――2025年4月から館内のBGMがリニューアルされましたが、選曲のコンセプトなどはどのように決まっていったのでしょうか?

「USENのBGM制作チームのディレクターさんが実際にロケハンに来てくださった際に、アメリカ西海岸的な雰囲気を感じてくださったようで、そのイメージに選曲を寄せたいとご提案いただきました。その提案を受けて、スタッフ内でも海が近いロケーションということもあるし、その雰囲気で選曲をオーダーさせていただこうという意見がまとまりました。全体的にゆったりというか、優しい曲を多めにしていただいています。また、ゴールデンウィークには、横浜赤レンガ倉庫やMARINE&WALK YOKOHAMA、パシフィコ横浜といった横浜・みなとみらいエリアの商業施設と連携した野外シアターフェスティバル「SEASIDE CINEMA 2025」が開催されることもあり、過去に上映した映画作品のサウンドトラックからの楽曲も織り交ぜています」

――朝と昼、そして夜で選曲を変化させる、1日3セットというスタイルは開業当初からですか?

「そうですね。実は私たちが思っていた以上に館内のBGMに耳を傾けているお客さまが多いので、同じ曲が何回も聴こえると飽きてしまいますし、屋外型のアウトモールということもあいまって、朝昼晩で施設自体の雰囲気も変化します。もちろん季節や天候によっても印象ががらっと変わります。朝は陽射しが入りますし、夜は綺麗な夜景を楽しんでいただけますので、お客さまの層も変化します。雰囲気に合わせてBGMにもグラデーションをつけるという演出は、開業当初から続いています。朝の心地よさであったり、夕方から夜にかけてのトワイライトな感じとか、それを音楽でも表現ができて楽しんでもらえるのが、箱型ではない開放的なアウトモールの魅力のひとつですよね。自然を気持ちよく感じられることを大事にしていますので、お客さまが意識しなくても耳からも体感できるようなものにしたいと考えています」

――確かに潮風の暖かさや匂いといった自然を肌で感じられるのは得難いロケーションです。リニューアル以前にもプレイリストを公開をされていたり、BGMには以前からこだわっていますよね。

「はい。開業当初からDJの須永辰緒さんや沖野修也さん、田中知之さんといった方々をサウンドナビゲーターに起用したりと、音楽的な部分にはずっとこだわっているんです」

横浜ダイヤビルマネジメント株式会社 山本貴子氏

――選曲に関しては、日本語ヴォーカルやインストゥルメンタルではなく、洋楽のジャズやポップスという一貫性がありますね。

「東日本大震災の後、被災地への応援という意味で、“BGMでも何かやりたいね”となじみのある日本語ヴォーカルの選曲も考えたのですが、日本語詞だと印象が強すぎて、お客さまが歌詞を気にされてしまうかなと思い、結果的にJ-POPをアレンジしたカバー曲を選びました。そうした経験もあって、日本語ヴォーカル曲をBGMに使うことの難しさがわかったので洋楽選曲という結論に至っています」

――今回は、西海岸っぽさ、カリフォルニアっぽさと映画音楽というキーワードがありましたが、今後は季節毎にプレイリストを作っていく感じでしょうか?

「基本は3ヵ月ごとに変更していく方針なので、7月から夏用のプレイリストに変更する予定です。春夏秋冬とクリスマス用で5パターン、それぞれ朝昼晩の3セットというバリエーションになります」

――まさにBGMをリニューアルしたばかりですが、今後はお客さまの反応を見ながら選曲コンセプトをブラッシュアップしたりということも考えられますね。

「そうですね。たとえば音楽に興味がない方でも知っているような楽曲も入れながら選曲していきたいということはイメージしています。小さなお子さまからご年配の方まで幅広い層のお客さまにお越しいただくショッピングモールですので、誰も不愉快にさせていないBGMというのが大前提ですね。あえて最先端の楽曲を選ぶということはしていないのですが、合い間にアクセント的に旬な曲、流行りの曲だったりを流していくのもいいのかなとも考えています。私たちは横浜という場所には独特な時間の流れ方があるなと感じているのですが、選曲的には少しローカル感というか、“横浜ナイズ”された選曲がお客さまにとっても心地良いのかなと考えています」

――“横浜ナイズ”って素敵なキーワードですね。

「“横浜ナイズ”とは?ということをなかなか言語化してお伝えしきれない部分もありますので、トライ&エラーで時間を掛けてこの場所にフィットするBGMを見つけられるといいかなと考えています。あとは毎年開催している「ランタンナイト」やクリスマスなどのイベントの際は、イベントにフィットする音楽だったり、そのときのテーマに合わせていろいろとテイストを変えていきたいですね」

――横浜ベイクォーターの推しポイントを伺えますか?

「やはりワンちゃんと一緒に過ごせるというのは大きなポイントになっていますね。テラスで一緒に食事ができる施設って意外にも少ないんですよ。店舗さんによってはワンちゃんと一緒にショッピングできますし、撮影スポットも多いんです。6階のベイガーデンのペットエリアには水飲み場も完備していますので、ワンちゃん連れのお客さまに重宝がられています。ふだん使いの「ワンちゃんフレンドリーな施設」ということで、近隣にお住いの方はもちろん、遠方からいらっしゃる方もめずらしくないですね。ちなみに開業当初から毎年「マスコット犬コンテスト」を開催していまして、今回で19回目になります。コンテストで選ばれたワンちゃんには横浜ベイクォーターのPR活動に協力してもらっています」

写真提供/イケア・ジャパン株式会社

――ふだん使いのショッピングモールという点でいうと、今年3月のイケアの出店はトピックスだったのではないでしょうか。

「イケアさんは、お客様とのタッチポイントを増やしたいということで横浜ベイクォーターへの出店を決めていただいたそうです。イケアさんきっかけで初めて横浜ベイクォーターに来られた方もいらっしゃって、オープン初日は大変な賑わいでした」

――インテリア、飲食、ファッションなど、現状の出店バランスは?

