――東京スカイツリーおよび東京スカイツリータウンの概要と特徴を教えてください。

松谷みずほ「東京スカイツリータウンは2012年5月に開業しました。世界一高いタワー、東京スカイツリーを中心に、300以上の店舗からなる商業施設の東京ソラマチや、すみだ水族館、コニカミノルタプラネタリウム天空などで構成された大型複合施設です。2022年度は年間で約3,088万人の来場がありました」

――インバウンド需要、アフターコロナのリカバリー状況はいかがですか?

松谷「数値として如実に表れています。コロナからの反動による国内観光需要の好調に加え、円安が重なりインバウンドも急回復しています。外国人来場者の比率は2019年度が25パーセント程度でしたが、今年度上期は30パーセント程度とコロナ前を上回る比率で推移しています」

東武タワースカイツリー株式会社 観光営業部 山田 央氏

――東京スカイツリータウンはもちろんですが、東京スカイツリーの天望デッキ、天望回廊でもさまざまなイベントが開催されており、ウィークデイにもかかわらず大変賑わっていることに驚きました。

山田 央「私は、2015年の東京スカイツリー開業3周年のタイミングから観光営業部で天望回廊や天望デッキのイベント企画に携わっていますが、2015年当時は今日取材していただいたコラボイベントのような取り組みはまだしていなくて、2015年の冬あたりからさまざまなコンテンツとのコラボ企画を実施するようになりました」

――どういったきっかけでコラボイベントに取り組むようになったのでしょう?

山田「コラボイベントに取り組むようになったのは、眺望だけではないプラスαのスカイツリー体験を創出できればと考えたからです。イベントがスカイツリーに来場するきっかけとなり、初めて来場される方も多く、改めて展望台からの眺望の魅力を感じてもらう機会となっています」

SKYTREE CAFEの「原神」オリジナルメニューとTHE SKYTREE SHOPで購入できるコラボグッズ。

――今回のインタビューテーマは、天望回廊と天望デッキの空間演出なので少し横道に逸れますが、東京スカイツリーといえば、タワー外観のライティングも訴求ポイントのひとつですね。

山田「コラボライティングについても企画からライティングデザインまで一貫して観光営業部で担当しておりまして、たとえば展望フロアのコラボイベントと連動したひとつのコンテンツとして活用するようになっています。最近の事例では「鬼滅の刃」「ちいかわ」など作品のイメージやキャラクターをしっかりと表現することで、ライティングそのものがコンテンツのひとつとして成立するように意識しています」

天望デッキから天望回廊に向かうエレベーター内は、「原神」のキービジュアルイラストがラッピングされている。

――コラボイベントに限らずですが、そうしたイベントのテーマや内容が違うと来場者の客層も変化するものですか?

山田「もちろん変わります。東京スカイツリーという施設としてはオールターゲットですが、コラボイベントでは特に熱心なファンのかたがたにお越しいただけるので、たとえば現在開催中の『原神』コラボイベント「青空の大冒険~雷霊に導かれて~」では、グッズを持って写真撮影していたり、コスプレまではいかないにしても、それとわかるような来場者が目立ちますね。肌感としては、イベント目的で来場して、グッズを購入して、楽しんでいただいているのは女性が多いのかなと感じています。東京スカイツリーとしては、10代、20代の比較的若い世代のお客様に足を運んでいただきたいという意識がありつつ、イベントに対して能動的に参加いただける30代、40代の女性へのアプローチもしています。平常時はファミリー層がメインなので、イベントで若年層、女性層を開拓して活性化しようと考えています」

フロア445から450までの回廊エリアは「原神」のグラフィックでキャラクターや世界観を堪能できる。

――そうしたロケーションやシチュエーションでBGMに求めているのはどんな役割りでしょう?

山田「イベントのあるなしに関わらず、東京スカイツリーのメインコンテンツは、天望回廊と天望デッキからの眺望です。そこから見える東京の風景は、東京スカイツリーでしか体験できない特別なものなので、そうした空間に相応しいBGMが流れていてほしい。来場者のかたがたにとって特別な体験をしていただくという意味でBGMも大切な役割を持っていると考えています。展望フロアの滞在時間が1時間程度だと仮定して、BGMも滞在時間にあわせたパッケージになるように意識しています」

