映画『セッション デジタルリマスター』
2014年、全世界の観客が魂を殴られた衝撃作『セッション』。新時代の天才ここにありと、その名を世に轟かせた、当時28歳のデイミアン・チャゼル監督。アカデミー賞(R)作品賞を含む5部門ノミネート、3部門受賞の刻印が燦然と輝く。日本でも破格の絶賛と、作品の解釈を巡る論争で注目された。あの衝撃から10年、生ける伝説が4K&Dolby Atmosのデジタルリマスターでリバイバル。
あれから10年、平成から令和となり、パンデミックを経て、社会もエンターテインメントも、人の気持ちも大きく変わった。そんな刷新された時代の映画館に、4K&Dolby Atmosのデジタルリマスターによって進化を遂げた傑作が帰ってくる。若きドラマーと鬼教師の狂気の対決は、今を生きる私たちに何を突き刺すのか?新たに研ぎ澄まされた映像と大迫力の音響で、映画史に刻まれたラスト9分19秒を体感せよ!
名門音楽大学に入学したニーマン(マイルズ・テラー)はフレッチャー(J・K・シモンズ)のバンドにスカウトされる。ここで成功すれば偉大な音楽家になるという野心は叶ったも同然。だが、待ち受けていたのは、天才を生み出すことに取りつかれたフレッチャーの常人には理解できない完璧を求める狂気のレッスンだった。浴びせられる罵声、仕掛けられる罠……ニーマンの精神はじりじりと追い詰められていく。恋人、家族、人生さえも投げ打ち、フレッチャーが目指す極みへと這い上がろうともがくニーマン。果たして、フレッチャーはニーマンを栄光へと導くのか、それともたたきつぶすのか?ラストステージで二人が見せる衝撃の「セッション」の結末は?
デイミアン・チャゼル(監督/脚本)
1985年、アメリカ、ロードアイランド州生まれ。ハーバード大学の学生だった頃に、監督と脚本を手掛けた初めての映画『Guy and Madeline on a Park Bench』(2009年)が、ニューヨーク・タイムズ紙などでその年の優れた作品として紹介される。のちに『セッション』(2014年)に結実する脚本の一部で短編映画『Whiplash』(13)を監督、この作品がサンダンス映画祭のアメリカ短編映画審査員賞を受賞したことが、『セッション』製作に繋がる。完成した『セッション』はアカデミー賞(R)3部門をはじめ数々の賞に輝き、「新たな大型才能の出現」と世界中から熱い視線を浴びる。続くミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』(16)がアカデミー賞(R)14部門にノミネートされ、自身が史上最年少で受賞した監督賞を含む6部門で受賞、ゴールデン・グローブ賞でも7部門を受賞する。その後も、ライアン・ゴズリング主演の『ファースト・マン』(18)がアカデミー賞(R)4部門、ブラッド・ピットとマーゴット・ロビー主演の『バビロン』(22)が同賞3部門にノミネートされ、現代を代表する監督の一人となる。
ジェイソン・ライトマン(製作総指揮)
1977年、カナダ、ケベック州生まれ。『サンキュー・スモーキング』(2005年)で長編映画監督デビューを果たす。次の『JUNO/ジュノ』(2007年)でアカデミー賞(R)にノミネートされ注目される。続く『マイレージ、マイライフ』(2009年)で同賞の監督賞と脚色賞にノミネートされ、ゴールデン・グローブ賞、LA批評家協会賞の脚本賞を受賞する。その他、『ヤング≒アダルト』(2011年)、『とらわれて夏』(2013年)、『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』(2014)を監督する。2014年、デイミアン・チャゼルの脚本に目を留め、まずは短編を撮るようアドバイス、『セッション』(2014年)を成功に導いた最大の立役者となる。その後の監督作に『タリーと私の秘密の時間』(2018年)、『フロントランナー』(2018年)、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2021年)などがある。
