Dua Saleh『Of Earth&Wires』/GI476CD/Ghostly InternationalDua Saleh『Of Earth&Wires』
ロサンゼルスを拠点に活動するスーダン系アメリカ人のSSW(シンガー・ソングライター)、詩人、俳優、Dua Saleh(デュア・サレー)による2枚目のフルレングス作品。R&B、インディーポップ、電子音楽、そしてスーダンやアフロディアスポラの伝統的なサウンドを織り交ぜた独自のスタイルが特徴で、2024年のデビューアルバム『I SHOULD CALL THEM』はNetflixの話題作『Sex Education』で使用されたことからも広く知られることとなった。今作は幅広いサウンドと豊かなコラボレーションが詰まり、デビュー後の進化を見せる一枚。自らの背景や体験、そして世界観をポエティックで内省的なリリシズム、クリアでエモーショナルな歌声、多層的サウンドで表現し、単なるポップ、R&B作品に留まらない深みと共鳴感を生み出している。また客演にはBon Iver(ボン・イヴェール)を迎え、彼とのコラボ楽曲が複数収録。文明の喪失や気候危機、個人的な孤独といったテーマを寓意的な言葉や象徴的な音像で描き出し、そして希望、人々との繋がりへの渇望も同時に反映している。
Che Noir&The Other Guys『No Validation』/HNOT961/HipnottChe Noir&The Other Guys『No Validation』
バッファロー出身のラッパー、プロデューサーChe Noir(シェ・ノワール)とプロダクションデュオ、The Other Guys(ジ・アザー・ガイズ)によるコラボレーションプロジェクト。タイトルが示すように他者の承認や賞賛を必要としない自己肯定を中心としたテーマに自己反省、レガシー、成長、自己価値を、深くも緻密なフロウで展開するChe Noirの鋭いリリックと、90's East Coast ヒップホップをルーツにしたソウルフルでアナログ感のあるビートが絶妙に混ざり、黄金期と現在のクリエイティビティ双方を感じられる。また客演陣も豪華で、Skyzoo(スカイズー)、Ransom(ランサム)、Smoke DZA(スモーク・ディーザ)などを含む多様なライムスタイルを持つアーティストがアルバムを支える。伝統的な文脈を踏襲しつつ、自身の内政に深く切り込んだリリカルな一枚。
Adrian Younge『Younge』/LL0191/Linear LabsAdrian Younge『Younge』
ロサンゼルス出身のプロデューサー、作曲家、マルチインストゥルメンタリスト、Adrian Younge(エイドリアン・ヤング)によるアルバム。今作はヒップホップのプロデューサー視点で書かれた組曲的アルバムとなっており、HIIP HOPやソウル、ジャズ、映画音楽的な響きを独自に融合し、70~80年代のアナログ感を現代に甦らせるサウンドを展開。ストリングス、ブラスなどのアコースティック楽器群を生かしながら、テープ録音やヴィンテージ機材を多用し、音像の熱量や余韻を豊かに再現し、伝統的なオーケストラのような配置を持ちながら、ヒップホップやブレイクビート感覚を下敷きにした構成となっており、ドラマティックな展開、静寂を活かす間、密度の濃いフレーズが交互に現れ、それがオーケストラ的な重層を生み出し、単なるインスト集ではなく、彼自身の音楽言語を一枚に結晶させた作品として昇華している。
Tigerbalm『Bubblegum Discos』/UR440LP/UbiquityTigerbalm『Bubblegum Discos』
イギリスを拠点とするDJ兼プロデューサーであるRose Robinson(ローズ・ロビンソン)によるTigerbalm(タイガーバーム)の前作より4年ぶりセカンドアルバム。今作も彼女が得意とするブラジル・南米系ディスコ、アフロ・アフロビート、ソカ、イタロディスコ、プロトハウス、ラテンパーカッション中心のグルーヴなどをすべてダンスフロアに落とし込み、世界各地の要素を混ぜたグローバルディスコ、バレアリック寄りなNUディスコ作品。これだけ多要素と世界各地の要素をミックスしているのに破綻せず踊らせてくるあたりかなり完成度が高く、一枚通してずっと気持ちがいい。最初から最後までアクション満載で完璧に作り込まれた21世紀のトロピカルディスコ・フュージョンであり彼女の才能をいかんなく発揮した意欲作。
Gitkin『Where the South Winds Wail』/WONDERLP74/WonderwheelGitkin『Where the South Winds Wail』
