さて、今回の新譜はオーソドックスな中にも現代性を感じさせる演奏ではじまります。ポーランドの若手トランぺッター、ピョートル・シュミットの新作『Saxfull Vol.2(SJRecord)は、《キャラヴァン》《チェロキー》《フットプリンツ》といった新旧のスタンダード・ナンバーを、彼の率いるカルテットにポーランドの各世代を代表するサックス奏者をゲストに迎えた2管クインテットで披露するというもの。

こういう演奏を聴くと、「ジャズ」が地域の壁を越え世代を超え、今やユニバーサル・ミュージックとなっていることが実感されます。

続いてご紹介するアルバムも同様の感慨を抱かせる作品です。こちらもジャズ名曲を現代に蘇らせるためニューヨーク・シーンで活躍するミュージシャンを集めたプロジェクト「ブルー・ムーズ」による第1弾『Myth & Wisdom(Post-Tone Records)で、チャールス・ミンガスの楽曲に新たな生命を吹き込んでいます。

同じくニューヨークで活動するベーシスト、ボリス・コズロフがテナー奏者ダニー・マッキャスリンを加えたクインテットによる新譜『First Things First』(Post-Tone Record)も、オーソドックスな演奏ながら現代性を感じさせるもの。

さて、ここでゴロっと気分が変わります。ブラジル、ミナス地方出身のシンガー・ソング・ライター、セーザル・ラセルダのアルバム『Nacoes, Homens Ou Leoes(Think! Record)は、「声」の魅力が100%発揮された楽しい作品です。明るく陽気で音楽としてのクオリティも高い。

そして今注目のアルト・サックス奏者兼コンポーザー、イマニュエル・ウィルキンスのブルーノート第2作『The 7th Hand』は、相変わらずキレの良いアルト・フレーズが小気味よい、いかにも現代ジャズらしい作品。フレーズを細かく切り分け意表を突く展開はかつてスティーヴ・コールマンが切り拓いたスタイルですが、21世紀を迎えよりこなれた表現となっていますね。サイドのピアニスト、ミカ・トーマスのソロも斬新。

ジャズが世界中に広がりユニバーサル・ミュージックとなりつつも、各地域、国々特有の文化的香りを感じさせるのを見るにつけ、ジャズの素晴らしさを実感するこのごろですが、次にご紹介するアルバムもそうしたもの。イタリアのベーシスト、マルコ・ベネデッティ率いる3管セプテットによるアルバム『28 Anni trascinati Male(Honolulu Record)は、アメリカ・ジャズとは一味違う地中海的陽気さを感じさせる快演です。

そして最後は今や日本を代表する世界的ピアニスト、小曽根真の還暦を記念したソロ・アルバム『Ozone 60 Standards(Universal Music)です。私は彼のデビュー時から聴いていますが、かつてのきらきらとしたイメージそのままに、円熟の境地を迎え輝きと落ち着きが巧みに融合したこのスタンダード演奏は聴くほどに気持ちが安らぐ名演といっていいと思います。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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