ジャスティン・ハーウィッツ(音楽)
ハーバード大学で音楽を学び、デイミアン・チャゼル監督のミュージカル映画『Guy and Madeline on a Park Bench』(2009年)の歌と音楽を作曲する。その後も、チャゼル監督の『セッション』(2014年)をはじめ、アカデミー賞(R)作曲賞と歌曲賞、ゴールデン・グローブ賞音楽賞を受賞した『ラ・ラ・ランド』(2016年)、ゴールデン・グローブ賞音楽賞を受賞した『ファースト・マン』(2018)、アカデミー賞(R)作曲賞にノミネートされ、ゴールデン・グローブ賞音楽賞を受賞した『バビロン』(2022年)の音楽も手掛ける。
マイルズ・テラー(アンドリュー・ニーマン)
1987年、アメリカ、ペンシルベニア州生まれ。ジョン・キャメロン・ミッチェル監督、ニコール・キッドマン主演の『ラビット・ホール』(2010年)で鮮烈なスクリーンデビューを果たし注目される。『セッション』(2014年)の主役を務めて一躍若手俳優の中でも傑出した存在となる。その後、SF大作『ダイバージェント』シリーズ(2014年、15年、16年)、『オンリー・ザ・ブレイブ』(2017年)などに出演する。2022年、トム・クルーズの代表作『トップガン』の36年ぶりとなる続編『トップガン マーヴェリック』(2022年)に、クルーズ扮する主人公のマーヴェリックのかつての相棒グースの息子ルースター役で出演し話題を集め、映画は世界的大ヒットを記録する。
J・K・シモンズ(フレッチャー)
1955年、アメリカ、ミシガン州生まれ。米モンタナ大学で作曲を学んだ後、俳優活動を始める。『セッション』(2014年)の鬼教師役で賞レースを席巻、アカデミー賞(R)、ゴールデン・グローブ賞、英国アカデミー賞をはじめ、その年の賞をまさに総なめして映画史に名前を刻む。サム・ライミ監督の『スパイダーマン』三部作(2002年、04年、07年)で演じたJ・ジョナ・ジェイムソン役で広く知られる。トム・ホランドが主演を務める『スパイダーマン』新シリーズの2作(2019年、21年)でも同役を演じる。ジェイソン・ライトマン監督作品では欠かせない存在で、『サンキュー・スモーキング』(2005年)、『JUNO/ジュノ』(2007年)、『マイレージ、マイライフ』(2009年)、『ヤング≒アダルト』(2011年)、『とらわれて夏』(2013年)、『ステイ・コネクテッド~つながりたい僕らの世界』(2014年)、『フロントランナー』(2018年)、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2021年)に出演。近年では、『愛すべき夫妻の秘密』(2021)で再びアカデミー賞(R)にノミネートされる。

USENの番組ディレクターが語る映画『セッション デジタルリマスター』の魅力
天才を産み出すことに固執する指導者と、ドラマーの極みを目指す挑戦者の、狂気と執念が織りなす至高のセッション。フレッチャーを演じるJ・K・シモンズの鬼気迫る演技、ラスト9分19秒の演奏が魅せるカタルシス。今でも私の心に鞭を打ち、律してくれる忘れられない名作です。
この映画の見どころは教師と学生の枠を超越した二人の関係性にあると言えます。はじめこそフレッチャーの体罰やいきすぎた指導に目が行きますが、全てを捨てて孤独にドラムに打ち込むニーマンもまた音楽に狂わされた男なのでしょう。
私の好きなシーンにニーマンの個人練習シーンがあります。ドラムの叩きすぎで手の豆が潰れ出血し、満足のいく演奏ができない自分に苛立ちドラムを破壊してしまいますが、次のカットではすぐさま氷水に手を浸し練習を再開するというシーン。このシーンを見て私は「ニーマンはどこまで行ってしまうんだ……」と魅了されてしまいました。
もうひとつこの映画をオススメしたい理由が、この映画が見た人の心に鞭を打ってくれることです。私は『セッション』を通じて自分の心の中にフレッチャーとニーマンを飼うことで、様々なモチベーションを維持できます。時にフレッチャーの様に完璧を求め、時にニーマンの様に反骨精神を剥き出しにして何かに打ち込むことで、私たちもいつか二人が最後に到達した極みを理解できるかもしれません。
