
日本に生まれ、ニューヨークを拠点に活動するヴォーカリストであり作曲家、そして三味線奏者でもあるエミ・マカベ(眞壁えみ)が、2ndアルバム『Echo』をリリースしました。
2025年に米国のSUNNYSIDE RECORDSより発表された本作は、トーマス・モーガン、ヴィトール・ゴンサルヴェス、ケニー・ウォレスンというレギュラーメンバーに加え、ゲストにビル・フリーゼル、ミシェル・ンデゲオチェロ、ジェイソン・モランという豪華な顔ぶれが参加しています。
今回は、現地ニューヨークより届いたミュージックビデオとともにこの新作をレビューします!

国境を越えることも、大切な人に会うことさえもままならなかった2021年……エミ・マカベは最愛の父を亡くしました。「パンデミックの中、父との面会は許されませんでした。父が病院に運ばれることになり、車椅子に乗せられた後ろ姿を見ながら、もう一度だけ振り返って顔を見せてほしいと祈っていました。でも、振り返ることなく行ってしまい…それが、父を見た最後の瞬間でした」と彼女は語ります。 最期を看取ることさえ叶わず、深い悲しみが彼女を覆ったのです。
しかし、悲しみの淵から彼女を救ったのは音楽でした。マカベはジェイソン・モランとトーマス・モーガンを共同プロデューサーとして迎え、アルバムの制作を決意。そして完成したのが、本作『Echo』です。前作に続き、彼女のレギュラーカルテットのメンバーであるトーマス・モーガン、ヴィトール・ゴンサルヴェス、ケニー・ウォレスンが参加し、ゲストにはなんと、ビル・フリーゼル、ミシェル・ンデゲオチェロ、ジェイソン・モランといった豪華なミュージシャンも登場します。
アルバムタイトル『Echo』は、共鳴や郷愁、記憶、亡き人への祈りといった多様な意味を含みます。英語のEcho、アラビア語でエコーを意味する「サダー」が持つ郷愁や記憶の感覚、ラテン文学の名作『変身物語』に登場する、他人の言葉を繰り返す妖精エコー、そして故人への祈りを指す日本語の回向(えこう)。彼女の深い悲しみと再生への希望が、このアルバムを通してどこまでも美しく、時にスリリングに紡がれていきます。

USENのジャズディレクターという仕事を通して、これまでにたくさんの作品と出会ってきました。日々学ぶことの多い音楽ジャンルですが、時折、泣きたくなるくらい美しい作品に出会う瞬間があります。それはヤコブ・ブロやリー・コニッツ、ビル・フリーゼルやトーマス・モーガンたちの演奏だったり、ふとモダンジャズを聴き直した時だったり。
初めてエミ・マカベを聴いた時もそうでした。透明感の中にも強い芯を感じさせる歌声と、一見相反する三味線とジャズが見事に融合した唯一無二の個性に心を奪われました。ずっと聴いていたいくらい大好きな声と美しい演奏で、世界の一流ミュージシャンたちと並んでも、その輝きを増している彼女を誇らしく感じました。今後もエミ・マカベの活躍を応援しています!
(おわり)
文/小島万奈(USEN)

エミ・マカベ『Echo』DISC INFO
Emi Makabe - voice, shamisen, flute
Thomas Morgan - double bass, backing vocals
Vitor Gonçalves - piano, accordion, Wurlitzer electric piano
Kenny Wollesen - drums, percussion, vibraphone, electronics
Bill Frisell - acoustic guitar (track 1)
Jason Moran - piano (track 2)
Meshell Ndegeocello - MC (tracks 5 & 9)
Produced by Emi Makabe, Jason Moran, Thomas Morgan
All music and lyrics written by Emi Makabe (BMI)
Recorded at Brooklyn Recording on June 8 and 9, 2022
Recorded and mixed by James Farber
Assistant engineers: Samuel Wahl, Thom Beemer
Mastered by Nate Wood
小島万奈(こじま まな)PROFILE
USENのジャズ担当。もちろん趣味はジャズを聴くこと。好きな食べ物はアメリカンなジャンクフード。トーマス・モーガンやエミ・マカベの影響で、マクロビオティックにもちょっぴり興味がある。
関連リンク(USEN MUSIC GUIDE)
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