杏子、山崎まさよし、スキマスイッチ、秦 基博など数々の有名アーティストが所属するオフィスオーガスタは、2021112日に設立30年目を迎えました。「この節目の年に、アーティストや共に音楽を届けてくださるスタッフの皆様、そして何よりオフィスオーガスタの発信する音楽を愛し、応援してくださるリスナーの皆様へ、改めて感謝とエールを送りたい」という思いを「MUSIC BATON」と言うタイトルに込め、この一年を通して様々なライブをお届けしていきます。

昨年11月からスタートした、オフィスオーガスタ設立30周年記念ライブシリーズ「Office Augusta 30th MUSIC BATON」。そのVol.10が渋谷duo MUSIC EXCHANGEで開催され、スキマスイッチが出演した。ライブのタイトルは、『The baton has passed』。直訳すると“バトンは渡された”という意味だが、この日までの「MUSIC BATON」で重ねられてきた音楽のバトンをスキマスイッチがしっかりと受け取った意思表示にも取れるし、さらにはオフィスオーガスタが30年の長きにわたって紡いできた歴史を2人がしっかりと受け継いでいる自覚と、これからもつないでいくという覚悟を込めたとも思えるタイトルだ。

フロアでは、超満員の観客がスタンディングでライブのスタートを待っている。ライブハウスでスキマスイッチが見られることへの期待感が会場を埋め尽くす中、「MUSIC BATON」のロゴがステージのスクリーンに映し出される。その後、バンドメンバーに続いて、大橋卓弥と常田真太郎がステージに姿を現す。すぐに演奏がスタートし、大橋が歌い出した。1曲目は、’06年にリリースされ、初のオリコンチャート1位を獲得した「ガラナ」だ。ドライブ感たっぷりのサウンドと伸びやかな歌声に合わせ、一体感に満ちたハンドクラップが自然発生する。演奏を終えると、大橋はエレキギターをアコースティックギターに持ち替え、「アーセンの憂鬱」を奏で始めた。ファンキーでタイトな演奏と、つんのめっていくようなスピード感にフロアの熱気はさらに上昇する。まだ2曲のみの披露だったが、その演奏後に巻き起こった大きな大きな拍手が観客の満足度を早くも物語っているようだ。鳴り止まぬ拍手の中、大橋と常田が話し始める。まるで気ままに雑談をしているかのような、くだけた雰囲気のトークが心地いい。そんなMCが生んだ和やかなムードを一変させたのが、3曲目の「吠えろ!」だ。ドラマティックなイントロからスタートすると、大橋の歌声が一気に力をみなぎらせる。腕を大きく掲げ、伸ばした人差し指を前後にかざすファンたち。歌と演奏がさらに熱を帯び、コーラスパートでは大橋と常田の声が重なり合った。そこからすぐに、常田の流れるようなピアノの音色が会場を包む。抒情的なピアノのリフレインに重なる、哀愁を帯びたスライドギター。2ndアルバム『空創クリップ』に収録された名バラード、「さみしくとも明日を待つ」だ。力強い大橋の歌声と共鳴するように、常田のピアノもバンドの演奏にも熱気があふれる。その演奏は、やがてジャムセッションのように混沌をしたサウンドを奏でると、最後は一転してピアノと歌だけに。祈るように叫ぶ大橋の声が会場に響くと、どこか神聖な空気が流れた。そして「Revival」ではセンチメンタルなメロディと歌詞、“青さ”を醸す歌声が、甘酸っぱくもさわやかな風を運ぶ。続いて、間髪を入れずに静かなピアノの音色が流れ、6曲目に披露されたのは、代表曲の一つである「奏(かなで)」だ。大橋はギターを持たず、スタンドマイクを両手で握りしめながら、思いを丁寧にその声に込めるように熱唱する。終盤にはスタンドからマイクを外して右手に持ち、体全体で魂を歌に乗せる大橋。その姿からは、長年にわたって大切に歌い続けてきた「奏(かなで)」への強い思いが伝わってくる。7月に配信リリースされた最新曲「up!!!!!!」では、楽曲の軽やかなスイング感に、ハンドクラップが再び自然発生する。サビで右手を左右に振る満員のフロアは、本当に楽しそうだ。

