いい歌でありさえすれば必ずヒットする。
これが歌の本来あるべき姿です。しかし、現実は強力なタイアップが付いていなければ売れない時代です。いかがなものか?と思います。この風潮に私はあえてアンチテーゼを投げかけたい。いい歌は売れるべきだし、たくさんの人たちに聴いてもらいたい。そんな“音楽愛”が私のポリシーです。

 「こんないい歌、聴かなきゃ損!」

音楽評論家の富澤一誠です。いい歌を見つけて紹介するのが私の仕事です。「演歌・歌謡曲」でもない。「Jポップ」でもない。良質な大人の歌を「Age Free Music」と名づけて私は推奨していますが、藤澤ノリマサさんは「ポップオペラ」というニュー・ジャンルを作り、さらにそれを進化させて「Age Free Music」を創造しようとしているように私には見えます。そこで今回はゲストに藤澤ノリマサさんをお迎えして、彼がめざしている「大人の歌」にせまってみたいと思います。

★ポップスとオペラ融合の独自スタイル 藤澤ノリマサ新曲リリース

この〈音声版〉を聴く前にぜひ読んでおいていただきたいコラムがあります。手前みそで恐縮ですが、私が「夕刊フジ」(2012年10月2日発行)に書いた藤澤の紹介文です。〈ポップスオペラの貴公子〉というキャッチコピーでメジャー・デビューした藤澤がめざしていたニュー・ジャンル「ポップオペラ」を分析したコラムです。このコラムを読んでから〈音声版〉を聴くと藤澤がめざしていたものがよくわかるということです。

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 大人のエンタメ! ポップスとオペラ融合の独自スタイル 藤澤ノリマサ新曲リリース

富澤一誠

 ポップオペラというニュー・ジャンルを開拓した藤澤ノリマサが新作『Sing for You』をリリースした。ポップオペラとは、サビ前まではオリジナルのポップスメロディーを歌い、サビのフレーズは既存のクラシックメロディーをつなげて、さらにこのサビの部分をオペラ歌唱法で歌うというもの。つまり、1曲の中にポップスとオペラを融合させた独自のスタイルである。
 編み出すきっかけは藤澤が高校1年生の時に行ったカナダのホームステイ先で、セリーヌ・ディオンとイタリアのテノール歌手・アンドレア・ボチェッリのデュエット「ザ・プレイヤー」を偶然聴いたこと。「これを自分ひとりでできたらカッコいいだろうな」と思った。
 「僕と同じ音楽大学(武蔵野音大)で声楽を専攻した親父の影響でクラシックを。おふくろは歌謡曲やポップスを教える歌の先生だったのでどっちのジャンルにも興味があったんです」
 帰国後、音大を卒業して声楽の歌唱法を身につけた彼は、ポップスと声楽の融合にチャレンジを始めるが、なかなか上手くはいかない。重要なアドバイスを与えたのが現在のプロデューサーだ。
 「ひとつの曲を提案されました。スウェーデンの『ビンチェロ』という曲でした。サビに行く前まではオリジナルのポップスで、サビのフレーズはオペラのメロディーになっている曲です。オリジナルメロディーはポップスの歌唱法で、オペラメロディーは声楽の歌唱法で歌えば、自分がめざしているものに近づけると思ったんです」
 こうしてたどり着き、2008年に「ダッタン人の踊り」でメジャー・デビューを果たしたのだ。以降10枚のシングルと4枚のアルバムを出し進化し続けている。
 「これまではポップスとオペラの歌唱法の融合という歌のテクニックに重点をおいてきましたが、今回はそこにプラスしてメッセージを伝えようというテーマを決めました」
 歌唱にテクニックとハートが加わって、彼の歌はさらに表情が豊かになったようだ。

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 藤澤ノリマサは、2008年4月30日に「ダッタン人の踊り」でメジャー・デビューした。キャッチコピーは「ポップオペラの貴公子」。ポップスとオペラの融合という新しいチャレンジが高く評価され藤澤は一躍注目を集めた。とはいえ、「ポップオペラ」だけやり続けているわけにはいかない。自然と大人の歌にシフトしていくことになるわけだが、そう簡単に事は運ばない。そんな中で藤澤のチャレンジが続き進化が始まっていった。デビュー15周年が過ぎ、そして今、20周年が視界に入ってきた。これから藤澤はどこへ着地しようとしているのだろうか?その辺の話をじっくり聴いてみようと思う。

<音声版>富澤一誠のこんないい歌、聴かなきゃ損! 第28回 藤澤ノリマサさん

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富澤一誠

1951年、長野県須坂市生まれ。70年、東大文Ⅲ入学。71年、在学中に音楽雑誌への投稿を機に音楽評論家として活動開始し、Jポップ専門の評論家として50年のキャリアを持つ。レコード大賞審査員、同アルバム賞委員長、同常任実行委員、日本作詩大賞審査委員長を歴任し、現在尚美学園大学名誉教授&客員教授なども務めている。また「わかり易いキャッチコピーを駆使して音楽を語る音楽評論家」としてラジオ・パーソナリティー、テレビ・コメンテーターとしても活躍中。現在FM NACK5〈Age Free Music!〉(毎週木曜日24時から25時オンエア)、InterFM〈富澤一誠のAge Free Music~大人の音楽〉(毎月最終水曜日25時から26時オンエア)パーソナリティー。また「松山千春・さすらいの青春」「さだまさし・終りなき夢」「俺の井上陽水」「フォーク名曲事典300曲」「『こころの旅』を歌いながら」「私の青春四小節~音楽を熱く語る!」など著書多数。

俺が言う!by富澤一誠

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