンのドリーミーな声で、それにハンク・ロバーツのアコースティック・ギター、バリトン・ギター、ベース、ヴォイス、そしてルーク・バーグマンのチェロ、ヴォイスが加わり、フリゼールのギターと共に穏やかでありつつ力強さも感じさせるハーモニーが構成されています。

ベーシスト、クリス・ライトキャップの『Superbigmouth(Pyroclastic)は、以前出した『Bigmouth』 というアルバムの続編なのでしょうか、かなり強力なメンバーが参加しています。トニー・マラビー、クリス・チークの2大テナー奏者を中心に、クレイグ・テイボーンがオルガン、ピアノを担当し、ドラムスのジェラルド・クリーバーらに加えギタリストも2名います。こうした人材をライトキャップがプロデュースし、ニューヨーク・ジャズ・シーンの活きの良さを巧く切り取ったアルバムとなっています。

The JazzknvadersPhil Martinをリーダーとする6名からなるオランダのグループで、彼らの『Last Summer In Rio.(P-Vine)はブラジリアン・テイストが楽しいアルバム。それを象徴するのがブラジルのAzymuthのメンバー、ベーシストAlex Maiherios、ドラマーIvan Mamaoらのゲスト参加で、採り上げた楽曲《Avenida das Mongueirs》もAzymuthのナンバーです。

そして最後はピアノ・トリオ・アルバム『Of Memories To Come(Timezone)。ドイツのピアニストJan Alexanderをリーダーとするトリオ編成。スタイルはごくオーソドックスなのですが、演奏が佳境に入ると極めて音楽的集中度が高くなっており、その辺りがこのアルバムの魅力となっています。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

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