──遂にMajor 1st Mini Album『くろいもり』がリリースされました!

詩音「秘めごとの世界観をより深く表現したメジャー1作目にしたくて、CDパッケージは絵本仕様でのリリースに挑戦しています。今はデジタルの世の中ですけど、手に取って、見て、触れられる音楽にしたかったので、CDとしても楽しんでほしい作品になりました」

木天蓼「以前からやりたかったことが頭の中にいろいろありました。それが今回、環境が変わったことによって、真っ先に形にできたことがまず何より嬉しかったです」

──そのやりたかったこというのは?

木天蓼「秘めごとは、“音楽を作る”というよりかは、“音楽を描く”という感覚で制作やライブをしています。その中で、カテゴリーを分けるとするなら、絵画でいう印象派的な部分はこれまでも出せてきました。要するにリアリティであったり、より生活に密着できる音楽は表現できていましたけど、逆にシュルレアリスム的な思考回路を前面的に押し出したことはなかったです。生活の中で全く意識してないものにフォーカスを当てて、意識していく…無意識な部分を意識していくと、リアリティとはまた違った世界が生まれますし、そこにはそこの住人もいたりして。そういった部分を表現したかったです」

──詩音さんは、絵画で言う印象派からシュルレアリスムに表現方法を変えることに関してはどう感じました?

詩音「私は木天蓼さんのような難しいことはあまり考えられないですけど(笑)、そういうふうに提示してもらった中で、自分なりに自分らしさを考えて…それでもやっぱり私は日常に寄り添える音楽を意識していました。ただ、これまでと少し違うのは、今までは11曲の世界観やストーリー性を大切にしていたのを、今回は全曲をまとめて聴いてもらって、1つのストーリーになるように意識した所です。最初から最後まで通して聴いてほしいということも考えていたので、11曲もそうですけど、全曲を通して秘めごとらしさ、秘めごとの世界観を感じてもらえると思います」

──絵本と曲がリンクするというコンセプトも最初から考えていたのでしょうか?

木天蓼「はい。よりディープに秘めごとを知ってもらうツールとして絵本があればいいと思っていたのと、秘めごとの世界観を表現するには、入り口が1つではない方がいいと思っていました。デジタルで1曲から入った人、コンセプチュアルなMini Albumを通して入ってくれた人、そして、絵本というまた違う入り口から入ってきてくれた人。全ての点と点が線につながって、曲に対しての解釈が様々な方向性に進んでいってほしいという想いもあって。あと、一見するとコンセプトに難解な部分もあったりもしたので、Mini Albumのテーマをわかりやすくするために絵本があればいいとも思っていたので、CDパッケージを絵本仕様でリリースしました」

──本というキーワードはMini Album全体にも散りばめられていますね。絵本仕様のMini Albumで、リード曲が「小説家」で。「小説家」のMVでは、森の中に巨大な本棚が置かれていますし、先行配信された「リンネ」のMVには、“BOOK STORE”というレタリングもコラージュされていました。

木天蓼「今回はクリエイター目線の言葉やものがかなり出ていると思います。僕や詩音さんのクリエイターとしての葛藤というのは、実は特殊なものではなくて…全ての人たちに共通する部分があると思っています。意外と日常にたくさん落ちているよっていう。さっき言っていた、“普段気にしないようなことを気にしてみたらどうですか?”というところと繋がるところでもあるんですけど」

──今、葛藤とありましたが、物語のプロローグのようなインストナンバー「星の屑」に続く「小説家」で<書き尽くしてしまった>と歌っています。メジャー1作目で華々しいスタートを切ったMini Albumの1曲目ですよね?

