マイルス・デイヴィスが現場復帰した1980年代、今一度オーソドックスなスタイルのジャズを見直すべくオランダで創設されたクリス・クロス・レーベルは、今や老舗の風格を醸し出しています。クリス・クロスはオーソドックスなテイストを好むジャズ・ファンから安定した支持を集めていますが、このレーベルの看板プレイヤーを集めたグループが「OPUS 5」。

メンバーはトランペットのアレックス・シピアギン、テナー、シェーマス・ブレイク、ピアノ、デヴィッド・キコスキ、ベース、ボリス・コズノフ、ドラムスはドナルド・エドワーズという手堅い陣容。彼らの新作『Swing On This』は内容は期待通りの充実ぶりで各ソロイストが持ち味を十分発揮させています。オーソドックス・ジャズ・ファンにお薦めのアルバムです。

対照的なのがセロニアス・コンペティションで優勝した期待のトランぺッター、マーキス・ヒルの新作『New Gospel Revisited(EDN)。活きのいい新進ミュージシャンたちを一堂に会した現代ジャズの見本のような演奏で、メンバーは話題のヴァイブラフォン奏者ジョエル・ロスを筆頭に、これまた斬新なサウンドが注目されるピアニスト、ジェームス・フランシーズ、そしてテナーにウォルター・スミス、ドラムスはケンドリック・スコットという超強力な陣容。

彼らの新譜を追っているファンなら想像できるように、出てくるサウンドも期待通りの勢いで、現代ジャズの高度な到達地点が実感できる素晴らしい出来栄えです。これは気持ちいい。

3枚目にご紹介するオーストラリアから日本に活動拠点を移したベーシスト、マーティ・ホロベックの『Trio II(Apollo Suond)も今回の収穫です。何しろサイドのギタリスト、井上銘の躍進ぶりが素晴らしい。

60年代から日本ジャズ・シーンの変遷を眺めてきた私としては、「日本人のジャズ」という若干の偏見を感じさせる言い方が完全に過去のものとなったことを実感いたしました。そしてわきを固める石若駿の存在感の大きさにも注目です。

今回「意外」と言っては語弊があるかもしれませんが、たいへん面白く楽しませていただいたのが、ベルリンを拠点とするプロデューサー/DJユニット、ジャザノヴァの新作『Strata Records The Sound of Detroit (BBM)でした。彼らがデトロイトの伝説的インディペンデント・レーベル「ストラタ」の過去カタログを再発するプロジェクトと出会い、同レーベルの傑作を再構築したのがこのアルバムだそうです。

挿入されたヴォーカルが今まで聴いたことのない心地よいテイストであることや、演奏の快適さが醸し出すコンフォタブルな気分は格別で、日常の上質なB.G.M.として聴いても楽しめる快適盤でした。

そしてもう一つ意外だったのが、このところお気に入りのオルガン奏者、デルヴォン・ラマー風味のオルガン・アルバム『New Mastersound (P-VINE)が、スペイン出身のギタリスト、ルーカス・デ・モルダーの作品であることでした。彼がジャズファンク・バンド、NEW MASTERSIUND を従えたこのアルバムは、アーシーかつソウルフルなテイストが満載で、この手のサウンドがお好みのファンには格好のアルバムでしょう。

そして最後もギター・アルバムです。ナンバーワン・ファンキー・ジャズ・ギタリスト、オズ・ノイの新作『Riverside (Outside In)は、ジャズの代表的スタンダード・ナンバー《オール・ザ・シングス・ユー・アー》はじめ、チャーリー・パーカーの《アンソロポロジー》などを採りあげ、原曲の持ち味を活かしたオーソドックスなスタイルに仕上げておりこれもギター・ファン注目のアルバムでしょう。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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