今回のMIXは、スピリチュアル・ジャズ、モダン・インプロヴィゼーション、ヒップホップ、ネオソウル、アンビエントを織り交ぜた流れのあるセレクション。伝統と革新を行き来しながら、静と動を繰り返し、終始じわじわと感覚を刺激する。プレイヤーの呼吸と、トラックメイカーの感性が共鳴するような、非常に詩的かつ瞑想的な選曲となっている。

冒頭はThe Visitors「Motherland」で、太くパーカッシブなビートとともにスピリチュアルな幕開け。Lakecia Benjamin & Jazzmeia Horn「Central Park West」ではコルトレーン解釈を経て、ジャズの核心にぐっと引き込まれる。Timo Lassy Trio「Orlo」やSven Wunder「Take A Break」では軽やかでメロディアスなピアノが展開し、Andrew Hill「Poinsettia」で再び抽象度の高いインプロへと踏み込んでいく。

Avantdale Bowling Club「Years Gone By」でラップとスピリチュアル・ジャズが結びつき、Museum Of Plate「The Ground」で空間が広がるような感覚へ。Ahmad Jamalの「M*A*S*H Theme」、Athletic Progression、Amaro Freitasなどのアーティストが続き、繊細で浮遊感あるアンサンブルが空気を変えていく。

中盤ではJaubi「Dilla Taal」やMiguel Hiroshi「Ayla」といった異国感とリズム実験が溶け合い、Greg Foat、Matthew Halsallが美しくメランコリックなサウンドスケープを展開。The Cosmic Tones Research Trio、Kahil El’Zabarなどが登場することで、プレイリストはより霊的で瞑想的な領域へと入っていく。

終盤はSamuel Seo × Kim Oki「Cloud」やSpirit of Naima、鈴木宏昌「Love」など現代アジア圏の表現も加わり、選曲の広がりを感じさせる。Jeff ParkerやUyama Hiroto、Dana and Aldenが登場する流れはビートと即興の交差点のようで、静かにうねりながらリスナーを引き込む。
そして最後は国安良夫カルテット「Saito」プレイリスト全体がビートと旋律、空気の振動と沈黙の間を行き来しながら、静かに終着へと向かう。

ジャンル横断的でありながら、通底する「気配」と「温度」がある。ビート愛好家にも、スピリチュアル・ジャズのファンにも、モダン・コンテンポラリーのリスナーにも刺さるプレイリスト。耳だけでなく、身体感覚すべてで味わいたい2時間。ぜひ堪能してほしい。

ここではその中から象徴的な5曲を紹介する。

Timo Lassy - Orlo (Official Music Video)

    北欧ジャズらしいクールさとファンクネスが同居する、太いサックスがリードするモダンでグルーヴィーな一曲。
    Avantdale Bowling Club - 'Years Gone By'
    ジャズバンド編成の重厚なグルーヴに乗せて、時間の経過や人生を内省的に綴る、深みのあるヒップホップ・ジャズ。
    Amaro Freitas - Baquaqua (Live)
    アフロ・ブラジリアンのリズムとスピリチュアルなピアノが交錯する、解放感と緊張感を併せ持つ圧巻の一曲。
    Matthew Halsall - Water Street (Edit) - Official Video
    柔らかなトランペットと深い余韻のハーモニーが広がる、静謐でスピリチュアルなモダン・ジャズ。
    Yoshio Kuniyasu Quartet (国安良夫 4) - Saito
    日本ジャズならではの間と抑制が美しい、硬質で詩的なモーダル・ジャズの名演。

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    TOMITA  プロフィール

    DJ/選曲家。レコード好事家。レコ袋蒐集家。「太子堂ジャズ部」主宰。90年代中盤からDJを開始。
    レジデントDJとして関わった主なパーティーは「a new dimension@ LOOP、「Steppin'Jazz Sole@JZ Bratetc..。現在は「Level 7@Bar Musicを中心に選曲。
    ディスク・ガイド『MUSICANOSSA』、『Jazz Next Standardシリーズ』、『ヨーロピアン・ジャズ・ディスクガイド』、『和モノAtoZ』、『別冊ele-king RECORD――レコード復権の時代に』etc..に寄稿。

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