木天蓼「そうなんです(笑)。でも、まさしく、それこそが秘めごとだと思っていて」

詩音「私は自分の音楽活動と照らし合わせた部分があります。 第1章、 第2章、 第3章を経て、メジャーデビューで新しい章が始まります。いろいろ書き尽くしましたし、燃え尽きた部分もありますけど、“期待される誰かになった”という。これから新しい章が始まる決意も込めて歌いました」

木天蓼「天邪鬼なんですよ。希望や未来への光があったとしても、そこにはそれを覆い尽くす勢いの闇や絶望、悲しみが潜んでいて…」

──それが、木天蓼さんがおっしゃっていた、無意識下の部分ですね。

木天蓼「意識したくないですし、多くの人には見えていない部分だと思います。だからこそ、今回の作品はダークですし、タイトルも『くろいもり』ですけど、明るい未来を光り輝かせるために、一番必要だったのが闇でした。だから、自分たちとしてはすごい希望の光の作品なんですけど(笑)」

──(笑)。黒いインクで塗りつぶされていて、よく目を凝らさないと見えない暗がりのような作品にはなってますが…。

木天蓼「陰に入っていく部分が多い二人が光を表現するためには、より多くの闇、影が必要だったということですね」

──タイトルの『くろいもり』にはどんな想いを込めましたか?

木天蓼「先ほど言わせていただいたところに繋がりますが、ジャケットも木が手のようになって、道を覆い隠すようになっていて。でも、その中に後に大きな光になるような小さな光が点々とが見えていて、その光を闇で覆い尽くせば覆い尽くすほど、より光は強くなる。それを体現するために、タイトルを『くろいもり』にしました。平仮名にしたのは、絵本仕様というのもあるんですけど、漢字にしてしまうと視覚的にも硬くなってしまうと言うか、おどろおどろしくなってしまうので」

──確かに『黒い森』とすると、ホラー作品に感じてしまうかもしれませんね。

木天蓼「そうなんです(笑)。あと、二人が考えてる思考回路がいい意味で子供っぽいというか…ファンタジーであったりするので。自分たち的にはこのタイトルは“太陽”みたいなニュアンスです」

──あははは。“太陽”と書いて、“くろいもり”と読む!?

木天蓼「僕と詩音さんの心の中ですね」

──心象風景なんですね。

──「小説家」の<塗りつぶしてしまった>を引き継ぐように、<全てが塗り潰されていく>と歌っている「シュル」には、ドイツ語で<黒い森>を意味する<シュバルツヴァルトの残像>というフレーズもあります。

木天蓼「絵本を読んでいても違和感がないように、ギミックを入れ込んでいます。一見すると歌詞の内容はバラバラなんですけど、本のどこのページを開いてもどの曲も合うようになっていますし、詩音さんもそういう風に歌ってくれました。そういう意味で、詩音さんの表現方法がこの作品を深くしてくれています」

詩音「絵本のストーリーにも「シュル」が合っていると思います。<嫌われたくない>から始まるんですけど、誰しも嫌われたくないじゃないですか…自分で感じているマイナスな部分とか、相手からマイナスだと思われている部分とか。いろいろあると思いますけど、それは自分だけの、自分にしかない個性で、“それが自分なんだよ”っていう。自分を認めてあげる曲でもあると思うので、この曲は自分自身とも照らし合わせつつ、絵本の中の狼のノツくんの気持ちにもなって歌った曲です」

木天蓼「「シュル」は少し暗くなっているんですけど、二人の中では完全に自分自身を肯定する爆上げソングです(笑)。そこが秘めごとらしいというか。元々、二人の性格がこうなってしまっているんですけど、「劣等感」と対になってる曲でもあります」

詩音「うん、自分が自分を認めてあげる、自分を分かってあげるというのは難しいことですけど、そうしないと、どんどん暗くなってしまうから…。木天蓼さんが言ったように、これは暗すぎず、未来を見据えて、自分を認めて、“これが自分だ”と証明している曲だと思います」

──次の「春紫苑」がサウンド的にはMini Albumの中で一番明るく感じます。

木天蓼「でも、僕の中ではこれが一番暗い曲なんですよ。曲の構成にしても、実は一番オルタナティブだと思って作っていて…その中でも“いびつかな?”と思うのが、明るすぎることなんです。明るすぎるものというのも、僕にとっては、影に見えていて」

詩音「ダークな作品の中の明るい曲なので、レコーディングでもどうしても暗くなってしまって…。なかなか軽やかに踊れなかったですけど、そこは切り替えて、“楽しい気持ちで!”を想像しました。この曲だけは違う自分で、楽しくはしゃいでいる気持ちを意識して歌いました」

