いい歌でありさえすれば必ずヒットする。

これが歌の本来あるべき姿です。しかし、現実は強力なタイアップが付いていなければ売れない時代です。いかがなものか?と思います。この風潮に私はあえてアンチテーゼを投げかけたい。いい歌は売れるべきだし、たくさんの人たちに聴いてもらいたい。そんな“音楽愛”が私のポリシーです。

 「こんないい歌、聴かなきゃ損!」

音楽評論家の富澤一誠です。いい歌、いいアーティストを見つけて紹介するのが私の仕事です。「演歌・歌謡曲」でもない。「Jポップ」でもない。良質な大人の歌を「Age Free Music」と名づけて私は推奨していますが、今回ご紹介する「Age Free Music」アーティストは山木康世さんです。

★踏み切った瞬間の熱い思い

この〈音声版〉を聴く前に一言述べさせていただきたいことがあります。それは今回の山木康世さんに対するインタビューのポイントは、これからどう「着地」をするのか?ということです。

山木さんはこれまで、ふきのとうからソロ活動を経て50年間頑張ってきました。言ってみればこの50年間は助走期間と言っても過言ではありません。スキーのジャンプではありませんが、ジャンプ台を踏み切ったとき、何を考えて踏み切ったかということ。途中で風向きが変わったかもしれません。フォローの風ばかりではなかったはずです。アゲンストの風が吹いたときは失速しそうになったはずです。しかし、なんとかこらえて体勢を整えたからこそ、ここまで飛び続けて来られたのです。

だとしたら、どこに着地をするかということが重要になってきます。ジャンプでは遠くへ飛ぶことも必要ですが、飛形点も決めてテレマークも付けたいものです。そのためには飛び立ったとき、いや、踏み切ったときにどんな思いだったのかを忘れてはいけません。その思いが熱ければ熱いほどきっと遠くまで飛べるし、着地もきれいに決まるというわけです。

という訳で、〈音声版〉を聴く前に山木康世さんの踏み切った瞬間の熱い思いを知っておいてください。

その方が山木さんに肉薄できると思います。

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★白い冬/ふきのとう

グレープの「精霊流し」、山本コウタローとウィークエンドの「岬めぐり」、N.S.Pの「夕暮れ時はさびしそう」など、いわゆる“叙情派フォーク”の名曲がいっせいに花開いたのは1974年の秋のことでした。いわば聴き手の共感を呼ぶような歌が求められていたということですが、そんな時代のニーズにぴったりとはまったのが、ふきのとうの「白い冬」(74年9月21日発売)でした。

ふきのとうは71年に札幌市で山木康世(50年10月22日、札幌市生まれ)、細坪基佳(52年10月26日、北海道雨竜郡石狩沼田町生まれ)のふたりによって結成されました。当時彼らは共に北海道学園大学に在学中でした。73年、ニッポン放送系主催の<全国フォーク音楽祭>で作曲賞を受賞。これがきっかけとなって注目を浴びました。その辺の事情を前田仁ディレクターは語ります。

「才谷音楽出版の方から、札幌にふきのとうというフォーク・デュオがいて、これがとってもいいから聴いてほしいというオファーがあったんです。で、デモ・テープを聴かせてもらったんですが、まず細坪のボーカルがすごいと思った。陽水ばりのハイトーンと叙情性、これはすごいボーカリストだと思った。それと山木の作曲センス、これにも光るものがあった。それで、やろう、と決めたんです」

才谷音楽出版には当時海援隊が所属していたので、新人グループだったふきのとうは海援隊のコンサートに前座として出演していました。ところが、あっという間に海援隊を食ってしまいました。というのは、デビュー曲「白い冬」があれよ、あれよという間に、ヒットしてしまったからです。その辺のとまどいぶりを、彼らはかつてこんなふうに語っていました。

「デビューしたばかりのころは、だれも教えてくれる人がいなかった。事務所もできたばかりだし、もともとマイナーなことしかやったことがなかったから、いきなり売れてしまったので、ぼくらはもちろんのこと、たぶんスタッフもどうしていいのかわからなかった」

彼らのとまどいぶりが目に浮かびますが、「白い冬」はまさに“名曲”でした。それに発売のタイミングも合っていました。秋から冬に向かう季節の中で、あなたを愛した秋はもう去ってしまって、感じるものはただ悲しい白い冬という意味合いが一段ときわだったからです。

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<音声版>富澤一誠のこんないい歌、聴かなきゃ損! 第36回 山木康世さん

「山木康世 Live Library 2025」 ~LIVING WITH MUSIC! YY TOKYO RHAPSODY(東京ラプソディ)~

<東京>9月4日 けやきホール
会場=古賀政男音楽博物館内 けやきホール
   
東京都渋谷区上原三丁目6-12
アクセス 小田急線、地下鉄千代田線 代々木上原駅から徒歩3分
開場=17:00 開演=17:30
チケット
前売=5000円 当日=5500円 高校生以下=1000円  全席指定 

◎チケット販売中! 
 ★ゆうちょ銀行 青い振込用紙に、けやきホール・住所・氏名・連絡先、チケット枚数+送料210円を送金下さい。
送付先住所、氏名、連絡先を記載してください。
 ★山木倶楽部通販ショップ 
 ★ローソン (Lコード72453)
 ★ライブ会場

「山木康世 Live Lovely 2025」 ~我らがYAMAKING 能舞台で 謡い 囃し 舞う? 秋の古都LOVELY!~

<京都>9月22日 冬青庵能舞台

会場=冬青庵能舞台        
京都市中京区両替町通二条上る北小路町
アクセス 京都市営地下鉄烏丸線 丸太町駅から徒歩3分
開場=17:00 開演=17:30  
チケット
前売=5000円 当日=5500円  

◎チケット販売中! 
※山木倶楽部通販ショップ
ローソンチケット 整理番号付 Lコード54503
★整理番号順入場★  
山木倶楽部とローソンチケットそれぞれ整理番号1番から交互にご入場いただきます。

富澤一誠

1951年、長野県須坂市生まれ。70年、東大文Ⅲ入学。71年、在学中に音楽雑誌への投稿を機に音楽評論家として活動開始し、Jポップ専門の評論家として53年のキャリアをもつ。レコード大賞審査員、同アルバム賞委員長、同常任実行委員、日本作詩大賞審査委員長を歴任し、現在日本レコード大賞審査委員長。また尚美学園大学名誉教授&客員教授なども務めている。「わかり易いキャッチコピーを駆使して音楽を語る音楽評論家」としてラジオ・パーソナリティー、テレビ・コメンテーターとしても活躍中。現在FM NACK5〈Age Free Music !〉(毎週木曜日24時から25時オンエア)、Inter FM〈富澤一誠のAge Free Music~大人の音楽〉(毎月最終月曜日20時から21時オンエア)パーソナリティー。BS日テレ〈そのとき、歌は流れた〉(毎月第2・第3水曜日20時から22時オンエア)コメンテーター。また「松山千春・さすらいの青春」「さだまさし・終りなき夢」「俺の井上陽水」「フォーク名曲事典300曲」「『こころの旅』を歌いながら」「私の青春四小節~音楽を熱く語る!」など著書多数。

俺が言う!by富澤一誠

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