ジャコ・パストリアスの衝撃的デビュー、そして非業の死からもう何年経ったでしょうか。

それでもジャコの人気は衰えを知りません。それを証明するのが出所不明の発掘音源の多さです。中にはかなり音質の悪いものもあるのですが、そうしたものにまでマニアの需要があること自体、彼のカリスマ性を物語っています。

今回最初にご紹介するのは、ジャコが率いたビッグ・バンド・サウンドを現代フランスを代表するマルチクォーリウム・ビッグ・バンドが再現したアルバム『リメンバリング・ジャコ』(Neive)です。

一聴して驚くのは、まるでジャコが共演しているのではないかと錯覚を起こす特徴的なベース・サウンドです。それもそのはず、圧倒的テクニックを誇るギター奏者、ビレリ・ラグレーンがジャコ・サウンドを象徴するフレットレス・ベースを弾き、ジャコの役を演じているのです!

そしてもちろんバンド・サウンドの切れ味も抜群、ジャコ懐かしの名演《インヴィテーション》はジャコ・ファン落涙ものです。曲の始めのナレーションは、ウェザー・リポート、ワード・オブ・マウスのドラマーを務めたピーター・アースキンです。

このところUKジャズが話題を集めていますが、その少し前にはイタリアのネオ・ハードバップとでも呼べるような演奏が人気でした。

イタリア人ピアニスト、フェデリコ・ボニファージの新作『Last Minute(Steeple Chase)は、こうしたオーソドックスなスタイルが現代性を身に纏った傑作です。トルコ出身のトランぺッター、トルガ・ボニファジをフロントに据えたワンホーン・カルテットによる演奏は、保守的フォーマットの枠を超えた迫力で聴き手に迫ってきます。聴き所はボニファジの説得力に満ちたサウンドと、演奏を前へ前へと押し進めてゆくロベルト・ガットの気合の入ったドラミングですね。

ママル・ハンズの『シャドウ・ワーク』(Gondwana Records)は少し前の作品ですが、今聴いても実に新鮮。優れたアイデア、斬新なサウンド、そして演奏技術が音楽を魅力的にするという、ある意味当たり前のことが確実に実現できているのですね。アルバムによる当たり外れが無いのもこうした実績に裏付けられているのでしょう。

コルネット奏者、ロブ・マズレグ率いるエクスプローディング・スター・オーケストラによる新作『Dimensional stardust(Rings)は奇妙な魅力に満ちています。そう、いままで聴いたことがないジャズ・サウンドとでも言えましょうかクラシック的であったり民族音楽のようにも聴こえたりと一聴捉えどころが無いのですが、聴くほどに味わいが出てくるタイプの音楽なのですね。これも現代ジャズの新たな方向性の一つと言っていいでしょう。

地味ながら圧倒的実力を誇るテナー奏者、JD アレンの新作『Toys / Die Dreaming(Savant Records)は期待を裏切らぬ名演です。決して激情的に吹きまくるわけでは無いのですが、音がみっちりと詰まっているというのか、さりげないフレーズに込められた情感の密度が尋常では無いのですね。いつも通りのピアノレスのサックス・トリオが醸し出すジャズ度数は極めて高く、あたかも年代物のモルト・ウィスキーを味わうような境地に聴き手を誘ってくれます。

最後はまたイタリアのピアニスト、ミケーレ・ファジオのアルバム『Free(Abeat For Jazz)です。端正で姿勢の良いピアノと言っていいでしょう。ゲストのトランぺッター、ファブリッジオ・ボッソの演奏も気持ちのこもったもので、ていねいに作られたアルバムの心地よさが堪能できます。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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