とにかく威勢がいいですね。ジャズのカッコ良さを現代の感覚で提示したKYOTO JAZZ SEXTET の新作『Succession』(Blue Note)は、DJにしてプロデューサー沖野修也が仕掛ける5年ぶりの新作です。聴き所は何と言ってもフリー・ジャズ・ドラマーの大物、森山威男を全面にフィーチャーしたところでしょう。メンバーも強力です。このところ快進撃を続けるトランぺッター類家心平はじめテナーの栗原健、ピアノ平戸佑介、ベース小泉P克人といった現代日本のジャズ・シーンを牽引する面々が森山の超強力ドラミングに負けじとばかり快演を展開しています。

シアトルを拠点とするジャズ・ファンク・グループHIGH PULP の新作『Pursuite of Endds(Anti)は、近未来SF風サウンドから浮かび上がる極めてジャジーなソロが聴き所ですね。一聴テクノ的ドラミングと、スムースながら力強いホーン陣が巧い具合に融合しており、新時代のジャズ・スタイルの一方向を示した快作と言っていいでしょう。

 

アンダース・コッペルによる『Mulberry Street Synphony(Unit Record)は、19世紀末ニューヨークの貧困問題を抱えた移民をテーマにした7楽章からなる交響曲です。コッペルはデンマーク、コペンハーゲン出身の音楽家で、息子のサックス奏者ベンジャミン・コッペル、ベーシスト、スコット・コリー、そして大物ドラマー、ブライアン・ブレイドによるピアノレス・サックス・トリオとオーゼンセ交響楽団のために書いたこの作品は、ジャズとストリングス・サウンドが有機的に結びついた成功作です。

近年クラシック的な手法とジャズの融合作品が相次いで発表されていますが、この演奏などを聴くと、こうした試みが完全に成熟してきたことが実感されます。具体的には、事前に作曲されているストリングス・パートから浮かび上がるサックス・ソロが、実に自由闊達にインプロヴィゼーションを展開しているところで、「書かれた音楽と即興」という昔からのジャズにおけるテーマが解決されていることが痛感されました。

近年イスラエル発のジャズが大きな成果をあげていますが、彼らの演奏を支えてきたドラマー、アミール・ブレスラーのリーダー作『House of Arches(Rings)は、アフロ・ビートを探求して来たというブレスラーの音楽観が実現した軽快なアルバムです。複雑なポリ・リズムから浮かび上がる浮遊感のあるキーボード・サウンドが印象的で、そこから受けるイメージは取り立ててアフリカ的と言うより、むしろテクノ・フューチャー・ミュージックとでも言いたくなる不思議な感覚をもたらします。

今度のカート・ローゼンウィンケルは「ショパン・ジャズ」と聞いて、さぞかしクラシカルなものだろうと想像しながら新作『The Chopin Project(Heartcore)CDトレイに入れたのですが、予備知識が無ければ良い意味で「ふつうのジャズ」として聴けてしまうのですね。

もちろん意識して旋律を追えば確かにショパンの楽曲集に違いはないのですが、プロデュース、アレンジを担当したスイス人ピアニスト、ジャン・ポール・ブロードベックの手腕のゆえか、それこそスタンダード・ナンバー「枯葉」を今では誰もシャンソンであることを意識しないように、クラシック音楽がジャズになっているのです。アンダース・コッペルの交響曲といい、カートのショパンといい、「融合音楽としてのジャズ」の強みが今ほど実感されることは無いように思います。

そして最後も、ジャズをベースにポスト・クラシカルの要素を盛り込んだピアニスト木村イオリとベース奏者森田晃平によるデュオ・アルバム『木村イオリ&森田晃平デュオ』(Playwright)です。一聴、一昔前に流行ったヒーリング系音楽のようにも思えますが、じっくりと聴けば演奏に一本きっちりとした筋が入っており、自己表現の音楽としてのジャズの王道を行くアルバムであることが実感できるでしょう。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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