狂気の指導と狂気の挑戦、そのふたつがぶつかった先で対等と言える立場になった時の二人の表情、歪んだ二人の関係性の変化にぜひ注目してください。
USENでもさまざまなシーンに合わせたジャズBGMのチャンネルをラインナップしていますが、今回は映画を鑑賞された方にふたつのチャンネルを「映画『セッション デジタルリマスター』のスクリーン越しに聴こえるジャズをUSENで」で紹介します。
(おわり)
豊島魁土(USEN)

映画『セッション デジタルリマスター』のスクリーン越しに聴こえるジャズをUSENでCOLUMN
さまざまなシーンに合わせたUSENのジャズBGMのなかから「映画『セッション デジタルリマスター』のスクリーン越しに聴こえるジャズをUSENで」という切り口でふたつのチャンネルを紹介します。
ひとつめは「スウィング・ジャズ (Instrumental)」。1920~50年代、人々を魅了したビッグバンド・スタイルのジャズは、まさにエンターテイメントの象徴でした。映画『セッション』でも話題になった伝説のドラマー、バディ・リッチが活躍したのもこの時代です。このチャンネルでは、分厚いホーンセクションとリズムセクションが織りなす、ゴージャスなスウィングジャズをお送りしています。古き良きアメリカの雰囲気や、当時の活き活きとした演奏をお楽しみください。
ふたつめは「現代ジャズ」。現代ジャズシーンを牽引するトリオ、カルテット、クインテットなど、実力派コンボによる演奏をお届け。伝統的なジャズのエッセンスを継承しながらも、現代的な感性を取り入れた楽曲をセレクトしています。このチャンネルで放送しているミュージシャンたちの多くが、映画のような名門音楽院で研鑽を積んだりコンペティションを勝ち抜いた強者たち。この映画でジャズに興味を持った人にこそ聴いていただきたいチャンネルです。
ぜひ映画を鑑賞された後には、二人のセッションに思いを馳せつつ、「スウィング・ジャズ (Instrumental)」「現代ジャズ」もあわせてお楽しみください。
株式会社USEN 制作1部 ディレクター/豊島魁土(とよしま かいと)

『セッション デジタルリマスター』2025年4月4日(金)全国公開MEDIA INFO
監督・脚本/デイミアン・チャゼル(『ラ・ラ・ランド』『バビロン』)
出演/マイルズ・テラー(『トップガン マーヴェリック』) 、J・K・シモンズ(『レッド・ワン』)
音楽/ジャスティン・ハーウィッツ(『ラ・ラ・ランド』)
配給/ギャガ
Ⓒ2013 WHIPLASH, LLC. All Rights Reserved.
X (https://x.com/session4K)
関連リンク(USEN MUSIC GUIDE)
…… and more!
-
チル&リラクシンな「R&B(リラックス)」、ダンサブルな「R&B(ダンス)」――ユーティリティに優れたふたつのR&Bチャンネル
USEN/U-NEXT関連 -
インバウンド向けBGMの切り札はこれだ!――「海外で人気のJ-POP/アニソン」
USEN/U-NEXT関連 -
冬本番!鍋の美味しい季節におすすめのBGM――「エモい!居酒屋向け昭和ロック&ポップス」「ときめき!居酒屋向け80'sアイドル」「JAPANESE CITY POP」
USEN/U-NEXT関連 -
活発なムードを演出するロックBGM――「active mood~明るい洋楽ロック」
USEN/U-NEXT関連 -
クリスマスソングのNEW STANDARD――洋楽編
USEN/U-NEXT関連 -
クリスマスソングのNEW STANDARD――J-POP編
USEN/U-NEXT関連 -
「HIP HOP」「Workout HIP HOP」「Chill HIP HOP」――USEN流HIP HOP系BGMのメソッド
USEN/U-NEXT関連