ここまでに7曲の演奏を終えた2人は、この日2度目のMCへ。1999年のオフィスオーガスタとのドラマティックな出会いを、ユーモラスに語る2人。その気心の知れた掛け合いで何度も笑いを生み出した2人だったが、最後に大橋は“人の縁がつながって、30年もオフィスオーガスタが続いたのは僕らもうれしい。ここからまた40年、50年と続いていったら”と締める。そこからバンドメンバーの紹介を挟み、4つ打ちのバスドラムが響くと、「Ah Yeah!!」がスタート。エネルギッシュな演奏に、MCでクールダウンしたフロアの温度が再び上昇する。ハイテンションのファンたちを前に見せる、大橋の楽しそうな笑顔が印象的だ。「Ah Yeah!!」の演奏後、大橋が“今は声が出せないので、クラップ&レスポンスをやっています。僕が簡単なフレーズを叩くので、みなさんも続いてください!”と呼びかけ、様々なパターンのハンドクラップで一体感を生み出していく。一体感がフロアにあふれる中、流れるようなピアノが興奮を呼び起こし、「全力少年」が披露される。大橋が言うように確かに声は出せないが、大きな手拍子と揺れる体から湧き上がる熱が会場には満ちている。そして、本編の最後に披露されたのは、「ボクノート」。美しいピアノの調べも印象的な同曲を、やさしいサウンドの中で大橋は切々と歌い上げる。鳴り止まない拍手の中、こうして本編は幕を閉じた。

大きな手拍子に応えて、再びステージに登場するバンドメンバーと大橋と常田。大橋と常田は、アンコールで何の曲を披露するか、丁々発止のやりとりをファンと繰り広げる。その結果、「ユリーカ」と「ふれて未来を」の2曲が披露されることになった。ポップなピアノのフレーズが鳴らされると、すぐに大きな手拍子が起こる。最初に披露されるのは、「ユリーカ」だ。上昇気流に乗ってどこまでも舞い上がるようなメロディラインに乗り、大橋の歌声も心地良く突き抜ける。そして、アンコールの2曲目としてこの日のラストを飾ったのは、「ふれて未来を」。幸福感に満ちた楽曲の世界観を、サビでファンが一体となって繰り広げる小刻みなハンドクラップが彩る。その詞曲に宿るエバーグリーンな魅力を、いつも以上に近い距離で体感すると同時に、ライブハウスという空間だからこそよりダイレクトに伝わる2人の人柄の魅力も再確認できた一夜だった。

取材・文/大久保和則
写真/岩佐篤樹

Office Augusta 30th MUSIC BATON vol.10スキマスイッチ『The baton has passed』

SET LIST
M1.ガラナ
M2.アーセンの憂鬱
M3.吠えろ!
M4.さみしくとも明日を待つ
M5.Revival
M6.奏(かなで)
M7.up!!!!!!
M8.Ah Yeah!!
M9.全力少年
M10.ボクノート
En1.ユリーカ
En2.ふれて未来を


スキマスイッチ
┗2022年9月3日(土)@東京・duo MUSIC EXCHANGE

Office Augusta 30th MUSIC BATON『MUSIC BATON 〜The Final〜』

出演:杏子、山崎まさよし、岡本定義(COIL)、元ちとせ、スキマスイッチ、 長澤知之、秦 基博、さかいゆう、浜端ヨウヘイ、松室政哉
※スキマスイッチはVTRでのパフォーマンス出演です。
【MUSIC BATON Nice Band】
Guitar/外園一馬、 Bass/佐藤慎之介、 Keyboard/山本健太、 Drums/岡本啓佑
【MC】
クリス智子
日程:2022年11月1日(火)
会場:東京・豊洲PIT

Office Augusta 30th MUSIC BATON

Office Augusta 30th MUSIC BATON

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