Age Free Music 富澤一誠のこんないい歌、聴かなきゃ損！ 第30回　カラフルパレットさん

いい歌でありさえすれば必ずヒットする。
これが歌の本来あるべき姿です。しかし、現実は強力なタイアップが付いていなければ売れない時代です。いかがなものか？と思います。この風潮に私はあえてアンチテーゼを投げかけたい。いい歌は売れるべきだし、たくさんの人たちに聴いてもらいたい。そんな“音楽愛”が私のポリシーです。

　「こんないい歌、聴かなきゃ損！」

音楽評論家の富澤一誠です。いい歌を見つけて紹介するのが私の仕事です。「演歌・歌謡曲」でもない。「Jポップ」でもない。良質な大人の歌を「Age Free Music」と名づけて私は推奨していますが、カラフルパレットの「江ノ電ものがたり」は「令和の『神田川』」ともいうべき叙情派フォークの名曲です。

そこで今回はカラフルパレットのおふたりをお迎えして叙情派フォークの名曲の真髄にせまってみたいと思います。というわけで、ゲストはカラフルパレットです。

★汽車（電車）を題材にした名曲は多い！

この〈音声版〉を聴く前にぜひ読んでおいていただきたいコラムがあります。私が毎日新聞夕刊（2024年6月19日付）に書いたCD評ですが、結果的にカラフルパレットに対する推薦文になっている、と言っても過言ではありません。つまり、それほど彼らのシングル「江ノ電ものがたり」を気に入ってしまったということです。では、どこがそれほど？ ということですが、このコラムを読んでからこの〈音声版〉を聴いていただくとさらに理解度が深まるということです。

　いい曲、イコール、いい歌ではありません。いい曲はそれにふさわしい歌い手に歌われて初めていい歌となり、たくさんの聴き手のハートを奪うのです。カラフルパレットが「江ノ電ものがたり」という「いい曲」をいかにして「いい歌」にしたのか？ ぜひ考えてみて下さい。

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富澤一誠選

富澤一誠

カラフルパレット／江ノ電ものがたり（夢レコード） 「なごり雪／イルカ」「私鉄沿線／野口五郎」「池上線／西島三重子」など汽車（電車）を題材にした名曲は多いが、また1曲名曲が生まれたようだ。

Yu-kiとあきひろからなるユニット「カラフルパレット」の「江ノ電ものがたり」である。藤沢駅始発、鎌倉駅終着の江ノ電の区間の途中に江ノ島があり、アニメ「スラムダンク」のオープニングに登場する鎌倉高校前駅の踏切は外国人観光客のスポットとなっていて、その前に広がる海と夕日は聖地にふさわしい見事な景観となっている。

歌の舞台はここで繰り広げられるラブストーリー。いつかは一緒になろうと誓い合っていたのに、男は黙ってどこかに引っ越してしまった。あきらめきれない女はかつてのように各駅停車に乗って通い慣れたアパートへ訪ねてみるが消息はつかめない。それでも彼女はかつて待ち合わせをしたスラムダンクの踏切に今日も自然と来てしまう。あきらめたくてもあきらめきれない彼女の悲しみが募るほどに彼はどうしているのだろうという思いは増すばかりだ。

久仁京介作詞、山田ゆうすけ作曲の“いい曲”をカラフルパレットが見事に“いい歌”に昇華している。

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＜音声版＞富澤一誠のこんないい歌、聴かなきゃ損！ 第30回 カラフルパレットさん