杏子、山崎まさよし、スキマスイッチ、秦 基博など数々の有名アーティストが所属するオフィスオーガスタは、2021112日に設立30年目を迎えました。「この節目の年に、アーティストや共に音楽を届けてくださるスタッフの皆様、そして何よりオフィスオーガスタの発信する音楽を愛し、応援してくださるリスナーの皆様へ、改めて感謝とエールを送りたい」という思いを「MUSIC BATON」と言うタイトルに込め、この一年を通して様々なライブをお届けしていきます。

今年11月2日に設立30周年を迎える、オフィスオーガスタ。その記念ライブシリーズ「Office Augusta 30th MUSIC BATON」のVol.11が、ブルーノート東京で開催された。ライブシリーズのスタートから11回目にして登場するのは、杏子とともにオフィスオーガスタを黎明期から牽引してきた山崎まさよしだ。山崎が「MUSIC BATON」に出演するのは、山崎と杏子、そして松室政哉による“Three Of Us”として出演した、昨年11月2日のVol.1以来となる。この日は山崎のソロライブという形で、オルケスタ・デ・ラ・ルスの元メンバーであり、佐藤竹善とのSALT & SUGARでも知られるピアニストの塩谷哲がゲストに迎えられた。

18時から開催された第1部が終わり、第2部のスタートは2030分。その時間になると、山崎は塩谷とともに会場後方からステージへとゆっくり歩を進める。すでに食事やドリンクを思い思いに楽しんでいる観客たちが座るテーブルの間を、出演者が歩いてステージに向かう光景はブルーノート東京ならではの醍醐味だ。

ステージ上の椅子に腰掛けた山崎は、ブルースハープを試奏し、アコギを抱えて音を鳴らす。すると、おもむろに塩谷がピアノを奏で始める。最初のナンバーは、「アレルギーの特効薬」。’96年にリリースされた、デビューアルバムの表題曲だ。その泥くさく、ディープなブルースロックは、山崎の原点であり真骨頂の一つである。転がるような塩谷のピアノとラフでタフな山崎の歌声が相まって、ブルーノート東京に土の匂いが立ち込めていくようだ。そこから短いMCを挟み、郷愁を誘うブルースハープの響きに導かれ、「十六夜」が披露される。情念さえ感じるボーカルは、歌い進めるごとにどんどん力感を増し、聴く者たちをぐいぐいと惹きつけていく。ほんの少しの間を置いた山崎と塩谷は、「あじさい」、「ツバメ」、「君の名前」を立て続けに演奏する。静かな幕開けから、その抑揚が心の機微をなぞるような歌声に、やさしいピアノの音色が寄り添う「あじさい」。情熱的な思いを綴った歌詞と、穏やかでやわらかい演奏のコントラストが美しい「ツバメ」。そして「君の名前」では、ラテンジャズ的なアプローチのピアノに乗せ、ここまでで最もストレートでアグレッシブな歌声を聴かせてくれた。

続くMCでは、山崎と塩谷がユーモアを交えながら、軽妙なトークを繰り広げる。観客席からは笑いが起こり、アットホームな雰囲気がブルーノート東京を包んだあと、ライブは再開。披露されたのは、’19年にリリースされた12枚目のアルバム『Quarter Note』に収録された「Eyes On You」、そして’97年リリースの2ndフルアルバム『HOME』収録の「ヤサ男の夢」だった。「Eyes On You」では、山崎のギターと塩谷のピアノが同時に鳴り始め、ドラマティックなメロディと歌詞が力強く歌い上げられる。その歌声に合わせるようにピアノのタッチにも力がみなぎり、サビでは山崎の声に塩谷のコーラスも重なった。そこから一転、「ヤサ男の夢」では軽やかに弾むピアノと歌が、ラグタイムやミュゼット、ハワイアンまでの多彩な音楽性を感じさせて楽しい。その後、2人はブルーノート東京の伝統や魅力を朗らかに語り合うと、山崎がおもむろに“私と言えば、この曲でしょう”とひと言。静かなギターの爪弾きとピアノの音色に乗って披露されたのは、「One more time, One more chance」だ。オリジナルよりも心なしかスローにアレンジされた名曲を情感たっぷりの歌で表現する山崎に、大きな拍手が巻き起こる。

演奏後は、ユーモアを交えながら「One more time, One more chance」にまつわるエピソードを話す山崎。そして、9曲目にはニューオリンズ風味のブギピアノに乗って、’99年リリースのアルバム『SHEEP』に収録された「審判の日」を歌う。そこから本編のラストは、「セロリ」。肩の力を抜いた歌声とトロピカルなムードを醸し出すピアノのフレーズ、そしてボサノヴァのリズムが新鮮な輝きを放った。

本編が終わると、アンコールを求める手拍子が起こる。その手拍子に応えた2人が、再びステージに立つ。披露されたのは「根無し草ラプソディー」だ。軽快なリズムと観客のハンドクラップがシンクロする中、ハッピーなムードが会場を包み込む。演奏を終えた山崎と塩谷は、ステージ上で拳を合わせると、肩を組んで最高の笑顔を見せる。笑いが絶えなかったMCも含め、音楽の楽しさ、ライブの楽しさをじっくりと堪能させてくれた、とても幸せな時間だった。

取材・文/大久保和則
写真/岩佐篤樹

Office Augusta 30th MUSIC BATON vol.11山崎まさよし『YAMAZAKI MASAYOSHI Special Live at BLUE NOTE TOKYO』

SET LIST
M1.アレルギーの特効薬
M2.十六夜
M3.あじさい
M4.ツバメ
M5.君の名前
M6.Eyes On You(2ndのみ)
M7.ヤサ男の夢(2ndのみ)
M8.One more time, One more chance
M9.審判の日
M10.セロリ
En1.根無し草ラプソディー


山崎まさよし/ゲスト:塩谷哲
┗2022年10月12日(水)@BLUE NOTE TOKYO

Office Augusta 30th MUSIC BATON『MUSIC BATON 〜The Final〜』

出演:杏子、山崎まさよし、岡本定義(COIL)、元ちとせ、スキマスイッチ、 長澤知之、秦 基博、さかいゆう、浜端ヨウヘイ、松室政哉
※スキマスイッチはVTRでのパフォーマンス出演です。
【MUSIC BATON Nice Band】
Guitar/外園一馬、 Bass/佐藤慎之介、 Keyboard/山本健太、 Drums/岡本啓佑
【MC】
クリス智子
日程:2022年11月1日(火)
会場:東京・豊洲PIT

Office Augusta 30th MUSIC BATON

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