――1時間サイクルの選曲ということは、なかなか手がかかりますね。

山田「イベントの開催時は基本的にそのイベントのテーマに即したBGMをオーダーしています。『原神』であれば作品のサウンドトラックから選びますし、「SUPER SKYTREE® DISCO」であればダンスミュージックということになります。「SUPER SKYTREE® DISCO」は、「世界一高いお立ち台」というコンセプトだけに、イベント自体は1980年代、90年代のディスコをイメージしていますが、おもしろいことに、BGMはディスコクラシックといまのダンスミュージックのハイブリッドになっています。アース・ウィンド・アンド・ファイアー、クール&ザ・ギャング、シェリル・リン、シックといったクラシックスに、ブルーノ・マーズ、ザ・ウィークエンド、カルヴィン・ハリス、リゾ、デュア・リパ、BTSといった最先端も取り込みました。どの世代のかたにも気に入っていただけるBGMに仕上がったと思います」

――「SUPER SKYTREE® DISCO」のオープニングセレモニーでは、往年のディスコを知る世代のかたがたもいれば、ダンスミュージック好きの20代もいましたから、よい落としどころだったと思います。

山田「むしろイベントやコラボイベントではなく平常時のBGMのほうが難しかったりします。私たち施設側と、選曲していただくUSENさんとの目線合わせというか、求めている音楽について言語化してお互いのイメージを共有することが必要なので」

――東京スカイツリーと東京スカイツリータウンの平常時のBGMについてもう少し聞かせてください。たとえばコンセプトはどのように決まったのでしょう?

松谷「開業当初に主管である当社の運営部が、USENさんとともにBGMのコンセプトとイメージを固めて以来、大きな変更を加えず現在も継続しています。そうして作り上げたBGMは、スカイツリーでのお客さまの体験に彩りを添える空間演出のひとつになっています。東京スカイツリー、そして東京ソラマチは世界中の人々が訪れる日本を代表する観光スポットと自負しています。想像を超える東京スカイツリーからの絶景、下町情緒と最先端のハーモニーが心地よい東京ソラマチ……そうした東京スカイツリータウンの魅力を、来場者に余すところなく伝えるために、エリア各所にそれぞれの“音”をお届けしています。たとえば天望回廊は「地上450メートルの空中散歩」、東京ソラマチ ショッピングフロアは「新しさと伝統が織りなすショッピングタウン」、ソラマチ商店街は「新感覚の下町商店街」と、エリア毎にテーマを設け、それぞれに相応しいBGMをセレクトしてます」

――開業から10年以上を数える東京スカイツリーですが、これから先、どういった場所でありたいと考えていますか。

山田「まだ来場したことのない潜在顧客の新規開拓、リピーターの取り込み、どちらかに軸足を置くということではなく、両方に注力したいと考えています。“東京スカイツリーに行く”ということが非日常というか、いわゆるハレの日のイベントとしてだけではなく、もう少し皆さんの日常に近い場所でありたいという思いはあります。ある人にとっては天望回廊と天望デッキからの眺望がスペシャルな体験であってほしいですし、ある人にとっては癒しのひとときであったり、リフレッシュできる場所であってほしい。眺望というコンテンツに加えて、BGMによる空間演出であったり、コラボイベントによって東京スカイツリーの新たな魅力を発信していきたいですね」

(おわり)

取材協力/東武タワースカイツリー株式会社
取材・文/高橋 豊(encore)
写真/平野哲郎


ⒸCOGNOSPHERE ⒸTOKYO-SKYTREE

青空の大冒険〜雷霊に導かれて〜EVENT INFO

2024年1月17日(水)~3月6日(水)@東京スカイツリー天望デッキ(フロア340「SKYTREE CAFE」、フロア345「THE SKYTREE SHOP」、フロア350「SKYTREE ROUND THEATER®」)、天望回廊

■特別ライティング点灯
2024年1月17日(水)、1月20日(土)、1月21日(日)、1月27日(土)
2月3日(土)、2月10日(土)、2月17日(土)、2月24日(土)
3月2日(土)、3月6日(水)


ⒸCOGNOSPHERE

青空の大冒険〜雷霊に導かれて〜

SUPER SKYTREE® DISCOEVENT INFO

@東京スカイツリー天望デッキ フロア350

■LINE UP
2024年1月25日(木) DJ OSSHY、DJ DRAGON、宇治田みのる
2月1日(木) Celly、DJ KOO(TRF)、DJ BOSS
2月9日(金) DJ PASSION、栗原治久、John Robinson
2月16日(金) 大蔵 from ケツメイシ、REMO-CON、DJ BABY
2月22日(木) マーク・パンサー(globe)、田中知之(FPM)、Shu1 Tokyo
2月29日(木) DJ Baby MITSURU from Sapporo、WAKO from OKINAWA、WATANABE SISTERS、DJ OSSHY

SUPER SKYTREE® DISCO

SPECIAL THANKS東武タワースカイツリー株式会社 観光営業部 山田 央氏 、東京スカイツリータウン広報事務局 松谷みずほ氏

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