本展は「機能とは何か。それは私たちをどう感じさせるのか」という問いを起点に進められてきたリサーチプロジェクトの集大成である。デヴォンはニューヨークと東京を拠点に活動し、高忠実度スピーカーの設計を通じて、音楽の感情的本質を空間全体で体験させる表現を追求してきた。
Photo : Isa Saalabi
Photo : Isa Saalabi
Photo : Isa Saalabi
カリモク家具の工場を訪れ、日本の高度な木材加工技術や突板の精緻な表現力に触れ、自身の音響哲学との強い親和性を見出した。合板を主材としていた従来のスピーカー製作に木工技術を取り入れることで、音響機器でありながら工芸的質感を備える新しいプロダクトが誕生した。
展示タイトル「間の音」は、日本文化における「間」の概念と音の関係性に着目したもの。音は空間という媒介があって初めて成立し、音源と聴き手、静寂と響きのあいだに生まれる関係性が体験の質を左右する。本展ではこの思想を体感的に理解できるよう、3フロアそれぞれに異なるリスニング環境を構築した。
1階では茶室を想起させる小建築「サウンドハウス」を設置し、外界から切り離された静謐な音響空間を創出。座して聴く行為そのものを再定義する瞑想的体験を提供する。
2階では木製大型ホーンを備えたダイナミックなシステムを中心に、公共的で開かれたリスニング空間を展開。通常は金属で成形される複雑な形状を木材で実現し、有機的素材ならではの響きを生み出した。地下1階では開発された製品群を比較展示し、仕上げや素材の違いが音と空間表現に与える影響を検証できる構成としている。
発表されたスピーカーは「Sanjo(サンジョウ)」、「Rokujo(ロクジョウ)」、「Nurikabe(ヌリカベ)」の3モデルで、日本建築の要素に着想を得て設計された。突板技術により木目の個体差を生かしながら調和を生む外観を実現し、音響性能と家具的美しさを両立している。販売予定価格は440000円(以下全て税込)、770000円、1650000円。塗装や木取りは職人の手作業で調整され、量産性と固有性を同時に成立させた点も特徴だ。
サンジョウ
ロクジョウ
ヌリカベ
また、会場ではレコード販売や専門誌アーカイブ展示など、多角的なパートナーシップを通じてターンブルの思想的背景を紹介。音楽を聴くという行為を、空間、家具、素材、身体感覚を含めた総合的体験として再構築することを目指している。
本展が提示するのは単なる製品開発の成果ではない。形態は機能に従うだけでなく、人の感情や記憶、日常のリズムに寄り添うべきであるという思想の実践である。木という自然素材と精密な音響設計の融合により、暮らしの中に新たな豊かさをもたらす可能性を示す試みとなっている。
会期:2026年2月21日〜 6月5日
会場:KARIMOKU RESEARCH CENTER(〒106-0031 東京都港区西麻布2丁目24-2)
営業時間:12:00〜18:00
休館日:土・日曜(2月21日は除く)、およびゴールデンウィーク(5月1 ~ 5日)
アクセス:東京メトロ表参道駅 A5番出口より徒歩10分



