いい歌でありさえすれば必ずヒットする。
これが歌の本来あるべき姿です。しかし、現実は強力なタイアップが付いていなければ売れない時代です。いかがなものか?と思います。この風潮に私はあえてアンチテーゼを投げかけたい。いい歌は売れるべきだし、たくさんの人たちに聴いてもらいたい。そんな“音楽愛”が私のポリシーです。

音楽評論家の富澤一誠です。
いい歌を見つけて紹介するのが私の仕事です。「演歌・歌謡曲」でもない。「Jポップ」でもない。良質な大人の歌を「Age Free Music」と名づけて私は推奨していますが、澤田知可子さんは「会いたい」が「21世紀に残したい泣ける名曲」として1位に選ばれました。その意味では、彼女は「泣ける名曲」の女王と言っても過言ではありません。そこで今回は澤田知可子さんをお迎えして泣ける名曲の魅力にせまってみたいと思います。

「こんないい歌、聴かなきゃ損!」(音声版)をお聴きいただくにあたって、サポートの意味で、澤田知可子さんの魅力を詰め込んだ30周年記念作品「こころ唄~BEST & COVER 30~」(2017年6月21日リリース)に書いた私のライナーノーツを読んでいただきたいと思います。
30周年を彼女がどう迎えたのか?それを知ってから現在の心境を知るとさらに深く理解できるのではないでしょうか。その意味で、ぜひ読んでいただきたいと思います。

★沢田知可子の新しい地平が切り開かれたようだ!文・富澤一誠

“泣ける名曲”として名高い「会いたい」は、沢田知可子がライブで歌い続けて来たからこそロングセラーとなり今でもたくさんの人々に聴き継がれ歌い継がれているに違いない。その意味では、彼女にとってライブこそが命綱ということだ。そんな彼女が1987年10月5日に「恋人と呼ばせて」でデビューして〈30周年〉を迎えた。そして、その記念に2枚組アルバム『こころ唄~BEST & COVER 30~』をリリースした。
 ふつう30周年記念作品となるとヒット曲を中心に構成されたベスト・アルバムになりがちだが、彼女の場合はそうではない。ヒット曲も収録されているが、新曲も7曲収録されていてオリジナル・アルバムをほうふつさせる内容となっている。今回このアルバムのコンセプトは何なのだろうか?彼女は言う。
「自分の中ではコンサートをイメージしています。自分の歌を生で聴いてもらうというコンサートが、私にとっては人生のメインディッシュでしたので、選曲はコンサートで聴いているようなイメージで決めました」
〈Disc1〉の1曲目は「幸せになろう」から始まる。
「『幸せになろう』はオープニングでは必ずやる曲で、幕が開くとこの曲が始まる。するとその次に知らない曲がきても、知っている曲を聴いて一回心が開いているので、次に新曲がきても怖くないというイメージで、新曲の『冬のほたる』『百年の恋』『ふたりの風景』とあえて続けたんです」
そして5曲目は「Day by day」。
「新曲ばかり続くなと思っているときに、お馴染みの『Day by day』でなんとなく心の休憩というか・・・。そういうふうにして知っている曲も間に入れておきながら、新しい曲をゆるんだ心に入れていくと幅が広がるんです」
〈Disc1〉を聴いているとコンサート会場にいるかのような臨場感に浸れるところが心地好いようだ。
〈Disc2〉は「会いたい」から始まり「恋人と呼ばせて~Let me call your sweetheart~」「忘れられない」「COME INTO MY LIFE」と続く。オリジナル音源なので懐かしい気分になる。
「今の私の声の質感とあまりにも違うので、当時の若い頃の自分をDisc2の始めの方に集めてここは思い切って懐かしいシリーズにしたんです。ここで初めてベスト盤を聴いたなという感じですかね」
その後、今度は「My Revolution」「ロビンソン」「初恋」「YaYa~あの時代を忘れない~」「桃色吐息」「どんなときも。」など怒濤のような“カヴァー”が続く。
「カヴァーは私にとっては憧れの楽曲への挑戦という感じなんです。やっぱり懐かしいナンバーを歌うとすごく自分の心がほっとするんです」
このアルバムを作り上げたことで彼女はさらにアーティストとして成長したようだ。30周年記念ベスト・アルバムが30周年記念オリジナル・アルバムになったということである。
「『会いたい』を聴いて泣く涙と『どんなときも。』を聴いて泣く涙はきっと違うんですよ。その違う色の涙を流せるというか、『会いたい』という曲の涙の色と違う色の涙が出るのが、すごく今回は感動してしまったんです」
「会いたい」を作詞した沢ちひろさんの遺作となった「冬のほたる」を始めとして新曲を作るうえでの新しい出会いも彼女にとってはアーティストとして大いなる刺激を与えられたようだ。その意味で、沢田知可子の新しい地平が切り開かれたようである。
(30周年記念アルバム「こころ唄~BEST & COVER 30~」(ユニバーサルミュージック)ライナーノーツより)

