この新譜紹介は基本新録中心ですが、貴重な発掘・復刻盤もご紹介しております。

イギリスは古いものに対する評価が優れた国で、いわゆる「和ジャズ」発掘において彼らの果たした役割はたいへん大きい。とりわけBBEレーベルから出されている「ジャパニーズ・ディープ・モダンジャズ」のシリーズは、現在入手困難な過去の名盤から選りすぐったコンピレーション制作で定評があり、今回ご紹介する『Deep Modern Jazz From Japan Vol.3(BBE)もマニア垂涎のアイテムが満載です。

最初にご紹介するトラックは、ピアニスト河野康弘のトリオが86年にリリースした極めて希少なプライベート・アルバム『ソング・オブ・アイランド』からのタイトル曲で、ゲストに参加した菅野正洋のヴァイブラフォンが効果的ですね。2曲目の快適で明るい演奏はトロンボーン奏者、向井滋春による《Cumnimbus》で、これも名演。

2枚目のアルバムもBBEからの復刻盤で、1976年にプライベート・レーベル「スマイル」からわずか100枚しかプレスされなかった、佐々木秀人・関根敏行カルテットによる幻のアルバム『ストップ・オーバー』からタイトル曲をご紹介いたしました。なお今回は45回転のアナログ盤仕様で、極めて鮮明な音質はオーディオ・マニア必聴盤ではないでしょうか。

メンバーは佐々木秀人(tp) 渡辺典保(as) 関根敏行(p) 成田敬(b) 黒崎隆(ds)で、採り上げているのはシダー・ウォルトンによる名曲《Turquoise Twice》。それにしても、シンバルの極めて鮮明な響きは45回転盤ならでは。

ハード・バップからモードにかけての、いわゆる「モダンジャズ」を現代に蘇らせたカナダのグループ「ザ・クッカーズ・クインテット」による『The Path(Muzak)は、カナダのピアニスト、バーニー・セネンスキーをゲストに迎えた彼らの最新盤。オーソドックスな演奏ながら現代の息吹を感じさせる快演です。

続く演奏はゴロっと気分が変わります。シカゴのオルタナ・ラテン・ジャズ・バンドDos Santosのメンバー、パナマ出身のドラマー / パーカッショニスト、ダニエル・ビジャレアルによる初のリーダー・アルバム『Panma 77(International Anthem)は、まさに夏向きの快適音楽。エスニックな気分と同時に、何かしら夢を見ているような懐かしいような不思議な気分にさせられるのですね。トロピカル・ドリンク片手にこのアルバムを聴けば、あなたのリスニング・ルームがカリブ海のリゾートに変身です。

エンリコ・ピエラヌンツィといえば華麗なピアニストのイメージが強烈ですが、ホーン奏者を従えたゴリゴリのストレート・アヘッド・ジャズも立派にこなすのですね。エンリコ・ピエラヌンツィ・クインテットによるライヴ・アルバム『The Extra Something (Cam Jazz)は気合十分な1枚。サイドのテナー奏者はシェーマス・ブレイクで、ピエラヌンツィ自身のソロも冴えまくりです。

そして最後は、ピエラヌンツィがフランス人ドラマー、アンドレ・チェッカリとデンマークのベーシスト、トマス・フッカレリと組んだヨーロッパ・ピアノトリオ『Something Tomorrow(Storyville)です。それにしても、彼のピアノは華麗かつロマンチックでもありながら「甘さ」に流れないのが凄いところ。どのようなメンバー、そしてフォーマットであっても、演奏に一本スジが通っているのですね。

ヨーロッパからは実に多くのピアノ・アルバムが紹介されていますが、フランスのミシェル・ペトルチアーニ亡き後、ユーロピアン・ジャズ・ピアノを代表するのはピエラヌンツィのように思える今日この頃です。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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