最初にご紹介するのは、この新譜特集に何回も登場したゴー・ゴー・ペンギンです。アルバム・タイトルもグループ名そのまま『GoGo Penguin(Blue Note)。彼らのこの新作に賭けた心意気が窺えますが、まさにこれは彼らの代表作にふさわしい出来栄えと言っていいでしょう。

彼らの聴き所は、斬新かつユニークなピアノの旋律をベース、ドラムスがしっかりと支えることによって生まれる極上のグルーヴ感なのですが、この新作もその持ち味であるチームワークの良さはそのまま、ピアノの存在感が今まで以上に明確になったところが素晴らしい。その結果、いわゆる「色物っぽさ」が完全に払拭され、現代ジャズを代表するグループへと大きく飛躍した記念碑的アルバムと言っていいと思います。これは傑作です。

「ジルフェマ」とは、このコーナーで既にご紹介した西アフリカ、ペナン共和国出身のギタリスト、リオーネル・ルエケが以前使っていたグループ名で、イタリア生まれのスウェーデン人ベーシスト、マッシモ・ビオルカティ、ハンガリー出身のドラマー、フェレンク・ネメスと、自分自身の名前の一部を継ぎ合わせた造語だそうです。

従来のルエケ名義の作品は民族色の強いものでしたが、今回の新譜『Three(Mocloud)はメンバーの出自からも想像できるように、よりインターナショナルなテイストに仕上がっています。

Infection In The Sentence(Mocloud) はサウス・ロンドンのジャズシーンで注目されている女性キーボード奏者、サラ・タンディのデビュー作です。トランペット、サックスをサイドに従えた2管クインテットというオーソドックスなジャズ・フォーマットですが、アメリカのジャズとは一味違う雰囲気がいかにもUK風。それはあえて軽さを前面に出したドラムスやちょっとレトロなキーボード・サウンドに特徴的。

ヨーロッパの小国ルクセンブルグ出身のミュージシャン、ピアニスト、ミシェル・ルイス、ベーシスト、マーク・デムス、ドラマー、ポール・ウィルトゲンによるチーム、「レイス・デムス・ウィルトゲン」によるアルバム『Sly(Can Jazz)のジャケットには、犬のようなイラストが描かれています。しかしこれは狐だそうで、タイトルのSLYつまり「ずる賢い」しかし憎めない狐をテーマにしたピアノ・トリオ・アルバムです。確かに聴いていると童話に出てくる狐がすばしこく動き回るようなイメージが喚起されます。

ソウル、ファンク・シーンで注目のベーシスト/ヴォーカリスト、サンダーキャットの新作『It Is What It Was(Brainfeeder Record)は、ジャズ喫茶で聴いても馴染めてしまうところが興味深いですね。ポイントはカマシ・ワシントンの参加で、彼のジャジーなサウンドが違和感なくサンダーキャットの世界と溶け込んでいます。

ドリーミーなファルセット・ヴォイスも魅力的で、フライング・ロータスとの共同プロデュースによるソウル、ファンク、ヒップホップと幅広いミュージシャンを動員した多彩なサウンドをバックに響く心地よい歌声は、聴くほどに中毒的にハマります。

最後はスナーキー・パピーの人気キーボーディスト、ビル・ローレンスのライヴ盤『ライヴ・アット・ザ・ロニースコッツ』(Agate)です。

とにかく演奏が素晴らしい。メロディアスでありながらジャズ的な即興に満ちた彼の才能には驚くばかり。切れ良く力強いピアノのタッチ、想像力を喚起するフレージングの豊かさは当代一流と言っていいでしょう。お奨めです。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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