<音声版>富澤一誠のこんないい歌、聴かなきゃ損! 第23回 澤田知可子さん

澤田知可子〜うたぐすりBest Selection〜

澤田知可子 うたぐすり~Best Selection  澤田知可子自身がセレクトした全32曲!
<歌は心の薬です。> 「泣き歌の女王」澤田知可子のヒストリーを語るうえで欠かせない大ヒット曲の数々、 そして今を感じるために欠かせない最新曲も加えた本人セレクト32曲。
全国各地からライブの要望が高く、毎年50ヶ所以上で公演を行う澤田知可子。 彼女の魅力を余すところなく詰め込んだ、こんな時代だからこそ心に効くベスト盤が登場。

DISC 1 
1 会いたい 
2 幸せになろう 
3 Day by day 
4 恋人と呼ばせて-Let me call your sweet heart- 
5 Happy Ever After 
6 忘れられない 
7 COME INTO MY LIFE 
8 Soirée 
9 もしも、涙がこぼれたら… 
10 Travail 
11 初恋 
12 BOY 
13 二十歳のころ 
14 星空の駅 ~My Pure Station~ 
15 ふたり
16 小さなHappy end.

DISC 2  
1 この星の歩き方 
2 遠く 
3 冬のほたる 
4 キミと僕の永遠〜うたぐすりEdition 
5 GIFT〜Premium Edition〜  
6 空を見上げてごらん~長岡花火バージョン~ 
7 シアワセの種  
8 Together 
9 MAYA 
10 月の歌薬 
11 しあわせは許してくれる 
12 HAVE A NICE DAY feat. 下地正晃 
13 一粒の夢 
14 「頁」ページ 
15 ありがとう〜Premium Edition〜

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富澤一誠

1951年、長野県須坂市生まれ。70年、東大文Ⅲ入学。71年、在学中に音楽雑誌への投稿を機に音楽評論家として活動開始し、Jポップ専門の評論家として50年のキャリアを持つ。レコード大賞審査員、同アルバム賞委員長、同常任実行委員、日本作詩大賞審査委員長を歴任し、現在尚美学園大学副学長及び尚美ミュージックカレッジ専門学校客員教授なども務めている。また「わかり易いキャッチコピーを駆使して音楽を語る音楽評論家」としてラジオ・パーソナリティー、テレビ・コメンテーターとしても活躍中。現在FM NACK5〈Age Free Music!〉(毎週木曜日24時から25時オンエア)、InterFM〈富澤一誠のAge Free Music~大人の音楽〉(毎月最終水曜日25時から26時オンエア)パーソナリティー。また「松山千春・さすらいの青春」「さだまさし・終りなき夢」「俺の井上陽水」「フォーク名曲事典300曲」「『こころの旅』を歌いながら」「私の青春四小節~音楽を熱く語る!」など著書多数。

俺が言う!by富澤一誠

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