London Grammar『The Greatest Love』/MADART4/Ministry Of Sound Recordings

London Grammar『The Greatest Love』

2009年にノッティンガムで結成、2013年に1stアルバム『If You Wait』をリリースしたUKのトリップホップトリオ、London Grammar4枚目のアルバム。物悲しい歌詞をメロンコリックなギターに乗せた、アンビエントで優美なサウンドが特徴的でイギリスを中心に高い人気を誇る。2度目のブリット・アワード最優秀ブリティッシュ・グループ賞にノミネートされ、全英1位を獲得した2021年リリースの3rdアルバム『Californian Soil』続くのが、本作『The Greatest Love』。1stシングルである「House」では、ハンナが、”ここは私の場所、私の家、私のルール”と歌い、ロンドン・グラマーの新たなる軌跡を体現している。今作は彼らのエモーショナルな歌詞をエレガントなヴォーカルに載せて、創造の自由をセレブレーションしており、ジャンルにとらわれずエレクトロニカとポップなサウンドを融合させている。

Mark du Mosch『Sterling Melody』/PON001/Peek of Normal

Mark du Mosch『Sterling Melody』

ノスタルジーな雰囲気もありつつ、嫌味の無い音像と余裕のある空間は流石の仕上がり。決して暴れたりはしないアシッドシンセも盛り込まれていたりと、上品かつ聴きごたえのある内容。ディスコ界のベテランStevie Koteyにより新設されたレーベル、Peek of Normalの第一弾リリースはオランダ出身のプロデューサー、DJ、エレクトロニック・ミュージッ・クアーティスト、Mark du Moschによるアルバム。 コールドウェーヴ/ニューウェーヴ寄りのエレクトロニック・サウンドを展開しながら、長年培ってきたアナログ機材へのこだわりと、Disco~Electro~Technoを横断するセンスが結実し、単にダンスフロア向けのテクノではなく、映画のサントラのような、起伏とドラマ性を持たせた流れが心地よさも感じる。

ML Buch『Skinned』/ANY15CD/Anyines

ML Buch『Skinned』

デンマークの作曲家、プロデューサー、歌手のML Buchによるデビューアルバム『Skinned』が、IngrateやBoli Group、Minais Bらも作品をリリースしているコペンハーゲンのポストクラブ系先鋭レーベル、Anyinesより初アナログ化!前作からの壮大なギターワークによるキャッチーなメロディーを別次元へと引き上げた初のフルアルバム。蛍光液体の如く耳に滑り込むような、固有のポップセンスと、電子的アプローチ、その魅惑的なボーカルを巧みに溶け合わせつつ、デジタル時代の親密さの現実を表現した、先鋭的かつ至福なアートポップ/アンビエント・ポップ・アルバム。

Bat for Lashes『The Dream of Delphi』/3501830/Decca

Bat for Lashes『The Dream of Delphi』

イギリス、ロンドン出身のシンガー・ソングライターによる、約5年ぶりフルレンス6作目。 アルバム表題にある "Delphi" とはBat for LashesことNatasha Khanの娘の名前。2020年に初の出産を経験した彼女は、自分の子供という小さくも大きな存在から多大なインスピレーションを受け、今作の制作に繋がったのだという。パーソナルな、我が子への直接的なメッセージが全編に含められている。これまでのBat for Lashesと言えば、ケイト・ブッシュを彷彿とさせるエキセントリックで神秘的なイメージ、時にはアコースティックでシンプルに、時には80年代風味のシンセポップ要素を取り入れ、作品によって方向性の微調整を図ってきたが、浮世離れしたスピリチュアルなムードは一貫しており、それでいて主幹を成すボーカルの豊かな表現力が衒いなく聴き手の胸を打つ、シャーマニックなカリスマ性を常にまとっていた。今作もそれは揺らがない。楽曲の形式はかなりフリーフォームで、リフレインは極力省いている一方で、長い尺のイントロが置かれることもあれば、大胆にもインストゥルメンタルで仕上げてしまっている曲もある。だがいずれにしても、曲がこのアレンジを呼んだと思える自然さがどの曲にもあり、実験的でありながらポップな感触も忘れず、スムーズに耳に馴染む。そして構築される世界観はやはり、思わず固唾を飲むくらいに聖性を湛えたものだ。

Original Soundtrack『I Saw the TV Glow』/A24M027LPC1/A24 Music

Original Soundtrack『I Saw the TV Glow』

ジャスティス・スミスとブリジット・ランディ=ペインが主演する、フルート・ツリーとA24が共同製作した新作青春サイコロジカルホラー映画『I Saw the TV Glow』の豪華メンツが揃い踏みしたサウンドトラックが登場。ユール、キャラロイン・ポラチェック、ジェイ・サム、映画にも出演するスロッピー・ジェーン フューチャリング フィービー・ブリージャーズと現在のインディ・シーンとメインストリーム全てのトップランカー達が集結した様は圧巻の一言。ユールの切ないシューゲイザー・アレンジを施したブロークン・ソーシャル・シーン カヴァー「ANTHEMS FOR A SEVENTEEN YEAR-OLD GIRL」、キャロライン・ポラチェックの新曲「STARBURNED AND UNKISSED」で聴けるアートポップの現在位置と、映画の内容並に収録曲達も濃い!

Jeanines『How Long Can It Last』/SKEPWAX029CD/Skep Wax Records

Jeanines『How Long Can It Last』

マサチューセッツ州を拠点に活動するAlicia JeanineとJed Smithによるインディ・ポップ・バンド、Jeaninesの3rdアルバム。Fairport Conventionの初期作品~Vashti Bunyanの60年代フォーク、Margo GuryanやLaura Nyroのサンシャイン・ポップ、Dear Nora、Marine Girls、Dolly Mixtureなど、多様な影響を反映した、独特のジャングリー・ポップアルバム。テーマは時に重いものの、メロディーとハーモニーはまさに天上的であり、これらの簡潔な楽曲を、まるで失われた名曲のような感覚へと高めている。全曲通して陽気な音とバンドマン的ロマンスを迸らせた熱い演奏も相まって一筋縄じゃいかない、だけどしっかり悶絶級のインディ・ポップを叩き出した快作。

Vashti Bunyan『Lookaftering(Expanded Edition)』/FATCD38XJ/Fat Cat

Vashti Bunyan『Lookaftering(Expanded Edition)』

ブリティッシュ・フォーク・シーンにおける幻の歌姫が、2005年当時、35年振りの新作として発表した2ndアルバムがリリース20周年を記念して未発表デモ、ライブ音源を追加収録した2枚組LPとして拡大再発!完全な"カルト的伝説"と形容できるアーティスト。ただ1枚のアルバムから丸々30年を歳月を経て、彼女は初のソロとなるアルバムをひっさげて戻ってきた。そしてこれが、息を呑むほど見事なアルバムだ。プロデュースとアレンジを手がけたのは同郷、マックス・リッチャー。たおやかで広がりのある曲と、前作『Just Another Diamond Day』が実に純粋な旅路の記録だったように、『Lookaftering』も同じように生活の体験から直接得た題材に基づいている。歌詞の内容と音楽の形態――「Same But Different」におけるメロディの優しい強弱、「Here Before」のヴォーカルの輪舞、「Turning Backs」での氷のように響くダルシマー――とがしっかり結びついたことによって、見事なまでの完全性が生じてもいる。アルバムのタイトル自体も、個人的な造語であり、"人でも動物でも、あるいは何かやるべきこと、面倒を見る必要のあることを、世話すること"の意味だ。





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