The Get Alongs『Second To None』/(Digital)/We Are Busy BodiesThe Get Alongs『Second To None』
2017年にトロントで結成されたロックバンドThe Get Alongs(ザ・ゲット・アロングス)の2ndアルバム。60年代のガレージ、70年代のパワーポップ、90年代のサイケから影響を受けつつも、どれか一つの路線に留まらないサウンドを10年近くかけて磨き上げてきた彼ら。今作はスタジオに篭り、初めてスタジオワークと徹底的に向き合って作られ、ジャングルポップの質感とガレージロックのダイナミズムが同居し、フックも強力になったことで引き算の美学とアレンジの妙へと見事にシフト。また歌詞では若さゆえの成長痛、すれ違う恋愛関係、何もしない空白の時間にふと訪れる魂の探求など、モラトリアムの不安定な感情を等身大で切り取っている。初期の粗削りでインディーなサウンドからタイトで隙のない洗練されたバンドへと進化を遂げた彼らの意欲作。
Ill Peach『Eavesdropping』/LHWR1089/HandwrittenIll Peach『Eavesdropping』
シンガーのJess Carte(ジェス・カーテ)と、プロデューサーのPat Morrissey(パット・モリシー)によるデュオIll Peach(イル・ピーチ)によるセカンドアルバム。SZAやウィーザー、ファレル・ウィリアムスなどの楽曲制作・プロデュースに裏方として関わってきた二人。2019年から自身のリリースのためにIll Peachを結成、活動を本格化してきた。今作は前作のポップさと実験性をさらに一歩進め、Jessの個人的な喪失(2024年の父親の逝去)からのカタルシスや、人間関係の生々しい断片を詰め込んだ全10曲構成、エモーショナルに、時に脱力しながら歌い上げるヴォーカル、オルタナティブロック、ローファイ、ハイパーポップ、メインストリームポップなどを大胆にミックスし、カラフルでジャンルレス、予測不能なサウンドがアルバムを彩る。ポップでありながら型破り、一筋縄ではいかないアレンジの罠がそこかしこに仕掛けられた彼らのキャリアにとっての転換点でもある。
Born At Midnite『Eternal BAM Nation』/ABT127LPC1/Arbutus RecordsBorn At Midnite『Eternal BAM Nation』
カナダ・モントリオールを拠点に2018年に結成されたデュオ、Born At Midnite(ボーン・アット・ミッドナイト)のデビューフルアルバム。サンプラーやテープマシンを駆使し、「product-placement-punk」と自称する独自のポップサウンドを生み出す彼ら。インディーポップ、パンク、ニューウェーブ、ハウス、テクノを雑に混ぜたようでありながら妙に完成度の高いサウンドは実にくせになる。ローファイなドラムマシン、少し歪んだシンセ、宅録感のあるヴォーカルはまるで80年代のロストレガシーさを感じながらも、現代インディーのユーモアと距離感、クールさの追求と肩の力の抜け感がなんとも新しく、懐かしい。
Carrtoons『Space Cadet』/LPPLO0247C/+1 RecordsCarrtoons『Space Cadet』
NYのプロデューサー、マルチインストゥルメンタリスト、Ben Carr(ベン・カー)のプロジェクトCarrtoons(カートゥーンズ)の4枚目のアルバム。Tiny Deskにも4回ほど出演歴のある彼、独特のベースライン、レトロなサウンド、そして話題を呼ぶパフォーマンスが特徴で、今作はファンクとソウルを基盤としつつベース主導のグルーヴ設計でずっとノれる温かみのあるアナログ風味な低音が心地よい。客演陣も非常に豪華でDJ Jazzy Jeff(DJジャジー・ジェフ)、Pale Jay(ペイル・ジェイ)、Phonte(フォンテ)、Erick The Architect(エリック・ザ・アーキテクト)、Wiki(ウィキ)などを迎え、アーバンなネオソウル、ディスコ~ブギー感、ヒップホップとソウルの接続などに夜のイメージがしっくりはまる。
Onra『After Dark』/LACOAD/All CityOnra『After Dark』
