シオ・クローカーの新作『Black Two Life-A Future Past(Masterwork)はたいへん面白い作品です。シオは単なるトランぺッターではなくトータル・ミュージックを創造するユニークなミュージシャンなのですね。

内容は青山トキオ描くドリーミーかつ宇宙的なジャケットが表している通り、いわゆるアフロフューチャリズム的なスケール感を持った音楽で、とりわけコーラスを巧みに使った《Hero Stomp》が魅力的です。他のトラックもボーカルを巧みに使用し、音楽に広がりと楽しさをもたらしています。今後のジャズの行く末の一つの方向を示した試みと言って良いでしょう

ベルギー出身の女性トロンボーン奏者、ナブー・クラールハウトのデビュー・アルバム『You Know(One Note Record)はオーソドックスな中にも現代性を感じさせる演奏です。ナブーのトロンボーンを支えるギターとベース、ドラムスのシンプルな楽器編成がナブーの堂々としたソロを引き立たせています。ギター・ソロも力が入っている。ジャケット内の写真を見る限りナブーはアフリカ系のようですね。

キューバのテクニシャン・ピアニスト、ゴンサロ・ルバルカバが、かつて学んだジャズ・レジェンド、ロン・カーター、ジャック・デジョネットと再会した『Skyline(5passion)は、気合の入ったピアノ・トリオ・アルバムとなりました。大物たちに囲まれつつも自信をもって自らのスタイルを貫くゴンサロのジャズ・スピリットがダイレクトに伝わって来ます。

イタリアのベテラン、トランぺッター、エンリコ・ラヴァの新作『Ddizone Speciale(ECM)は、アントワープで行われたフェスティヴァルのライヴ・レコディング。ラヴァ以外にテナー、ギター、ピアノ、ベース、ドラムスが加わったセクステット編成で、大先輩ラヴァに挑戦するようにフリーキーなフレーズで挑発するピアノ、ギターらの意気込みが、ライヴならではの好ましい緊張感を生み出しています。

それに応えるようにラヴァも力強い演奏を展開する中、マイルス・ライクな瞬間があったりと、さまざまな聴き所を備えたアルバムとなっています。

こうした現代ジャズの流れの中で異色とも思えるのがB-3オルガンの名手、マイク・ドーン率いるビッグ・バンドの新作『It’s Your Fault(Savant)です。何しろグラント・グリーン作の名曲《マタドール》が飛び出すのですから。それにしてもビッグ・バンド・サウンドから繰り出される《マタドール》の迫力は凄まじく、ビッグ・バンド・ファン必聴盤と言っていいでしょう。

録音はあのルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオということで、メリハリの効いた分厚いサウンドもアルバムの魅力を倍加しています。もちろんマイクのオルガンも絶好調。往年のブルーノートの世界が現代に蘇ったようです。

今更ながら挟間美帆の才能を再確認させられたのが彼女の最新作『Imaginary Visions(Edition Record)でした。聴き所は何と言ってもバンド・サウンドの多彩さとソロイストの魅力を際立たせる作曲手法の妙でしょう。デンマーク・ラジオ・ビッグ・バンド首席指揮者である挟間が初の全曲オリジナル楽曲を引っ提げたこのアルバムは、ビッグ・バンド・ジャズの進化を象徴しているようです。

最後はドイツ出身で現在はオスロを拠点に活動するドラマー、フレデリック・ヴィルモウのアルバム『Motion(Rosen Record)です。内容はVigleik Storaasのピアノ、Bjorn Marius Heggesのベースによるピアノ・トリオで、一聴いかにも北欧ピアノ・トリオのようですが、聴くほどに味わいが出てくるなかなかの作品です。ピアニストの演奏に一本芯が通っているのですね。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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