2025年も本当に素晴らしい音楽作品、素晴らしい音楽家たちが数多く登場した1年でした。“街鳴り”を提供するUSENとしても、そんな新しい音楽作品をBGMという形でお届けしつつ、いち音楽ファンとしても日々のさまざまなシチュエーションに寄り添ってくれる作品との出会いに喜びを感じた1年でもありました。

1年を振り返る上で、新しい音楽との出会いの喜びがある一方、音楽史に多大な功績を残し、シーンを鮮やかに彩ってくれた音楽家たちがこの世を去った、ということも忘れられない想いとして存在します。

ここでは、「音楽史に大きな足跡を残した音楽家たちへ」と題して、そんな偉大な音楽家たちへ私たちUSENのディレクターが想いを馳せ、影響を受けた素晴らしい音楽家たちを紹介します。

ブライアン・ウィルソン(Brian Wilson)1942年6月20日~2025年6月11日

ザ・ビーチ・ボーイズのリーダーとして、名実ともにポピュラー音楽史上トップクラスと評されるソングライター。ロック全盛期をリアルタイムで体験できなかった世代としては憧れの存在の1人です。彼の半生を知っていく上で、ステージを体験することは半ば諦めていた部分もあったのですが、2011年に”史上もっとも有名な未発表アルバム”『スマイル』、翌2012年には新作『ゴッド・メイド・ザ・ラジオ~神の創りしラジオ~』と、ブライアン込みのビーチ・ボーイズ作品のリリースがあり、同年の結成50周年来日ツアーではブライアンも日本のステージに立つという瞬間が訪れ、その場に居合わせたことは、今でも鮮明に覚えています。あの時ばかりは、幕張QVCマリンフィールド(現ZOZOマリンスタジアム)が、ホーソーンから彼らが通ったビーチにトリップしたかのようなウキウキ感が充満していました。(三浦)


The Beach Boys / Wouldn't It Be Nice
史上最高のポップ・アルバムとも称される『ペット・サウンズ』のオープニングナンバー。と、紹介する必要もないほどの超ド名曲。奇をてらわず、BB5を初めて意識した楽曲であり、ブライアン・ウィルソンを知った楽曲でもあり、いつまでも飽きずに聴くことのできる人生の定番曲。

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ガース・ハドソン(Garth Hudson)1937年8月2日~2025年1月21日

今年に入って間もなく届いた訃報。ザ・バンド、最後の存命メンバーであり、個人的には、広大で豊潤なアメリカン・ルーツ音楽への扉を開いてくれたアーティストの1人。オルガンを主に数々の楽器を操るマルチ奏者であり、グループの音楽的まとめ役でもあり、「マッド・プロフェッサー」と呼ばれ、それまでのロックンロール像にはなかった老成した風貌と賢者的な佇まいで異才を放ったガース。2013年のフジロック、FIELD OF HEAVENのトリとして発表された瞬間から「どんなセットになるんだろうか……」という期待を胸に、当日、その姿を初めて観た時は期待以上の風貌と存在感に思わず笑ってしまいましたが、ザ・バンドの楽曲を中心に、彼のバンドでアレンジされた、独創的、幻想的な世界観に息を飲み続けるようなステージでした。(三浦)


The Band / Chest Fever
フジロックのステージでも、このイントロが流れた瞬間に大歓声が上がったガースの定番曲。ソロ作『The Sea To The North』も特筆すべきですが、想いが強すぎるザ・バンドの1stのハイライトの1つを。ハモンドではなくローリー、アメリカーナの出発点である1枚において異端すぎる瞬間を。

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ジャック・ディジョネット(Jack DeJohnette)1942年8月9日~2025年10月26日

時代を走り続けたジャズドラマー、ジャック・ディジョネット。若き日にサン・ラ、ジャッキー・マクリーン、リー・モーガン、チャールス・ロイドやキース・ジャレットなどのグループでキャリアを構築し、『モントルー・ジャズ・フェスティヴァルのビル・エヴァンス』やマイルス・デイヴィス『ビッチェズ・ヴリュー』といった歴史的名演にも参加。ハービー・ハンコック、マイケル・ブレッカー、ジョン・スコフィールドをはじめとする、その時代のトップアーティストたちにもファースト・コール・ドラマーとして愛され、長きにわたり最前線で活躍しました。後年、若手や他ジャンルの才能とも積極的に共演。私がはじめて彼の演奏を聴いたのは、20年以上前のジャズクラブでした。チック・コリアのライヴだったと思うのですが、パワフルで潔くて、信じられないくらいカッコ良いドラミング(と笑顔!)だったのを今でも覚えています。(小島)