WonderwheelのPimps Of Joytime(ピンプス・オブ・ジョイタイム)の中心メンバーBrian J Gitkin(ブライアン・J・ギトキン)によるソロプロジェクトGitkin(ギトキン)による5枚目のアルバム。これまでの作品が世界各地のリズムを巡るロードムービーのようなものであったならば、今作は最もニューオーリンズ的であり、「未知の過去との交信」のような作品であるという。サーフギター、ブルース、エキゾチカ、サイケデリッククンビアを混ぜ合わせながら、街の湿潤なスーフィズムに深くしみ込み、まるで湿度の高い蒸し暑い深夜のニューオーリンズを歩いているかのような感覚を覚える。旅の終わりを思わせる、世界を放浪したサイケデリアがニューオーリンズに帰ってきたかのようだ。
Teen Suicide『Nude descending staircase headless』/RFC315/Run For Cover RecordsTeen Suicide『Nude descending staircase headless』
近年はフロリダ州オーランドを拠点に活動するインディーロック、ノイズポップバンドTeen Suicide(ティーンスーサイド)にとって7枚目のフルレングスLP。エモ、ノイズポップ、シューゲイズ的な要素を独自にブレンドした生々しく情緒的なサウンドを展開する彼らの最新作は、ダークで粗い質感のギター、90年代を彷彿とするノイズロックやエモの感触、重厚なドラムとベースラインによりこれまでのLo-Fi感覚を残しつつ、さらにバンドとしての統一感とダイナミズムを高めている。死生観や孤独、自己矛盾、果てしない創造欲求を歌詞のテーマに据え聴者へ強烈な感情を投げかけ、動的な激しいサウンドと静的な感情の内面を対比するかのように同居させている。
Loraine James『Detached From The Rest Of You』/HDBCD074/HyperdubLoraine James『Detached From The Rest Of You』
今作はグリッチ、IDMの語彙を使いながら感情の表現として機能させ、極めてパーソナルな内面を描いている。彼女自身は「IDMポップスターアルバム」と表現しており、自身の声をこれまでよりも前面に出し、先行シングルM3.「In a Rut」ではSydney Spannとデュエットも行っている。つまり今作はクリックノイズやグリッチを中心とする音響を用いながらもこれまでのクラブミュージック的な複雑さからより明確なソング形式へ接近したアルバムとして位置づけられており、実験的電子音楽とポップの境界線を軽やかに横断する試みであろう。
Danny Scott Lane『House Of Alice』/RWR03LP/Records We Release RecordsDanny Scott Lane『House Of Alice』
ニューヨークを拠点にミュージシャン、写真家、サウンドアーティスト、過去には俳優、シンガーとして活動するマルチアーティストDanny Scott Lane(ダニー・スコット・レイン)による10枚目のLP作品。アルバムタイトルはAlice Austen Houseに由来し、Aliceのの多作なストリート写真に興味を持ち、女性らしい日常の何気ない風景を切り取る彼女の視線が、そのまま音楽の質感に投影されている。柔らかなサックスやフルート、EWIなどの管楽器、滑らかなシンセパッド、ゆったりとしたリズムと空間を漂うようなテクスチャーを創り出し、親密でありながら深遠な音響世界を展開、抒情性と空間性が内省的な世界をさらに深める。
V.A.『Art Form 2』/WRWTFWW127/WRWTFWW Records / FORM@RECORDSV.A.『Art Form 2』
知る人ぞ知る東京のテクノ/IDM名レーベルFORM@RECORDSの1998年の名作コンピレーション『Art Form 2』がLPで再発。元々はCDのみでのリリースであり、今回のLP化は初の試み。内容としては中心人物の一人Yasutaka Satoによるプロジェクト、Virgo(ヴァーゴ)をはじめとする先鋭的なアンダーグラウンド勢が軒を連ね、90年代日本のテクノ/IDM文化で独自の美学を築いたFORM@RECORDSの電子音楽史を感じられる一枚。
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