木天蓼「陰の中に入っても違和感のない光の部分という意味で、詩音さんが見事に跳ねるように歌ってくれています。詩音さんは散歩やカフェ巡りが好きだったりするんですけど、そういう楽しい時にも心の片隅には心配や不安も抱えていて。でも、楽しさが勝っている時という心情をうまく詩音さんが昇華してくれました。そういう意味では、普段の詩音さんっぽいと思って聴いていただければ」

──散歩をしながらハミングしているように聞こえます。

木天蓼「そうです。何かを抱えているんだけど、絶対に今は楽しいんだろうなっていう詩音さん。これもギミックの1つなんですけど、だから「春紫苑」というタイトルにしていて…」

──なるほど! 気づかなかったです。ハルジオン=春の詩音さんだったんですね。

──そして、続く「うたげ」はこれまでにない和のお祭りのような雰囲気です。

木天蓼「この曲は詩音さん発信でできた曲なんです。僕の新しい創造性を詩音さんが引き出してくれて生まれたので、僕もすごく気に入っています。詩音さんがまさに今、やりたいこと。それこそライブまで見据えていて。僕には見えていない世界を刺激してくれたので、僕も楽しく作れました」

詩音「今までになかったお祭りのような曲が欲しくて。でも、今までにない曲調と歌詞とテンポ感で、普段の会話では使わないような言葉も多いので、レコーディングが一番難しかった曲でもあります」

──<百鬼夜行>というフレーズもありますが、シュルレアリスムの中に日本画を持ち込んだのはどうしてですか?

木天蓼「和のエッセンス、侘び寂びの中でシュルレアリスムを捉えるとこうなるかな?というのを体現した曲です…例えば、鳥獣戯画の世界観のような。いろんな生き物たちが楽しく歌って踊っていて、でもそこは人とはちょっと違う世界で。それこそ自分たちの目に見えていない世界かもしれないですけど、その世界に入っていったら楽しいよねっていう。少し怖いようなドキドキの中にある好奇心を歌に落とし込みたいと思って作りました」

詩音「この曲は自分と照らし合わせるというより、本当に“物怪まみれ”の世界に自分も入り込んで、その情景を表現しています」

──「森羅」と名付けられたツアーとも繋がる曲ですよね。

──そのあと、ピアノとヴォーカルだけで始まる「リンネ」につながっていきます。

詩音「『くろいもり』を作るにあたって、一番最初に作った、きっかけの曲です」

木天蓼「最初に「リンネ」と「夜想曲」が続けてできました。“ここにきてちょっと暗いよね”みたいな話にもなったんですけど(笑)、自分たち的には一般的な“暗い”とは思っていなくて。今までの光を表現した曲の中でも影は必ず見えていましたし、それが逆になっているだけというだけの話であって。この曲はオルタナティブな一面をかなり前面に出していますけど、詩音さんが歌うことによって、ものすごくポップな部分もあって、陰と陽をちゃんと表現してくれています。詩音さんの歌が入った瞬間に、“ああ、やっぱこの人すげえな”と驚いた曲です」

──<不思議な森の中で>や<樹海の奥>など、『くろいもり』を象徴するような言葉も入っています。

詩音「木天蓼さんの考えるシュルレアリスムの曲を提示してもらった時に、私も初めて入る世界だったので、最初はどういう感じで歌おうか悩んでいました。今までは自分自身と照らし合わせて表現することが多かったんですが、今回は自分もその世界に入り込んで歌うということに初めて挑戦していて。この曲では、“いなくなったと思っていた大切な人やものは、実はどこかにいる、近くにいる”という気持ちを表現したいと思って。不思議な世界観だけではなく、日常的にも共感できるような歌を届けられるように歌いました」

