最初に少し宣伝させてください。昨年末に刊行された『ゼロから分かる!ジャズ入門』(世界文化社刊)の監修を担当させていただきました。タイトル通り、何の予備知識が無くとも入れる、イラストやジャケット写真をカラーで満載した画期的なジャズ入門書です。

最初に「ジャズはどういう音楽なのか?」という基本問題について、私がごくシンプルに「自分のやりたいことを楽器・声で表現する音楽」とご説明し、次いで音楽評論家、村井康司さんと「実は誰もが既にジャズを聴いている」というテーマで近年のジャズを取り巻く音楽状況について対談しています。

一昔前、ジャズは「珍しい音楽」だったので一般音楽ファンは「聴き所」を掴むため苦労したものですが、現代はポップスなどでもバック・ミュージシャンはジャズマンであるケースが多く、ほとんどの音楽ファンは「既にジャズを聴いている」のですね。

また、入門書には珍しく「現代ジャズ紹介」も充実しています。私はこの「新譜紹介」コーナーに登場する注目アルバムから10枚選らんだのですが、我ながら「正解だったね」と思うことがありました。新年早々ロバート・グラスパーのライヴを「ブルーノート東京」で見たのですが、まさに私が『ゼロから分かる!ジャズ入門』で選んだ推薦盤『R+R=NOW LIVE(Blue Note)が醸し出す「ニューヨークの気分」そのものだったのです!

さて今回最初に収録したのは、以前ご紹介した女性サックス奏者レイクシア・ベンジャミンの新作『Phoenix (Whirlwind Record)です。今回も豪華なゲスト陣をバックにレイクシアは奔放にサックスを吹きまくっています。当初「コルトレーンの影響下にスタートしたのに、なぜテナーでなくアルトなのか?」とも思ったものですが、よく考えてみれば、コルトレーンのサウンド自体、テナーにしては高域に偏っており、むしろアルトで吹いた方が「コルトレーンっぽくなる」という事実に気が付きました。

彼女の聴き所はやりたいことがハッキリしており、ジャズの一番の特徴である「個性発揮」にダイレクトに結びついているところです。これはU.K.の女性サックス奏者、ヌバイア・ガルシアや今回もご紹介するエスペランサなど、近年活躍が目立つ女性ジャズ・ミュージシャンの優れた特性なのかもしれません。

次いでご紹介するのは、ニューヨークで活動するサックス奏者アヴラム・フィーファーの『Juba Lee (Clean Feed)です。ギターのマーク・リボーが加わったピアノレス・カルテットでリボーとの相性も良く、コクのあるサックスのソロも充実感に満ちており、これもサックス・ファンにお薦めですね。

そしてあらためてヴォーカリストとしての独自性を際立たせていたのが、フレッド・ハーシュとエスペランサ・スポルディングのデュオ・ライヴ『Fred Hersh & Esperanza Spalding Alive at the Village Vanguard (Free Flying)でした。エスペランサはベースを弾かずヴォーカルに徹しており、圧倒的な歌唱テクニックに裏付けらえたチャーミングな個性で聴衆を魅了しています。ハーシュのピアノもサイドに徹する時は控えめに、ソロでは縦横に弾きまくり実力ほどを知らしめています。好演。

高校生ソロプレイヤーズ・コンテストで準グランプリ、その後バークリーに入学したドラマー、中村海斗のソロデビュー・アルバム『Blaque Dawn (Brilliant Works)は想像した以上に素晴らしい出来でした。海斗のタイトなドラミングも切れ味抜群ですが、それに乗った佐々木梨子のサックス・プレイに驚かされたのです。とうてい高校生とは思えない落ち着いた演奏は聴き応え十分。脇を支える古木佳祐のベース、壺阪健登のピアノも申し分なく、これはおススメですね。

スェーデン出身のアルト奏者兼作曲家Hannes Bennichのワン・ホーン・カルテットによるデビュー・アルバム『When Loosing A Dream To Reality (Whirlwind Record)は、こちらの先入観かもしれませんが白熱した演奏にもかかわらず北欧ジャズらしい落ち着いた雰囲気が好ましい。

最後に収録したのはジャズ~アメリカーナ・シーンで知られたピアニスト・コンポーザー、ジョン・カワードの『Pride & Joy (Le Coq Record)です。聴き所はリーダー、カワードの切れ味の良いピアノ・ソロもさることながら、ゲスト参加のサックス奏者クリス・ポッターが好演しています。

文/後藤雅洋(ジャズ喫茶いーぐる)

USEN音楽配信サービス 「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」

東京・四谷にある老舗ジャズ喫茶いーぐるのスピーカーから流れる音をそのままに、店主でありジャズ評論家としても著名な後藤雅洋自身が選ぶ硬派なジャズをお届けしているUSENの音楽配信サービス「ジャズ喫茶いーぐる (後藤雅洋)(D51)」。毎夜22:00~24:00のコーナー「ジャズ喫茶いーぐるのジャズ入門」は、ビギナーからマニアまでが楽しめるテーマ設定でジャズの魅力をお届けしている。

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