今月のUSEN MIXは、ジャズ、ヒップ・ホップ、クラブ・ミュージック、現代音楽まで、多様なジャンルを縦横無尽に旅するような構成となっている。

サンプリングや即興性、詩的なリリック、浮遊感のあるビートが一貫した美学で繋がれ、静かに耳を引き込みながら、最後には深い余韻を残す。まさに現代の“リスニング・ジャズ”〜“インテリジェンスなヒップホップ”が融合したミックス。

冒頭はMatt Wilde & AwonMargiela Jazz Club」で幕開け。スモーキーなジャズ・ピアノに、Awonの語り口が溶け込むラウンジ感。続くMadlib × RhapsodyDaddy’s Girl (Inst)」でミッドテンポに加速し、自身の楽曲でオランダのChillhopからリリースされたFK × 巨瀬典子「Sora」では和の空気を纏ったビートが異国感を添える。

Ol’ Burger BeatsやTalib Kweli × Madlibのコラボを経て、Pink Butter × T3 (Slum Village)Stan Smith & Wipe The Needleと、ネオ・ソウル〜ジャズ・ラップの洗練が続く。KoralleFloFilzによる2つの「Insomnia」が、同名異曲の連続で静かな深度をつくり、Siegfried HartDaylight Robbery! のエレガントなモダン・ジャズへと自然に流れ込む。

中盤はAdrian Younge × Ali Shaheed Muhammad × KatalystReflections」から、Kassa OverallC.R.E.A.M.」への展開が見事。クラシックな楽曲を現代的に再解釈しながら、Amanda WhitingScrimshireBlue Earth Soundなど、新世代ジャズ・プロデューサーたちが繊細なサウンドを織りなす。

後半はSven WunderMisty Shore」やGreg FortMinerva’s Owl」、Wolfgang HafnerBalance」など、クラシカルかつ浮遊感のある楽曲が中心に。ReservoirLove Theme from Spartacus」ではロマンティックな旋律が響き、Clear Path EnsembleSarter Kitと続くことで、音楽はより抽象的な領域へと踏み込んでいく。

終盤はSpirit of NaimaFinn Rees、野口 文と、内省的なピアノと美しい構築美が印象的なパートに。Hermon Mehari × Tony Mixer、中畑紘子など現代ジャズの深化を感じさせる演奏を経て、Bill EvansSoiree」という王道の締めくくりが、静かに物語の終わりを告げる。

ビート、詩、旋律、空間性のすべてが高次元で調和したこのプレイリストは、ただのジャンル横断ではない。ひとつひとつの曲が、次の楽曲への“問い布石のように機能し、リスナーに能動的な耳を求める。夜の読書や創作、静かな一人の時間にぜひじっくり聴きたい、極上の音の旅。ぜひ堪能してほしい。

ここではその中から象徴的な5曲を紹介する。

Awon & Matt Wilde - Margiela Jazz Club (Visualizer)
スモーキーなピアノのループと落ち着いたビートの上で、Awonの渋い語り口がじっくりと響く、ジャズ・ラウンジの空気感漂う上質な一曲。
Kassa Overall - C.R.E.A.M. (Cash Rules Everything Around Me) [Wu-Tang Clan] (Live at Emilio's)
オリジナルの精神を受け継ぎつつ、ジャズ・ドラムとモダンなビートで再解釈された、クラシックへの新しいアプローチ。
Blue Earth Sound - Mariposa [ Live Session ]
軽やかなアコースティック・サウンドと透明感あるメロディが、穏やかでリラックスしたチルアウトな一曲。
Wolfgang Haffner - Balance
緻密なドラムワークと洗練されたジャズ・ハーモニーが織りなす、落ち着きと躍動感を併せ持つモダン・ジャズの一曲。
Resavoir- Love Theme from Spartacus
映画『スパルタカス』の名曲を、Yusef Lateefのムーディなジャズ感覚で再解釈。哀愁漂うメロディと柔らかな演奏が、スクリーンの名場面を思い起こさせる一曲。

FKのMIXプレイリストはこちら

FK  プロフィール

90年代初頭よりビートメイカー・DJとして活動を開始。 Hip Hopのビートメイキングを通じて、レアグルーヴを起点に様々な音楽と出会いスピリチュアルジャズをはじめとした人の心象世界を描く音楽に傾倒。
2003
年にnujabes主宰のレーベルHydeout Productionsの旗艦店「tribe」のマネージャーとして抜擢され同店に務める傍らソロ楽曲制作、DJ等で活躍。2010年のnujabesの急逝に伴うトリビュートアルバムにも参加。以後、楽曲制作、リミックスワーク、DJプレイを通じてディープなグルーヴとイマジネイティブなサウンドを共存させた世界観を表現し続けている。
 
リンク

FK Instagram

こちらもおすすめ!

一覧へ戻る