既に何度もご紹介している人気グループ、スナーキー・パピーの新作『Live at the Royal Albert Hall(Ground UP)は、201911月にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われた彼らのライヴを2枚組のCDに記録したものです。

「間違いがない」というのが、このグループのライヴ作品についてのもっとも適切な評価でしょう。プロ意識に徹しているというのか、ヴィクトリア女王の夫アルバート公の名を冠した7000人収容の歴史ある会場の聴衆を熱狂させ満足させるミュージシャン・スピリットにはほんとうに驚かされます。

ビル・ローレンスらキーボーディストに先導された分厚いサウンドが一糸乱れず、しかも音楽的躍動感に満ち満ちた演奏を繰り広げるさまは、いつ聴いても圧巻です。ライヴということも手伝い、聴衆とミュージシャンの一体感が素晴らしい。今回は2枚組CD2枚目に収録された冒頭からの3曲をご紹介しています。

カマール・ウィリアムスは、ヘンリー・ウーの名義でハウス・ミュージックのプロデュースも行う、いかにも今どきの混沌としたUKシーンを象徴するようなキーボード奏者です。今回ご紹介するアルバム『ウー・ヘン』(Black Focusu)は、アメリカのサックス奏者クイン・メイソンをサイドマンに起用したことも手伝い、かなり「ジャズ寄り」な演奏になっていますが、「俺たちがジャズを学んだのはストリートであって、教室ではない」とカマールが言う通り、近年のアメリカの洗練された“ジャズ”とは一味違う、良い意味での「えぐ味」が聴き所と言っていいかも知れません。

シコ・ピニェイロは1975年ブラジル、サンパウロ生まれのギタリストです。彼のリーダー作『シティ・オブ・ドリームス』(Inpartmennt)にはクリス・ポッターがゲスト参加しており、シコのマイルドなギターに強烈なアクセントを付け加えています。シコはアメリカでの評価もたいへんに高く、ハービー・ハンコック・コンペティション(旧セロニアス・モンク・コンペティション)のギター部門で、パット・メセニー、ジョン・スコフィールドといった錚々たるギター・リジェンドと並んで審査員に選ばれているのですね。

その実力のほどはこの10年ぶりの新作でも遺憾なく発揮されており、確かなテクニックに裏打ちされた音楽的表現の豊かさは折り紙付きと言っていいでしょう。ギターファン必聴アルバムですね。

今回一番面白かったのはリーネ・クルーセの『Invitation』(Continuo Jazz)でした。最初なんの予備知識もなく聴いたときはいったいどんなバックグラウンドを持った作品なのかまったく見当がつかず、ただその意表を突くサウンドの素晴らしさに聴き入ったのでした。

調べてみると、リーネはオランダ生まれフランスを活動拠点とするヴァイオリン奏者で、作曲家でもあるようです。「意表を突い」たのはこの作品がキューバ音楽にインスパイアーされ、録音もキューバで成されているところにあるようです。とにかくヴァイオリンの音色が実に魅力的なのですね。ジャズの可能性に限界はないことを改めて示しているような作品です。

ベテラン、ギタリスト、ウォルフガング・ムースピールのECM作品『Angular Blues(ECM)は、2018年の日本公演が好評だったので、その時日本で録音したECMとしては珍しいアルバムです。メンバーはベースにスコット・コリー、ドラムスはブライアン・ブレイドで、公演の評判を受け継いだ好演といっていいでしょう。

最後は『Live In Atlanta(Hi Hat)。パット・メセニー・グループのキーボード奏者として活躍した亡きライル・メイズの1981年の発掘音源です。彼のピアノ奏者としての優れた力量が記録された貴重な作品で、ピアノ・トリオ・ファンは聴き逃せない名演です。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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