素晴らしい新人が現れました。それもトランペットとピアノの二刀流だというのだから驚きです。曽根麻央の『ブライトネス・オブ・ザ・ライヴス』(ReBorn Wood)は日本のジャズ・シーンに新風を吹き込む注目作です。

抜けが良く、けれん味の無いトランペットの音色が聴き手の耳を惹きつけます。ピアノの技もただものではない。何より好ましいのは音楽の明るさですね。このところ暗い話題が続いていますが、曽根のトランペットはそうした空気を吹き飛ばす爽快感に溢れています。それだけでは無く、現代ジャズらしい斬新さも充分。

このところ私のお気に入り、ブラック・テイスト全開のオルガン奏者デルヴォン・ラマー・トリオの新作『Cold As Weiss(Colemine)がリリース。さっそく購入してみれば期待にたがわない傑作です。前作が持っていたダークでザラっとしたテイストそのままに今回は軽快感も加わってより快適度が増しています。

ちなみに前回宣伝させていただいた新星堂さんとのコラボ企画、ジャズ喫茶発コンピレーションの第3弾は、ジャズのブラックネスのルーツともいうべき60年代ブラック・グルーヴ・アイテムを満載した『ジャズ喫茶好み。黒いグルーヴ』で、現在発売中です。

ニューヨークを拠点に活動するベテラン、ピアニスト、マーク・キャリーが教え子をサイドマンに従えたトリオ編成のアルバム『Life Lessons(Sessionhands United)はメンバー同士の息の合い方が聴き所ですね。彼ら子弟が3年間毎週土曜日に行ってきたセッションの成果が見事に表れています。

ラテン・ジャズの大御所、エディ・パルミエリのカリビアン・ジャズ・グループのメンバーであるトランぺッター、ブライアン・リンチの新作は2枚組CDの力作『Busstop Serenade(Hollistic Musicworks)です。アルト・サックスのジム・スナイデロをサイドに従えたオーソドックスな2管クインテットから繰り出されるサウンドは明るくエネルギー感に満ちたもの。収録曲に《ウディ・ショウ》《チャールス・トリヴァー》といった70年代以降に活躍したトランぺッターの名を冠した楽曲が含まれているところからもリンチの音楽の狙いが見えてきますね。

ニューヨークで不慮の事故にあい再起を危ぶまれたピアニスト、海野雅威が見事にシーン復帰しました。『Get My Mojo Back(Verve)は怪我療養中の海野を支えたミュージシャンたちをサイドに迎えた新作。ピアノの技も完全に元通りであるだけでなく、苦難を乗り越えて迎えるレコーディングの喜びが伝わってくる快演です。

このところUKのミュージック・シーンからは目が離せません。実にさまざまな新人たちが現れ、ジャズに新風を吹き込んでいます。NK OK Mr DM の二人による新世代ビートメイキング・グループ、ブルー・ラブ・ビーツがジャズの本家ブルーノート・レーベルに吹き込んだ新作『Motherland Journey(Blue Note)は、ヒップホップ、エレクトロニカ、アフロビートといった「新言語」をジャズに巧みに取り込んでいます。

最後はフランスのピアニスト、ドミニク・フィヨンによるオーソドックスなピアノ・トリオ作『Awaiting Ship』(Klarthe Record)です。聞くところによると彼のお兄さんはフランスの元首相。道理でサウンドがエレガンス。気負いのない優雅さが聴き所ですね。こういう落ち着いた演奏も悪くない。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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