フランスのプロデューサーArnaud Antoine Rene Bernard(アルノー・アントワーヌ・ルネ・ベルノー)によるOnra(オンラ)のプロジェクト。架空の深夜映画のサウンドトラックとして構想された今作は全曲セルフプロデュースで、『Long Distance』や『Nobody Has To Know』以来に彼が探求してきた洗練されたR&Bとモダンソウルの方向性を継承し、80's後半から90's前半のムードをインスピレーションに置いている。夕暮れから夜明けにかけて展開する映画のように構成され、アナログシンセサイザー、タイトなドラムプログラミング、控えめなベースライン、生サックスのテクスチャーがムードとストーリー性を演出。ヒップホッププロダクションを中心とした初期キャリア、そして以降彼の追い求める80'sファンク、ブギー、コンテンポラリーR&Bなどをルーツとした洗練さへのアプローチと進化を感じる一枚に仕上がっている。
Mikey D『Pop-N-Kim (Legends Don't Die)』/KKAT064/Kool Kat RecordsMikey D『Pop-N-Kim (Legends Don't Die)』
NYのレジェンドHIP HOPグループMain Source(メインソース)のMikey D(マイキー・D)によるソロアルバム。今作はRUN-DMCのDMCやBumpy Knuckles(バンピーナックルズ)の客演陣、Fantom of the Beat(ファントム・オブ・ザ・ビート)、Amadeus 360(アマデウス360)、K-Cut(Kカット)、Herb Middleton(ハーブ・ミドルトン)のトラックメイカーたちを迎えるなど、かなり骨太NYなB-boyism継承作品。ブーンバップ基調ながら太い音像、硬いドラム感なトラック群にタイトルよろしくレジェンド継承的でまだまだ現役を声高に、拳上げるオールドスクール讃歌。
Parallel Thought『The Third Allegory』/LPT22025/Parallel ThoughtParallel Thought『The Third Allegory』
2000年代からアングラヒップホップ界で異彩を放ち続けるニュージャージー拠点のプロデューサー、ユニット及びレーベル、Parallel Thought(パラレル・ソート)によるアルバム作品。今作は、アメリカの社会派画家、Ben Shahn(ベン・シャーン)の絵画『The Second Allegory』からインスピレーションをうけ、「第3の寓話」として再構築。ディストピア的な閉塞感、目に見えない脅威、そして世界が崩壊の危機に瀕しているかのような不穏な緊張感と、過去の核への恐怖が現代の情勢不安や社会的混沌のメタファーとなっている。大部分はインストゥルメンタルで構成されており、ミニマルなドラム、グリッチ・ノイズ、地を這うような重低音が絡み合い、ヘヴィなグルーヴとして現れる。またニュージャージーのアングララップシーンで異質な輝きを放つラッパーFatboi Sharif(ファットボーイ・シャリフ)が3曲客演参加。彼らの持ち味である実験的かつダークなアブストラクトヒップホップの極致であり、現代の空気を冷徹に捉えた大傑作。
Zomby『Ultra』/HDBLP033/HyperdubZomby『Ultra』
UKベースミュージックの異端児、Zomby(ゾンビー)による2016年Hyperdubからリリースの作品。この当時すでにベースミュージックの断片化は進んでおり、本作は“UKストリートの再編集”として提示された作品でもあった。それは彼のサウンド的特徴であるエスキビート、グライム、レイヴ的な語彙をより抽象的にし、ジャンルとしての作品というよりはUKベースの歴史をZombyが再編集、クラブミュージックとしての機能性よりも記憶の断片のような壊れた構造を前面にだし、それそのものを完成形として成立させていることにある。またゲストワークも象徴的で、Burial(ブリアル)、Darkstar(ダークスター)、Rezzett(レゼット)、Banshee(バンシー)とUKアンダーグラウンドの重要人物が参加し、この実験的作品の間を飾る要素として楽しめる。
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