──新しい朝を迎えた「リンネ」の“アイネクライネ/セレナーデ”=小夜曲を経て、最後は「夜想曲」=“ノクターン”で<夜を抜けだして>います。

木天蓼「「リンネ」と一緒に最初にできた曲ですけど、“とにかくこの曲は絶対に最後なんだ”というのは自分の中では決まっていました。僕や詩音さんの目線が先行型で、シュルレアリスム的視点がメインで作った作品ですけど、次の秘めごとが見えるものとして、この曲はものすごく重要だと思っています。詩音さんの歌や僕の作曲に対しての葛藤もそうですし、糸がプツンって切れた時に、他のものが寄り添ってくれることで、切れた線が繋がって、また進んでいける。僕たちはひたすらそれを繰り返しているんですけど、それを表現したくて、この曲を作りました。だから、普段ギターソロが来るところも、この曲ではピアノがソロで包み込んでくれていますし、最後にピアノセクションを入れたのも、影のイメージで終わらないようにという想いがあって。二人のイメージしていたノクターンがうまくハマったので、『くろいもり』のフィナーレを飾るのに相応しい曲になったと思っています」

詩音「この曲も自分と照らし合わせて歌った曲です。<辞めたってどうせ/ただ死んだ様に生きる生活>とか。音楽をやめて、続けていなかった自分を想像できないですし」

──夜の森を抜け出して、最後に<影>に捕われていますね。

木天蓼「この影は光であって、そこに捕われて前に進んでいくという意味でもあります。影は夢にも変わります。要するに好きなものに捕らわれる…好きなもののために頑張るということなので。そこに囚われてしまったら、何があっても、自分を信じて突き進んでいくという決意が最後の一行に集約されています」

──詩音さんにとって、『くろいもり』で彷徨った森とはどんなものでしたか?

詩音「暗くて怖いイメージもあるけど、風が吹く瞬間や光が差し込む瞬間もあると思っていて。森に入ってしまうと出口が見えなくなる時もあるけど、一筋の光や吹いた風に背中を押されて突き進んでいける。迷い込んでも、自分の希望の光や差してきた光に対して向かって抜け出していける。暗いだけではなく、そういう明るい部分も入れたいと思ったので、そういう部分も伝わるといいと思いますし、最後のピアノの音まで聴いて、絵本をそっと閉じて終わって欲しいです」

──そして、現在、『秘めごとLIVE TOUR 2026 「森羅」』が始まっていますが、「森羅」というタイトルにはどんな想いを込めていますか?

木天蓼「密集された森の中を彷徨っているんだけど、その中にはポッと開けたスペースがあって、“そこで何か楽しいことが起きるかもしれないよ”というワクワク感としてつけました。ちょっと秘密の場所に行ったようなドキドキ感になればいいなって。要するに、秘めごとの音楽でいつもと違う空間をより深く感じてもらいたいという想いなんですけど、ライブはもう詩音さんが先頭に立って」

詩音「この『くろいもり』という作品があるので、今までのライブよりもこの作品の世界観を表現したライブにしたいです。それこそ『くろいもり』のような少し不穏でダークで、だけど、森の中で祭りをしているような雰囲気も表現したいと思っています」

──その先の未来は、既に何か見えているものはありますか?

木天蓼「陰と陽を繰り返しながら、たまには混ざりながら、秘めごとらしく表現していきたいです。秘めごとには赤のイメージが皆さんにもあると思うんですけど、そんな中でも必ず輝きを放てる、拠り所になる、寄り添ってあげられる音楽でもあります。基本的に二人ともちょっと暗いし(笑)、何かしらずっと抱えすぎているというところもありつつも、また新しい表現を求めて探していきたいです」

詩音「今回、レコーディングまで終えた曲で、“『くろいもり』にはちょっと合わない”となって、外した曲もあったりします。今後はポップで明るい曲も歌いたい願望もあるので、そういう私や秘めごとも見せていきたいと思っています」

(おわり)

取材・文/永堀アツオ
写真/ヨシハラミズホ

RELEASE INFORMATION

秘めごと『くろいもり』

2026年78日(水)発売
LAMR-5044/5,500円(税込)
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LIVE INFORMATION

秘めごとLIVE TOUR 2026 「森羅」

2026年7月19日(日) 兵庫 クラブ月世界
2026年82日(日) 愛知 新栄シャングリラ
2026年822日(土) 東京 I'M A SHOW

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