杏子、山崎まさよし、スキマスイッチ、秦 基博など数々の有名アーティストが所属するオフィスオーガスタは、2021112日に設立30年目を迎えました。「この節目の年に、アーティストや共に音楽を届けてくださるスタッフの皆様、そして何よりオフィスオーガスタの発信する音楽を愛し、応援してくださるリスナーの皆様へ、改めて感謝とエールを送りたい」という思いを「MUSIC BATON」と言うタイトルに込め、この一年を通して様々なライブをお届けしていきます。

2021年11月からスタートした、オフィスオーガスタ設立30周年記念ライブシリーズ「Office Augusta 30th MUSIC BATON」のファイナル公演、『MUSIC BATON The Final〜』が202211月1日に東京・豊洲PITで開催された。
ライブ当日は、オフィスオーガスタの設立日である11月2日の1日前。晴れて30周年記念日を迎えるべく、豊洲PITには杏子、山崎まさよし、岡本定義、元ちとせ、長澤知之、秦 基博、さかいゆう、浜端ヨウヘイ、松室政哉という、総勢9名の所属アーティストたちが集結した。

2部構成となったこの日は、まずは全出演者がステージ上に揃うトークセッションからスタートする。開演時刻の19時ちょうどになると、このライブシリーズ恒例となった『MUSIC BATON』のジングル映像が流れ、トークセッションのMCを務めるクリス智子が登場。続いて、出演者たちがバトンをつなぐリレーのような動きをしながら次々とステージに姿を見せる。バトンをつなぐ出演者たちはみな笑顔で、その場で足踏みをしながら走っているようなアクションを見せる。どこかユーモラスなその姿に、会場の雰囲気が一気に和んでいくのがよくわかる。トークでは、思い出話に花が咲いたり、円卓に座って話すというあまりないシチュエーションに山崎がツッコミを入れたり、声が出せないファンの気持ちを秦が読心術さながらに察して代弁したりと、とにかく楽しく和やかなムードが微笑ましい。ファンから寄せられた「生まれ変わったら、誰の顔と声になりたい?」という質問には、長澤が「同期の秦 基博。顔がかわいいし(笑)、声が素敵」と答え、オフィスオーガスタに所属するアーティスト同士の仲の良さを感じさせてくれた。

30分強のトークセッションが終わると、いよいよ第2部のライブステージが幕を開ける。トップバッターを務めるのは、浜端ヨウヘイ。披露されたのは、「Traveller」だ。浜端のスケール感に満ちた歌声が、会場に響き渡る。繰り返される〈僕らはいつも長い旅の途中さ 出会いを重ねて旅を続けるのさ〉というフレーズが、浜端のこれまで歩んできた道のり、そしてオフィスオーガスタが紡いできた30年の歴史と重なり合った。続いてステージに登場したのは、さかいゆう。ステージ中央のキーボードを前におもむろに腰掛けると、ファンにはおなじみのピアノのリフレインが聴こえてきた。さかいの代表曲の一つでありデビュー曲の「ストーリー」だ。グルーヴィーな演奏とシルキーな歌声に、観客たちが魅了される。<始めよう 二人のストーリー>という歌詞を<始めよう オーガスタのストーリー>に変えて歌う演出が、さりげなく粋でさかいらしい。3番手は、COILのメンバーとして活動し、杏子や元ちとせ、長澤知之、そして福耳などの楽曲も手がける岡本定義だ。岡本は、山崎まさよしとともにステージに現れ、温かい拍手で迎えられる。岡本はエレキギターを奏でながら、山崎はタンバリンを鳴らしながらCOILの「BIRDS」が演奏されると、会場をやはり温かく、そして大きな拍手が包んだ。

20時を少し過ぎた頃、ステージに姿を見せたのは松室政哉だ。ミディアムテンポのダンサブルなポップチューン「愛だけは間違いないからね」が始まると、観客が一斉に立ち上がり、思い思いに体を揺らす。ハンドクラップも自然発生し、ゴスペル的な高揚感も持つ楽曲を一層盛り立てていった形だ。続く長澤知之は、ロック的なバンドアンサンブルが光る「朱夏色」を披露する。後半に向かうにつれ、どこかサイケなシューゲイザー風味やエレポップなテイストも感じられる、不思議な魅力を放つナンバーだ。そこから会場の空気を一変させたのが、長澤に続いた元ちとせだった。バンドメンバーのギターはアコースティックギターに、ベースはウッドベースになり、元ちとせは「受け取ってください」と深々とお辞儀をする。凛とした空気が漂う中で歌われたのは、14年ぶりの最新オリジナルアルバム『虹の麓』の1曲目に収録された「暁の鐘」だった。慈しみとやさしさ、そして力強さにあふれた熱唱に、会場からは大きな拍手が湧き上がる。まぎれもない名曲、名唱で、前半戦のクライマックスだったと言っていいだろう。