「実はこうしたショッピングモールとしてはめずらしく、ファッションは少ないんです。飲食がいちばん多いですがイケアさんを含めたインテリアの取り扱いは10店舗を数え、施設の特徴となっています」

――シーバス乗り場があるのも特徴的ですね。

「横浜ベイクォーターの横浜駅東口のりばから、横浜ハンマーヘッドや赤レンガ倉庫、山下公園などの観光スポットに直結していますので、週末はもちろん、お花見の季節には桜の名所をシーバスで巡る「大岡川 桜クルーズ」も人気です」

――さて、今年も5月2日から5月6日のゴールデンウィーク期間に「SEASIDE CINEMA 2025」が開催されます。

「横浜ベイクォーターとしての参加は2021年からなんです。もともとは2018年から独自にシネマイベントを開催していたのですが、赤レンガ倉庫さんにお声がけして「SEASIDE CINEMA」に合流させていただくことなったんです」

――イベント開催中は映画ファンでいっぱいになりそうですね。

「昨年、横浜ベイクォーターでは1日あたり最大400人のかたに観賞していただきましたが、今年も『トランフォーマー』シリーズから『バンブルビー』などの4作品を4日間にわたって上映しますので多くのお客様で賑わうことを期待しています」






▼「SEASIDE CINEMA 2024」の様子。

写真提供/横浜ベイクォーター




――たとえば、「SEASIDE CINEMA 2025」にあわせたBGM選曲も?

「実は4月時点ですでにプレイリストの中に10曲程度映画音楽を入れていて、ときどき映画音楽が聴こえてくるという仕掛けになっています。『ハリーポッター』のテーマ曲は定番化しつつありますが、他にもマーベル作品や『スターウォーズ』シリーズなど“あの曲だ!”と気付いてもらえるキャッチーな映画音楽をセレクトしています。映画音楽ってその曲が流れた瞬間にその映画の話題になったりしますから、そういうきっかけづくりができればいいですね。以前、BGMのリクエストを募集したときはミュージカル映画の人気が高かったので、ミュージカル映画の音楽も試してみたいですね」






▼2024年のランタンナイト。

写真提供/横浜ベイクォーター




――他に定番化しているイベントはありますか。

「6月から9月にかけて開催している「ランタンナイト」です。いまは横浜の風物詩的なイベントになっていますね。屋上フロアのベイガーデンをランタンでライトアップする装飾イベントで、神奈川県のベトナムフェスタとも連携しているんですよ。先ほどの「SEASIDE CINEMA」同様、もともとは横浜ベイクォーター単独で開催していたのですが、神奈川県からお声がけいただいてご一緒することになりました。こんなふうに“いっしょに盛り上げましょう!”みたいな一体感は、横浜ならではと言えるかもしれませんね」






▼5月23日(金)から9月30日(火)まで期間限定開催の「横浜ベイクォーター BBQビアガーデン」

写真提供/横浜ベイクォーター





――横浜ベイクォーターは来年で開業20周年を迎えます。

「イベントや施設のリニューアルなどいろいろと検討中ですが、20周年に先駆けて、昨年8月に「おとなりゾート。」というコンセプトを発表しまして、これは“おとなり”にある、“おとな”が大切な人達とくつろげるショッピングモールになりたいという思いを込めているのですが、そうしたコンセプトにあわせたBGMで、季節を肌で楽しめるという横浜ベイクォーターの特徴を演出できたらいいなと思っています。いわゆる“ザ”の付くリゾートではなく、おとなの雰囲気もありつつ、ふだん使いもできて、リフレッシュできる「おとなりゾート。」を目指していきます」

(おわり)

取材・文/カネコヒデシ(BonVoyage)
監修/高橋 豊、本多義明(USEN)
写真/平野哲郎
協力/横浜ダイヤビルマネジメント株式会社

SEASIDE CINEMA 2025EVENT INFO

2025年5月2日(金)~5月6日(火) 
・横浜赤レンガ倉庫 赤レンガパーク
・MARINE&WALK YOKOHAMA 海側隣接遊歩道
・横浜ベイクォーター 3F メイン広場
・横浜ワールドポーターズ 6階イベントホールA
・横浜ハンマーヘッド
・パシフィコ横浜 臨港パーク


ⒸSEASIDE CINEMA 2025

SEASIDE CINEMA 2025

横浜ベイクォーター BBQビアガーデンEVENT INFO

2025年5月23日(金)~9月30日(火)
平日/16:00~22:30、土日祝日/12:00~22:30
横浜ベイクォーター 3F メイン広場
_予約サイト_ 横浜ベイクォーター BBQビアガーデン(TableCheck)

横浜ベイクォーター BBQビアガーデン

SPECIAL THANKS横浜ダイヤビルマネジメント株式会社

営業二部 店舗・販促担当
広報 山本貴子氏





横浜ダイヤビルマネジメント株式会社

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