以前予告した、この新譜紹介コーナーを元にした現代ジャズ紹介の本が『ジャズ喫茶いーぐるの現代ジャズ入門』というタイトルで8月25日にシンコーミュージック・エンタテイメントから刊行されました。来る9月9日(土曜日)15:30には「いーぐる」にて刊行記念イヴェントが、現代ジャズ紹介の先駆者、柳樂光隆さん、ジャズ評論界の第一人者、村井康司さんをゲストにお迎えし行われ、イヴェントの様子はYou Tube にて同時生配信される予定です。

「現代ジャズ」は若年層の好意的受け入れ状況に対し、ベテラン・ファン層の「戸惑い」という一種の「乖離現象」がうかがえます。本書はそうした状況を改善すべく、このコーナーではお伝えし切れなかった現代ジャズの形態別特徴や、実は思いのほか深い伝統的ジャズとの繋がりについて、具体例を挙げわかりやすくご説明いたいました。

また、実際に演奏に触れていただくため、カマシ・ワシントン、ロバート・グラスパー、シャバカ・ハッチングスなど、現代ジャズを代表するミュージシャンたちの代表的アルバム200枚をご紹介し、QRコードによってSpotifyのプレイリスト、またはアルバム音源等にリンクさせることによって、スマートフォンなどで聴くことが出来よう工夫されています。現代ジャズに興味を持たれた方はぜひご購入ください。

さて、今回の目玉は何と言っても奇跡的に発掘されたジョン・コルトレーンとエリック・ドルフィーによる未発表音源、『Evening At The Village Gate』(Impulse)でしょう。この大物同士の歴史的クインテットは、60年代当時発売されたオリジナル・アルバムでは今一つその全貌が掴みにくかったのですが、その後発掘されたヴィレッジ・ヴァンガードにおけるコンプリート・セッションによって、思いのほかドルフィーの存在感が大きかったことが知れ渡りました。

とは言え、ほかに彼らの演奏はヨーロッパにおける非正規録音がいくつかあるだけで、グループの成立過程は今ひとつ「謎」とされていたのですね。それが今回ヴィレッジ・ゲイトにおけるライヴ音源が出て来たことで、二人の関係と別れざるを得なかった「理由」がうっすらと見えてきたように思います。共に優れたジャズ・プレイヤーですが、二人の「音楽観」は微妙に異なっていたようです。とは言えその「緊張感」こそがこのアルバムの聴きどころなのですね。

次にご紹介するのは、グラミー賞に2度ノミネートされたピアニスト/コンポーザー、エリオ・ヴィジャフランカの『Standing by the Crossroad』 (Artist Share)です。このアルバムはヴィンセント・ハーリング、ディナ・ステファンズ、ジョナサン・クレイバーグといった実力派メンバーによる典型的コンテンポラリー・ジャズの傑作と言えるでしょう。

そしてこのコーナーにたびたび登場するイタリアを代表するベテラン・ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィがまたまたチャーミングな作品『Chet Rememberd』 (Challenge)を、これまた再登場のトランぺッター、バート・ヨリスと共演で届けてくれました。聴きどころは、フランクフルト放送ビッグ・バンドの分厚いオーケストラ・サウンドをバックに、二人が自在に個性を発揮しているところですね。タイトル通り、この作品は個性派トランぺッター、チェット・ベイカーに捧げたもの。

地味ながら心に沁み入る演奏とはこういうものを指すのでしょう、ベテラン・サックス奏者竹内直と、これまた日本を代表する名ピアニスト市川秀男によるデュオ・アルバム『Symbiosis』 (Yokohama Reunion)は、じっくりと腰を据えて聴くことによって尽きない味わいが愉しめる傑作です。

エリック・リードが結成した新たなメンバーによるピアノ・トリオ・アルバム『Black, Brown, and Blue』 (Smoke Sessions)は、ウェイン・ショーター、ベニー・ゴルソンらの楽曲を採りあげ、オーソドックスな中にも現代ジャズらしさを感じさせる好演となっています。

最後もヴォーカル界のリジェンド、ニーナ・シモンの未発表音源です。『You’ve Got To Learn』(Verve)は1966年に行われたニューポート・ジャズ・フェスティヴァルにおけるライヴ・レコーディング。それにしても、近年評価を高めているニーナの歌声はパワフルですね。ディープで豊かな感情表現は、時空を超えて私たちの心に訴えかけてくるのです。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

USEN音楽配信サービス ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)

関連リンク

あわせて読みたい関連記事

一覧へ戻る