今回ご紹介する新譜は、いわゆるピアノ・トリオとギター入り編成のアルバムが多いのですが、当然ながらサウンドの傾向、スタイルは多彩です。とりわけピアノ・トリオではキーボード、オルガンなどの使用、そして周縁音楽の影響によって、一昔前のように一括りに出来るジャンルではなくなりました。

最初のアルバム『So Far(Brus & Knaster)は、1973年スウェーデン生まれのピアノ、キーボード奏者、ダニエル・カールソンのピアノ・トリオ。エレクトロニカ系のサウンドはゴー・ゴー・ペンギンを思わせもしますが、カールソンのグループはより有機的で、その分「ジャズ的」とも言えるでしょう。ただ、いささか前のめりながらダイナミックでノリの良いリズムはゴー・ゴー・ペンギンと同質で、この辺りがヨーロッパ、新世代ピアノ・トリオの特徴なのかもしれません。

クリス・クロスからの新譜『Terrible Animals』は2005年のモンク・コンペティションでデビューしたノルウェイのギタリスト、ラゲ・ルンドの意欲作です。エフェクターを駆使したイマジネイティヴなサウンドを、ラリー・グレナディアのベース、タイソン・ショーリーのドラムスが煽り立てる小気味良い演奏で、ピアノのサリヴァン・フォートナーの参加も光っています。

ギタリストが続きます。ニューパンの新譜『Big City(Losen Record)はたいへんコンセプトがはっきりしています。こちらもノルウェイを拠点として活動してきたギタリスト、ニューパンが、アメリカのジャズメンたちとの共演を望んだ彼の待望作が今回のアルバムです。

サックスのベン・ウェンデル、ピアノのテイラー・アウグスティら、ニューヨークで活躍中のミュージシャンをかき集めた臨時編成バンドながら、息の合い様は十分。聴き所はやはり情感に満ちたウェンデルのサックスですね。

以前バッド・ブラスの2019年に録音されたアルバム『Active Infinity(Edition Infinity)をご紹介しましたが、今回収録した2017年録音の『Never Stop II(Legbreaker Records)も、ピアノ・トリオの概念を刷新したバッド・プラスらしい好盤です。こちらもピアノはオリン・エヴァンスで、それをベースのリード・アンダーセン、ドラムスのデヴィッド・キングが支えるオーソドックスな編成ながら、リズムの扱いやクールな情感を湛えたユニークな曲想がもたらす効果は歴然で、完全にこのフォーマットが革新されたことを実感させます。

イスラエルのベーシスト、オル・バレケットも以前『OB 1(Fresh Sound New Talent)というアルバムををご紹介しましたが、今回の新譜『33(Enja)には、2018年にオルをサイドマンとして来日公演を行ったイスラエルの新人ピアニスト、ニタイ・ハーシュコヴィッツが参加しています。また、『OB 1』にも参加していたギタリスト、シャハル・エルナタンも加わった斬新なサウンドは、イスラエル・ジャズの勢いを示しているようです。

異色のサウンドが続きましたが、最後はベテラン、ピアニスト、マーク・ソスキンによるオーソドックスなピアノ・トリオ・アルバム『Upper Wast Side Stories(Steeple Chase)です。聴き所はバド・パウエルの極め付き名曲《ウン・ポコ・ロコ》を快適に弾きこなしているところでしょう。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

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