今回は初めての試みとして、2017年のベスト盤を選んでみました。正確には2017年発売では無いものも少し混ざっていますが、要するに「私が昨年聴いたアルバム」ということでご容赦いただければと思います。個々のアルバムの内容については、末尾にこのコラムに登場した回を記しましたので、提示した回のコラムをご覧ください。

作ってみて驚いたのですが、数年前でしたらベスト5を選ぶのにも苦労したのに、今では簡単に10枚選べるばかりでなく、「次点」を作らざるを得ないほどなのです。また、いわゆるビッグネームが相対的に少ないのは、新人を積極的にご紹介したいという気持ちとともに、新人、そして相対的に知名度が低いミュージシャンのレベルが飛躍的に上がっていることの反映でもあります。

●2017ベスト盤
1, Kurt Rosenwinkel / Caipi (148回)
2, Kamashi Wasington / Harmony of Difference  (154回)
3, The Passion of Charlie Parker (152回) 
4, Chihiro Yamanaka / Monk Studies (151回)
5, Mamal hands / Floa (146回)
6, Ky / 心地よい絶望 (150回)
7, Rebecca Martin / The Upstate Project (150回)
8, Lizz Wright / Grace / Barley (154回)
9, Stephan Tsapis / Border Lines  (155回)
10, Ollie howell / Self-Identity (152回)
次点 Hamshire and Foat / Galaxis Like Grains of Sand (152回)

さて、今回のアルバムのご紹介に移りましょう。1枚目はカンザス・シティを拠点として活動する新人トランぺッター、ハーモン・メハリの『Blue』(自主製作)です。聴き所はサイドに参加したアルトのローガン・リチャードソン、ピアノ、キーボードのアーロン・パークスの活躍ぶりです。

2枚目はリトアニア出身のサックス奏者Kestutis Vaiginisの『Lights of Darkness』(自主製作)です。いわば「現代ハードバップ」とでも言うのでしょうか、オーソドックスな演奏がらその斬新なエネルギーはまさに21世紀。

そして昨年はセロニアス・モンク生誕100周年だったこともあり、様々なモンク・トリビュート作が出ましたが、『セロニアス・スフィアー・モンク』(Alph Pap)は、マルチ楽器奏者・プロデューサーであるマストこと、ティム・コンリーによる意欲作です。モンクの楽曲の想像力は21世紀のジャズ・シーンにも確実に届いているのです。

今話題の新人ギタリスト、ジュリアン・ラージの新譜『モダン・ロア』(Mac Avenue)は、彼の音楽的バック・グラウンドの広さを印象付ける軽快な作品。圧倒的なテクニックによるサウンドの万華鏡が心地よい。

そして大御所ビル・フリゼールの新作『ミュージック・イズ』(Okeh)は、何と18年ぶりのソロ・アルバムです。個人的体験ですが、私は90年代でしたか彼のアコースティック・ギターによるソロ・コンサートを観て、その音楽的センスの素晴らしさに圧倒されたのでした。今回の作品はその時の感動を彷彿させます。

最後にご紹介するのは、フランス領マルティニーク島出身のピアニスト、グレゴリー・プリヴァによる『ファミリー・ツリー』(ACT)です。彼はフランスの名ピアニスト、ミシェル・ペトルチアーニに触発されてジャズ・ピアニストを目指したという経歴の持ち主で、切れの良いタッチとラテンのフレーヴァーが聴き所です。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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