Jack DeJohnette / Dirty Ground (New Mix)
モダンジャズにはじまりファンク、クロスオーヴァー、アヴァンギャルドなど幅広く、彼の名演をひとつだけ挙げるのは難しいですが、晩年の作品からヴォーカルをフィーチャーしたこの曲を。ハリケーン・カトリーナからの復興のために書き下ろされ、人々に希望を与えたという知る人ぞ知る名曲です。

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ロー・ボルジェス(Lo Borges)1952年1月10日~2025年11月2日

ブラジル音楽、とくにミナス音楽シーンが好きな方なら誰もが知るロー・ボルジェス。ミナスジェライス州出身の仲間「クルビ・ダ・エスキーナ(街角クラブ)の重要メンバーであることも言うまでもないです。この街角クラブからフェルナンド・ブラントに続き二人目の悲しい知らせでした。ミルトンとの共同名義作『クルービ・ダ・エスキーナ』や有名スニーカーのJK写でも知られる1stアルバム通称『テニス』や、「クルービ・ダ・エスキーナ2(街角クラブ2)収録の3rdアルバム『ア・ヴィア・ラクテア』といった名盤はブラジル音楽マニアでもない私でも知る、よく聴いたアルバムです。(本多)


Lo Borges / Clube Da Esquina Nº2
盟友であるミルトン・ナシメントやトニーニョ・オルタより若いロー・ボルジェスが先に逝くなんて残された仲間達の悲しみははかり知れませんね。「Tudo Que Você Podia Ser」とどちらにするか迷いましたが、ここでは追悼の意を込めてこの曲を。

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ジミー・クリフ(Jimmy Cliff)1944年7月30日~2025年11月24日

このテキストを書いているときに届いた訃報。クラプトン、ポール・サイモン、ストーンズなど、クラシックロック経由で存在を知ったレゲエミュージック。と同時に、リアルタイムで追っていたランシドなど、レベル・ミュージックのルーツの1つという情報も繋がり、レコードショップへ。右も左もわからない中、店員のおじさんに薦められ初めて購入したレゲエCDが『The Harder They Come』。またレゲエの映像作品として草分けとなり自身が主演を務めた同名映画のDVDも同時に購入し、ジャマイカの世界へ足を踏み入れた20代前半。日本にもコンスタントに来日し、そのステージを初めて観たのはBillboard Live TOKYOにて。渦巻くグルーヴ、ジミーの(驚くほどの声量の)歌声、ステージを包み込む多幸感は、今でも目と耳に焼きついています。(三浦)


Jimmy Cliff / The Harder They Come
晩年に録音したランシドのティムがプロデュースの『Rebirth』が一番好きだったりするのですが、音楽史に刻まれる屈指の名曲の数々から、自身のレゲエの一歩目ともなった想い出の1曲を。今でも、たまに和訳を読んでは考えさせられます。

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特集「音楽史に大きな足跡を残した音楽家たちへ」、いかがでしたか?多くの音楽ファンが1年を振り返るこの季節、彼らが残した素晴らしい音楽にも、ぜひ触れていただければ幸いです。

(つづく)

文/三浦祐司、小島万奈、本多義明(USEN)

Photo by Ishikawa Ken(CC BY-SA 2.0)

三浦 祐司(みうらゆうじ)PROFILE

株式会社USEN 編成制作課所属。各チャンネルにて選曲、ディレクションを担当。アンジー・ストーン、サム・ムーア、ジェシ・コリン・ヤング、ジェリー・バトラー、デイヴ・アレン、テディ・オセイ、ドゥエイン・ウィギンズ、バリー・ゴールドバーグ、ボビー・ウィットロック、マイケル・ハーレイ、ロイ・トーマス・ベイカー、ロジャー・ニコルス、ロバータ・フラック、晋平太。ここでは取り上げることが出来なかったですが、素晴らしい歌声、演奏、作品の数々、ありがとうございました!

小島万奈(こじま まな)PROFILE

USENのジャズ担当。もちろん趣味はジャズを聴くこと。好きな食べ物はアメリカンなジャンクフード。トーマス・モーガンやエミ・マカベの影響で、マクロビオティックにもちょっぴり興味がある。

本多義明(ほんだ よしあき)PROFILE

USENチーフディレクター。趣味は渓流釣り(疑似餌のみ)。好きなミュージシャンは山下達郎。SOUL、JAZZ、SSW(シンガー・ソングライター)、WORLD MUSIC、CLUB MUSIC、CITY POPや昭和のニューミュージックなどなど好きな音楽のタイプはなんとなくあるが、令和のJ-POPやK-POPにはめったに触発されないらしい。

…… and more!

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