元ちとせがステージをあとにすると、スクリーンにスキマスイッチの姿が映し出される。初公開となるライブ映像だ。「いろは」をじっくりと歌い上げ、演奏するスキマスイッチとそのバンドメンバーたち。「いろは」が終わるとすぐに画面が切り替わり、「全力少年」のライブ映像が流れ出す。ライブ映像ではあるが、観客たちの手拍子が臨場感を生んでいたのが印象的だった。スキマスイッチのライブ映像が終了すると、秦 基博がアコースティックギターを手に、一人でステージに立った。フィンガーピッキングの自然で温もりのあるギターの音色に合わせて、「ひまわりの約束」が歌われる。続く「残影」では、ギターの爪弾きの中に絶妙な強弱を加え、そのギターと歌が描くコントラストで引き込んでいく。2曲を歌い終えた秦は、静かにギターを置いた。

刻々とクライマックスが近づく中、颯爽と登場したのは杏子だ。ヘビーなハードロックサウンドに乗せ、吠えるように歌ったのは「30minutes」。「30minutes」は、バービーボーイズが解散する最後の30分で、その後の身の振り方を迷っていた杏子が「やっぱり私は歌い続けたい」と決めた時の思いを込めた曲だが、そのときもし杏子が「歌い続けない」という選択をしていたら、オフィスオーガスタが設立されることはなかっただろう。そう考えると、30周年を記念するこの日のライブで杏子が「30minutes」を歌った理由は、推して知るべしだ。「やっぱり歌い続けたい」と決めた30分から、30年。杏子の胸には、きっと万感の思いが去来していたはずだ。そんな杏子のあとを受けた山崎まさよしは、松室政哉と一緒に登場し、「Eyes On You」をまずは披露する。山崎はアコギを手に歌い、松室はアコギを弾きながらコーラスで寄り添っていく。山崎がアコギをエレキギターに持ち替え、「アドレナリン」で会場のボルテージを一気に上げる。ザ・ローリング・ストーンズの「夜をぶっとばせ」を思わせるコーラスのリフレインにも、理屈抜きでテンションが上昇した。

すぐにアンコールを求める手拍子が鳴り始め、杏子を中心に出演者全員がステージに勢揃いする。山崎のブルースハープが響き、さかいのキーボードが美しい音色を奏で、全員でパフォーマンスされたのは、松室政哉が作曲、岡本定義が作詞を手掛けた「イッツ・オール・ライト・ママ」だ。思わず踊り出したくなるパーティーチューンに、ステージにもハッピーな表情があふれる。そして、ラストに披露されたのは、もちろん「星のかけらを探しに行こう Again」だ。福耳の代表曲であり、オフィスオーガスタを象徴するような同曲は、これまでも様々な場面、節目節目で大切に歌い継がれていた。そんな「星のかけらを探しに行こう Again」を最後に全員でパフォーマンスしたということは、これからもオフィスオーガスタは良質の音楽を作り続け、「星のかけらを探しに行こう Again」のような良曲を生み出し、歌い繋いでいくという決意表明の意味も込められているだろうか。それこそ、1年にわたってライブを繋いできた、この『MUSIC BATON』というシリーズタイトルの意味が示すように。

こうして、Office Augusta 30th MUSIC BATON MUSIC BATON The Final〜』は大団円で幕を閉じた。同時に、オフィスオーガスタの未来に向かう新しい扉も開かれたはずだ。

取材・文/大久保和則
写真/岩佐篤樹

Office Augusta 30th MUSIC BATON『MUSIC BATON 〜The Final〜』

SET LIST
M1. 浜端ヨウヘイ/Traveller
M2. さかいゆう/ストーリー
M3. 岡本定義/BIRDS
M4. 松室政哉/愛だけは間違いないからね
M.5 長澤知之/朱夏色
M6. 元ちとせ/暁の鐘
M7. スキマスイッチ/いろは(VTR)
M8. スキマスイッチ/全力少年(VTR)
M9. 秦 基博/ひまわりの約束
M10. 秦 基博/残影
M11. 杏子/30minutes
M12. 山崎まさよし/Eyes On You
M13. 山崎まさよし/アドレナリン
En1. 福耳/イッツ・オール・ライト・ママ
En2. 福耳/星のかけらを探しに行こう Again

出演:杏子、山崎まさよし、岡本定義(COIL)、元ちとせ、スキマスイッチ、 長澤知之、秦 基博、さかいゆう、浜端ヨウヘイ、松室政哉
※スキマスイッチはVTRでのパフォーマンス出演
【MUSIC BATON Nice Band】
Guitar/外園一馬、 Bass/佐藤慎之介、 Keyboard/山本健太、 Drums/岡本啓佑
【MC】
クリス智子
┗2022年11月1日(火)@東京・豊洲PIT

Office Augusta 30th MUSIC BATON

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